-咳が止まらない!ーー「咳ぜん息」かも。原因はエアコン? 夏風邪?-

2018.08.10

「エアコンを使い出してから、咳が止まらない」「夏風邪は治ったのに、咳が止まらない」――咳ぜん息かもしれません。ぜん息に移行しないうちに治療しましょう。

 

【まとめ】

☆何週間も咳の症状だけが続く「咳ぜん息」。アレルギーが背景にあることが多く、放置すれば3人に1人が喘息に移行します。

 

☆この時期の原因は、エアコン使用による室内外の温度差や、カビやホコリなどハウスダストによるアレルギー、夏風邪による気道の炎症と見られます。

 

☆3週間以上続いたら、呼吸器内科へ。咳ぜん息には、吸入ステロイドが有効です。ただし、ストレスによって悪化させる人も。

 

 

「咳ぜん息」って何? 普通の「ぜん息」とは違うの?

 

過去最高の暑さを記録した先月以降、熱中症予防のために、日中はもちろん夜もエアコンを24時間つけっぱなしのご家庭も多いのではないでしょうか。ところが、その環境で急増したのが、「咳が出るようになって治らない」という訴えです。

 

また、一般的な夏風邪の後、「体調は戻ったのに咳だけが続いている」という人もいるようです。熱は下がり、他の症状は消えたにもかかわらず、咳が止まらないというのです。

 

これらはいずれも、「咳ぜん息」になってしまったものと考えられます。咳ぜん息は、この10年ほどで急増しているのです。

 

咳ぜん息は、咳だけが唯一の症状の、気管支の病気。「ぜん息」(気管支ぜん息)になる一歩手前の段階です。

 

気管支ぜん息は、気道に炎症が起きた状態。アレルギー反応によるものが多いのですが、冷気やたばこの煙など外部の刺激で、気道が過敏になって起こることもあります。「ヒュー ヒュー」「ゼーゼー」といった音(喘鳴=ぜいめい)が特徴で、呼吸困難を起こします。

 

これに対し、咳ぜん息は、喘鳴や呼吸困難には至らないまま、咳だけが慢性化して何週間、ひどい時は数ヶ月間と出続けるものです。やはりアレルギー体質と関係が深いとも言われます。

 

咳喘息は自然に治ることもありますが、放置していると約3割の人が気管支喘息に移行するとも言われています。

 

 

エアコンや夏風邪から咳ぜん息になってしまうのはなぜ?

 

さて、エアコン(冷房)が咳をひき起こす原因は2つ考えられます。一つは、室内と屋外の激しい「温度差」。もう一つが、「カビ」「ホコリ」です。

 

猛暑の外から屋内に入ってきた時、急に冷気に触れた気管支は痙攣するように縮み、気道は狭くなります。気道の粘膜が刺激され、咳が出ます。もともと気道が弱い人は、室内外の出入りを繰り返すことで、さらに過敏になっています

 

また、エアコンのフィルターなどにはホコリが溜まりがちですし、梅雨から今の時期はカビも繁殖します。定期的に清掃していないと、エアコンから押し出され、冷気と共に流れてきてしまうのです。それを吸い込むめば、気道の粘膜に付着し、刺激となって咳を引き起こします。いわゆるハウスダストアレルギーの一種と考えられます。

 

夏風邪が元で咳ぜん息を発症するのは、気道の粘膜が過敏になってしまっているためと考えられます。

 

この他、運動時や発声時など、様々な刺激によって気道の粘膜が過敏になり、咳の発作が起こります。今の時期は、台風による気圧変動も引き金になりやすいようです。

 

 

受診すべき? 判断のポイントと治療は?

 

ただの風邪なら、2週間で咳は治まります。しかも、風邪が原因の咳はコンコンと断続的に出ます(コラム参照)。一方、咳ぜん息の咳は、出ないときには全く出ないのに、出始めると止まらないのが特徴。乾いた咳で、多くは夜間から明け方にひどくなります

 

いずれにしても、2週間を過ぎても咳が治まらない場合や、数日眠れないほど激しい咳が続くなら、何らかの病気の可能性があります。慢性的な咳が3週間を超えたら、呼吸器専門医を受診したほうが良いでしょう。安易に市販の咳止め薬でお茶を濁していても、その分、治療の開始が遅れて悪化させてしまいます。

 

呼吸器専門外来では、問診や聴診の他、X線検査、肺活量の測定などの肺機能検査、ぜん息を診断するための呼気成分の測定、アレルギー検査などを行います。COPD(慢性閉塞性肺疾患)や百日咳、肺炎、肺がんなど、重い病気の可能性を排除した上で、咳ぜん息との診断が下ります。

 

初期の治療では、吸入ステロイドと気管支拡張薬が一つになった吸入薬が使われるのが一般的です。早い人だと数日で咳が徐々に治まってきて、2週間で咳の頻度が約半分になり、1カ月でほぼ10分の1程度に。早い時期から吸入ステロイドを使用していると、喘息への移行も半減すると言われています。

 

ただ、再発率も高いのが咳ぜん息。アレルギーテストでは反応が出ないのに、ストレスで悪化させる人も増えています。治療すれば治る、と油断していると、そのまま気管支喘息に移行してしまうキケンもあります。早めに治療を開始・再開し、地道に続けることが肝心です。

 


【コラム】 風邪の咳、原因の見極めが肝心です。

風邪による咳と見られる場合、実際には、ウイルス感染による気道の炎症による咳鼻水の垂れ込みによる痰がらみの咳(寝入りばな、起床時に強まる)咳喘息による咳(夜間に強まる)風邪に似たマイコプラズマ感染症や百日ぜきによる咳、に分けられます。

 

「問診で咳の出るタイミングや、以前に風邪ひいたときの経過、家族の罹患状況などから診断します。いくつかの原因がオーバーラップするケースも少なくありません。風邪にいつも抗生剤を処方するような医師は、かぜ症候群の知識が不十分であり、このような咳の鑑別診断や治療は期待できません」(by Dr.久住)


 

(参考サイト)

●日本呼吸器学会「咳嗽に関するガイドライン第2版」

●日本医科大学呼吸ケアクリニック「ぜんそく/咳ぜんそく」

●キョーリン製薬「COPD・喘息の最新情報(Ⅲ)咳喘息」

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