不安定な空模様で夏風邪が心配なこの時期、冬に猛威を振るうはずの「RSウイルス感染症」も、今年はすでに流行り始めています。
【まとめ】
☆子供の肺炎や細気管支炎の半数以上がRSウイルスによるもの。特に初めてかかった赤ちゃんの3割が重症化します。
☆感染力が強く、2歳までに100%感染。ただ、一度かかっただけでは免疫がつかず、繰り返すうちに症状は軽くなります。
☆初期症状も治療も、基本は風邪と同じ。ただし脱水や呼吸困難の兆候があったらすぐに受診しましょう。
RSウイルス感染症の流行時期が早まっています!
RSウイルス感染症は、RSウイルスによって引き起こされる、初期の症状が風邪とよく似た呼吸器の感染症です。咳や鼻水、痰、発熱など、普通の風邪かと思っていると、数時間で突然重症化することもあり、油断なりません。乳幼児の肺炎の約50%、細気管支炎の50〜90%、さらに小学生くらいになっても気管支炎の10〜30%は、RSウイルスによるものと考えられています。
RSウイルスは非常に感染力が強く、生後1歳までに約70%が、2歳までにほぼ100%の乳幼児が感染します。
基本的には冬の病気で、以前は9月頃から流行して初春まで続くとされてきました。ところが近年は、流行が早まっています。特に去年と今年は、今頃の時期から患者が急増しているのです(グラフは川崎市)。

(川崎市安全健康研究所・健康福祉局保健所・各区役所健康福祉センター)
ただの風邪? 油断は禁物。初めてかかった赤ちゃんの3割が悪化。
RSウイルスの感染経路は、インフルエンザなどと同様、飛沫感染(くしゃみなどで飛んだ患者のツバキが自分の口や鼻につき、感染するもの)と、接触感染(ツバキや鼻水が付いた物を触った手で、自分の口や鼻に触れ、感染するもの)です。幼稚園や保育園などで急速に広まることも。
潜伏期間(感染してから症状が出るまで)は2~8日、典型的には4~6日です。多くの場合、最初に発熱や鼻水など、風邪のような症状が数日続きます。
ところが、その後、急激に悪化して、咳がひどくなる、喘鳴(ぜいめい)が出る、呼吸困難となるなどの症状に陥ることがあるのです。
特に初めてかかった赤ちゃんは、約3割が悪化してしまうとされ、乳幼児突然死症候群の原因の一つとも考えられています。中でも生後3〜6ヶ月ぐらいの乳児は、お母さんから引き継いだ免疫が切れてくる頃で免疫力が弱く、重症化しやすいのです。
早産の赤ちゃんや、2歳以下でも心臓や呼吸器、神経系、免疫系に持病がある子の場合、重症化するリスクがさらに高まります。重い合併症として、無呼吸発作、急性脳症などがあります。
一度かかっても免疫がつきにくく、小さいうちに何度も繰り返し感染します。とはいえ、繰り返すほどに徐々に免疫が出来て症状も軽くなっていき、2歳以上では「鼻かぜ」程度で済むことがほとんどです。
治療の基本は風邪と同じ。でも、こんな症状はすぐ受診を!
RSウイルスに効果のあるワクチンはなく、また治療薬も特殊で通常は使用されないため、多くの場合は症状を抑える治療(対症療法)がほとんどです。
普通の風邪と同じように、少しずつこまめな水分補給、十分な睡眠、無理のない栄養補給、快適に感じる保温を心掛け、安静にして、注意深く経過を見るようにします。
そこでもしも、
●咳がひどくなった
●痰が詰まったようなゼイゼイする咳が続く
●喉が「ゼーゼー、ヒューヒュー」鳴る喘鳴が出てきた
となってきて苦しそうだとキケン。呼吸困難になり始めています。急激に細気管支炎、肺炎へと進展しやすい状態です。
乳児の場合は呼吸数に注意してみてください。通常は1分間に40回程度ですが、60回近くなると要注意です。
脱水症状(口や皮膚が渇き、おしっこが何時間も出ず、ぐったりしている)が見られたり、苦しそうにしている場合は、迷わず医療機関を受診しましょう。
(参考サイト)