雨が降ると、古傷が傷む、気分が落ち込む、といった症状に悩まされる人、少なくないですよね。それ、気のせいや仮病ではないんです。
【まとめ】
☆天候によって体調の悪化する「気象病」。天気痛やうつ症状など、メカニズムが明らかになりつつあります。
☆分かってきた真犯人は、「気圧や気温の変化」。よく聞かれる「低気圧」犯人説は、ちょっと違っていたようです。
☆気圧変化による影響を和らげるには、市販の「酔い止め薬」が効くかもしれません。事前に飲まないと効かないかも!
気のせい? 気の持ちよう? 仮病? いいえ、天候悪化のせいです。
台風21号が本州に接近しています。大気の状態が不安定で、お天気も崩れがちですよね。そんな天候悪化を、体調で感じとることができる人がいます。「どうも頭が重たい」「古傷が痛む」「気持ちが沈んでしまう」などなど。
たいていの人は、それを「気のせい」で済ませてしまっているかもしれません。でも一部、「気のせい」だけでは済まないほどに症状が顕著だったり、パターン化したりしている人もいるのです。それでも多くの「気のせい」派の人々に「気の持ちよう。しっかりしろ」などと言われたり、はたまた「仮病では?」などと疑いを掛けられたりして、やるせない思いでいることでしょう。
彼らの名誉のためにもはっきりと書いておくと、天候の変化に伴って出現したり悪化したりする体調不良は、ある程度科学的にも認められています。「気象病」と呼ばれます。
気象病として、
●慢性痛(関節痛・リウマチ、神経痛、頭痛、歯痛など)
●心血管疾患(脳卒中、脳梗塞、心筋梗塞、狭心症など)
●血行障害(低血圧、肩こりなど)、
●喘息などの呼吸器症状、
●うつ病などの精神疾患、
●緑内障
●めまいやメニエール病、
●倦怠感
などなど、世界中で様々な症状が報告されています。
科学的に立証された天気痛、真犯人は「気圧の変化」だった!
ただ、こうして色々報告されてはいますが、きちんと科学的に関連性が明らかになっているのは、実は天気痛とうつ症状のみです。天気痛とは、天候の変化に伴う慢性痛の発症や悪化です。
また、気象病のメカニズムとして巷には間違った説があれこれ流布しています。中でも低気圧説は、気象病に悩む人は大抵耳にしたことがありますよね?低気圧のせいで体内の軟らかい部分が膨張し、神経を圧迫する、とか、炎症物質が多く放出される、とかいった話。でも、どちらも科学的根拠には乏しいと言わざるを得ません。
実際、実験で低気圧を維持したままの状態を作り出したところ、痛みが治まってくることが確かめられています。低気圧状態が続くだけであれば原因とはならなさそうだ、ということ。気象病の真犯人がこれまでなかなか明らかにならなかったため、その間にもっともらしい仮説や憶測が本当であるかのように広まってしまったものと見られます。
近年、ようやく突き止められた気象病の真犯人は、気圧や気温の「変化」です。
天気痛では、気圧や気温が上がったり下がったり変動する際に、交感神経を刺激して過剰に働かせ、その結果痛みを感じやすくなると考えられています。関節痛などの慢性疾患では、普段から自覚がなくても交感神経がわずかに刺激されていたり、高ぶりやすくなっていたりするもの。それが気圧変化で表に出てくると見られます。
気圧の変化は、当然ながら健康な人でも影響をうけています。でも、自律神経の調節がうまくいっているので、体に症状を感じることなくやり過ごせている、と言えそうです。
事前に「酔い止め薬」を。症状緩和に役立つかも?!
今回のような台風接近など、気圧の変化が起きそうな状態は、今日ではある程度予測がつくこともおおいですよね。だったら、気象病の予防ができないものでしょうか?
実は、気圧の変化による天気痛については、ないわけではなさそう。予防できる可能性があるのは、市販の「酔い止め薬」。
気圧変化を感じ取るセンサーは、内耳にあります。車酔いは、内耳からの情報と目など他の器官からの情報にズレが起きて、脳が混乱し、自律神経を刺激して起きると考えられています。酔い止め薬は内耳に働きかけて興奮を鎮めるもの。気圧変化による神経の興奮も鎮める働きが期待できるのです。
ただ、神経がいったん興奮してしまって症状が出てからでは、薬の効果は得にくいもの。かすかな予兆を感じたらすぐに服用した方がよさそうです。
また、気温の変化(特に低下)による天気痛については、寒さ対策を心がけるしかありません。天気が不安定な時や季節の変わり目には、羽織るものを一枚持って出かけ、こちらも早めの対応が肝心です。