-妊婦さんも3混接種を! 日本人の知らない百日咳ワクチンの常識。-

2018.08.03

日本では議論すらされていませんが、欧米では、妊娠中に百日咳の予防接種を受けることが推奨され、実施されています。

 

【まとめ】

☆4混ワクチンの初回接種は生後3カ月以降。それまでに百日咳にかかって重症化してしまう赤ちゃんが多くいます。

 

☆生後間もない赤ちゃんを百日咳から守る唯一の予防手段が、妊婦さんへの予防接種(3混ワクチン)です。

 

☆安全性はイギリスはじめ各国で立証され、欧米諸国では妊婦さんへの3混・4混ワクチン接種が奨励され、定期接種(公費)化されています。

 

 

なぜ妊娠中に3混ワクチンを接種した方がいいの?

 

3種混合ワクチン(DPT、百日咳・ジフテリア・破傷風)、あるいは4種混合ワクチン(DPT-IPV、3種+不活化ポリオ)といえば、乳幼児が受ける予防接種ですよね。たしかに日本では乳幼児に関して、長らく3混ワクチンが、2012年からは4混ワクチンが定期接種(公費)として導入されています。

 

ただ問題は、初回接種が生後3カ月以降であること。そのために妊婦さんも接種を受ける必要性が出てくるのです。

 

どういうことでしょうか?

 

実は、3混ワクチンで予防できるはずの百日咳に感染し、重症化して深刻な病状に陥るキケンが最も高いのは、生後0~5カ月の赤ちゃん(国内データ)。つまり、初回接種までに感染し、重症化してしまうのです。

 

これに対し、初回接種が生後2カ月となっているイギリスでは、妊娠中に予防接種を受けたお母さんから生まれた赤ちゃんは、生後数週間内に百日咳に感染するリスクが91%も減少しました。そのため同国では、妊娠16~32週の間に4混ワクチン接種が奨励され、2012年から定期接種化されています。

 

また、ニュージーランドでは3混ワクチンの接種を受けた妊婦さんから生まれた新生児約400人は、地域で百日咳が流行したのに1人も患者が出なかったそうです。

 

胎児はお母さんから胎盤を通じて免疫(抗体)を受け取り、それが2カ月程度続くのです。

 

こうして欧米では、妊婦の3混・4混ワクチン接種が積極的に奨励されています。

 

 

妊娠中の3混ワクチン接種、お腹の赤ちゃんは大丈夫?

 

妊娠中にワクチン接種を受けるとなると、気になるのが安全性です。お母さんへはもちろん、赤ちゃんへの影響はないのでしょうか?

 

医学的に、胎児や母体に百日咳ワクチンが「安全でない」とされたことはありません。イギリスで約20,000人の妊婦さんとその胎児の調査で、どちらについてもリスクは報告されませんでした

 

アメリカ疾病管理予防センター(CDC)も、これまでの様々な研究を精査した上で、妊婦への3混ワクチン接種と想定外の副作用の関連性を否定しています。

 

強いて副作用を上げるなら、注射を打った患部が腫れたり赤くなったり、敏感になったりすることですが、これは他の予防接種でも同じこと。また、熱が出たり、食欲がなくなったり、イライラしてしまう場合もありますが、いずれも数日間で収まります。

 

 

妊娠中の3混ワクチン接種と百日咳 Q&A

 

多くの方が気にされる3大質問をまとめました。

 

 

Q.日本でも、妊婦が3混・4混ワクチンの予防接種を受けることは可能ですか?

 

 

A.4混ワクチンに関しては、成人への使用は想定されていません

 

一方、3混ワクチンの説明書(添付文書)では、「妊娠中の接種に関する安全性は確立していない」ので「予防接種上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ接種すること」としています。

 

ただ、イギリスの4混ワクチンにも同じ説明がありますが、安全性の立証が難しいのは、「妊婦での臨床試験が困難なため」とイギリス国民保健サービス(NIH)は解説しています。実際、同国では先の通り既に妊婦さんへの接種が定期化され、効果を発揮。20,000人を調べてもリスク報告はありませんでした。問題がないどころか、世界的に奨励されているのです。

 

ナビタスクリニックでも、3混ワクチンをご用意しています。ご希望の方はお気軽にご相談ください。

 

 

Q.子供の頃に百日咳を含む予防接種を受けています。それでも妊娠中に再度3混ワクチンを接種したほうがよいのでしょうか?

 

 

A.百日咳のワクチンの免疫効果は4~12年で弱まり、接種から年数が経つほど感染リスクが高まるとのこと。特に先進国では大人の患者が増え、症状が現れない「不顕性感染者」がワクチン未接種の乳児に感染させることが問題となっています。生後間もない赤ちゃんを守るためには、せめて妊婦さんが予防接種を受けるしかないのです。

 

妊娠前に予防接種を受けた方も、妊娠16週以降に再度ワクチンを接種することで、赤ちゃんを守る効果を最大化できると考えられています。

 

また、上記の理由から、妊婦さん以外の成人の方にも接種をお勧めしています

 

 

Q.百日咳とはどんな病気ですか? かかるとどうなるのでしょうか?

 

 

A.患者の咳やくしゃみで飛んだツバに含まれる百日咳菌が、鼻・喉~気道に感染して起こります。子供では、一般に5%程度、生後半年だと約12%が肺炎を起こします。全体の500人に1人、生後半年だとその3倍の赤ちゃんが、命を落としてしまうとされます。

 

約7~10日間の潜伏期間(症状の出ない期間)を経て、風邪のような症状が出て、徐々に咳が強くなります。その後、短い咳が連続的に起こるようになった後、今度は時折、発作的に咳が出るようになります。乳児は重症化しやすく、肺炎や無呼吸発作によるチアノーゼ(呼吸ができずに全身が青紫色になる症状)、けいれん、脳炎などを起こすことがあります。

 

治療には抗生剤が処方されますが、重症化した場合は入院が必須です。

 

 

(参考サイト)

●国立感染症研究所「海外の百日せき含有ワクチンの予防接種スケジュールと百日咳対策」

●英国NIH(国民保健サービス)

●アメリカ疾病管理予防センター(CDC)予防接種実施に関する諮問委員会による報告書

●厚生労働省「百日せき」

●東京都感染症情報センター「百日咳」

 

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