【プロフィール】
元・国立国際医療研究センター病院国際診療部部長。小児科専門医。子どもの心相談医。1987年、奈良県立医科大学卒業後、滋賀医科大学小児科に入局、研修医としてトレーニングを受ける。その後、渡米し、ロサンゼルス小児病院血液腫瘍科で小児がんの転移の研究に従事。1998年、途上国における小児診療に関する論文を読んで国際保健の分野に興味を持ち、JICAの業務に携わる。2001年、国立国際医療研究センター国際医療協力局に入職。1年以上の国際長期派遣ではケニア、ラオス、セネガルで活動、母子保健分野の経験を積む。2019〜2023年、国際診療部部長を併任、外国人患者の受入れ調整を行う。専門分野は母子保健、災害医療対応、官民連携 外国人診療など。
子どもたちの健康を守りたい
大学を卒大学を卒業してすぐ、小児科の道に進むことを決めました。私は子どもが好きです。子どもという存在は、日本に限らず、希望の光であり、とても魅力的な存在です。子どもたちに国境はありません。そんな子どもたちの健康をサポートして行きたいと思い、小児科を選びました。
滋賀医科大学小児科では、白血病や川崎病、気管支喘息などの疾患の診療を主に行いました。市中病院やクリニックでの診療では、当時は、まだ予防接種が現在ほど行き届いていなかったため、はしか、風疹、おたふくかぜ、髄膜炎などの感染症を中心に診てきました。
私が経験してきた海外の開発途上国では、予防接種を多くの子どもたちに定期的に打つ体制はありませんでした。日本では予防接種を打つシステムが出来上がっています。予防接種に限らず、様々な疾患に関して、新しい検査や薬も出てきて、治療方針も常に見直されてきています。日本は本当に恵まれた国だと思っています。
その一方で、心の問題が大きくなってきました。子どもの病気は、その原因を見つけ解決につなげることが大切です。しかし、原因と結果ではなく、夫婦の関係、親子の関係など、人と人との関係性、そして、その子どもを取り巻く環境を意識して診療することも大切であると実感しています。
小児科医になってよかったと思うこと
小児科外来で診察が終わった子に、「バイバイ」と手を振ると、私の手にハイタッチをしてくれる子がいます。最近では、これが小児科医になってよかったと思う瞬間のひとつです。多くの人がスマートフォンを指一本でコミュニケーションする今日ですが、自分から手を合わせに来る子どもたちは、人と人の大切なコミュニケーションを手で表現してくれるのだと思います。
小児科医として大切にしていること
私が小児科医として患児と接する時に大切にしているのは、対話です。小児科なので、まずは、子どもとの対話。そしてお母さん・お父さんなど、一緒に来られた方のお話をよく伺うようにしています。外来診療の場では限られた時間ですが、一期一会を大切にしたいと心掛けています。