石鹸を使って洗えば、手からばい菌はいなくなると思っていませんか? 感染症や食中毒の予防には、もうひと手間必要です。
【まとめ】
☆洗い残しやすい場所を意識して、正しい手の洗い方を確認しよう。
☆水と石けんで1度洗っただけでは不充分。薬用石けんも普通の石けんと大差ありません。
☆おススメはお湯と石けんでの2度洗い。乾かした後でアルコールスプレーなどを活用しましょう。
まずは、正しい手の洗い方から。
前回、実はお伝えしていなかったことがあります。これまでに感染症予防や食中毒の予防には「正しい手洗いが大事」と、度ごとに繰り返してきましたが、「正しい手洗い」を知らなければ無理ですよね。
さっそく確認していきましょう!
洗い残しが多いのは、図のような部分。

厚労省「食中毒予防のための衛生的な手洗いについて」
具体的な手洗い方法については、日本食品衛生協会の「手洗いマニュアル」で分かりやすく図解されています。⇒ここをクリック!
さらに次の3点に注意が必要です。
1.爪を短く切りそろえる
2.腕時計や指輪などを外す
3.手指に傷がないか確認する
1と2は、誰しも想像がつくところ。3は「へえ」と思われた方もいるのではないでしょうか? 傷口(化膿部分)には、食中毒細菌である「ブドウ球菌」が特に多くいます。傷がある場合は調理作業はしない方が望ましいのですが、そうも言っていられないですよね。その場合は、よく加熱するメニューにして、調理後に食べ物に直に触れないようにし、調理後にすぐ食べるようにしたいところです。また、お皿を扱う際にも、内側を触らないようにしましょう。

黄色ブドウ球菌
水と石けんだけでは、1分洗っても完璧ではありません。
さて、「手洗いは最低30秒」と聞いたこと、ありませんか? 「それには『もしもしカメよカメさんよ~♪』と2回歌いながらだとちょうどいい」、という話です。では実際、最も一般的な洗い方として、水と石鹸で洗った場合の、ばい菌の落ち具合はどうなのでしょう?
東京都立衛生研究所が実験をしています。3人が、ひき肉をこねた手(菌数:100万~1000万)を、30秒の倍の1分間(感覚的にはかなり長いです)、色々な方法で洗った結果、細菌の残り具合は以下のようになりました。
●水よりはお湯の方が落ちた
●水+石鹸では、お湯だけと同じ程度で、菌数はほぼ半減
●お湯+石鹸ではさらに落ちる(ただし洗い方次第)
●薬用石けんの方が、普通の石けんより減った(ただし大差なし)
ここまで見ると、お湯と薬用石けんで洗うのがよさそうに見えます。
しかし石けんor薬用石けんの違いは、実は五十歩百歩。薬用成分が入っていても元々が低濃度ですし、手洗いでちょっと使うくらいでは、効果に大した差はないのです。
ですから、1回洗いなら、お湯と石けん(薬用石けん含む)で、と考えておきましょう。
ただし、1回洗いには限界があることも覚えておいてください。
というのも、食中毒等の予防の観点からは、菌数は1千分の1~1万分の1になっていないといけません。しかし、水やお湯、石鹸類で1回洗いした場合に、そこまでばい菌が落ちた人は1人もいませんでした。1回洗いでは、最もきれいになった人でも細菌は100分の1にさえならなかったのです。1分も洗い続けたのに・・・。
家庭では、お湯+石けんで2度洗いがオススメ!
では、どうしたらよいのでしょうか? 家での手洗いにお勧めの方法が、お湯と石鹸での2度洗い。時間は1分半ほどかかりますが、安全なレベルまで菌数を減らすことができます。具体的には、
石けんで30秒洗う⇒お湯で5秒すすぐ⇒石鹸で30秒洗う⇒お湯で30秒すすぐ
という手順。正直、手間に感じます。でも、お弁当作りの前などには是非実践してください。何と言っても、後悔先に立たずです。
さらに用心するなら、ペーパータオルで拭いた後に、アルコールスプレーを。ポイントは、「ペーパータオル」と「拭いた後」です。
タオルやハンカチは経済的でエコですが、衛生面ではどうしても細菌等の増殖が気になります。部屋干しなどで長い時間湿った状態にあると、残ったり付いたりした細菌が増えている可能性が高くなります。きれいに手を洗っても、拭く際にまたばい菌がついてしまっては元の木阿弥ですよね。
また、アルコール消毒は、アルコールの濃度が肝心。理想は70%とされますが、最近は、60~95%であれば殺菌・消毒力にはほとんど差がないと言われています。
ですから、手に水気があると、濃度が薄まってしまって十分な殺菌効果が得られないのです。濡れた手にアルコールスプレーをかけても、気休めにしかなりません。翌手を拭いて乾いたところに、きちんとアルコール濃度を調整したスプレーやジェルなどを使いましょう。
他方、100%アルコールにはほとんど殺菌・消毒力がありません!意外ですね。
(参考サイト)