-のどが渇いた? あなどれない脱水、命のキケンも。-

2018.07.26

連日の猛暑で心配な熱中症。多くは背景に「脱水」があります。

 

【まとめ】

☆熱中症も多くは脱水の結果。体にとってなぜ水分が大事なの?

☆のどの渇き、我慢はNG。重度の脱水は命の危険も。

☆どれだけ水分をとれば脱水は予防できる?

 

 

熱中症の前に起きている脱水。なぜ体は水分を必要とするの?

 

発汗などによる体温調節が上手くいかずに体に熱がこもってしまう熱中症。その多くは、背景に「脱水」があります。当たり前に知っているコトバかもしれませんが、脱水だけで命に関わることもある、って知っていますか?

 

脱水とは、主に体内の水分+塩分(ナトリウム等の電解質)=体液が不足した状態のことを言います。驚くべきことに、体の構成要素のうち、子供では約70%、大人では約60%、高齢者では約50%を、体液が占めています。体重の3分の2くらいは主に水、ということ(だから計量前のボクサーは水分も控えて、一時的に一気に体重を落とすんですね。体には絶対良くないです)。

 

体液は、大きく3つの役割を担っています。

 

①運搬:酸素と栄養素を全身の細胞に届ける一方、老廃物を回収して尿や汗として体外に排出する。

②環境維持:新陳代謝がスムーズに行われるよう、体液の性状を一定に保つ。

③体温調節:発汗により体温を調節する。(⇔熱中症)

 

体液が適切な状態で充分に体を満たしているからこそ、体内はほぼ一定の状態保たれ、私たちは健康を維持することができるんですね。

 

体液の代表例が、血液です。体の色々な部分にセンサーがあって、血中の総水分量と電解質濃度(水分とナトリウムのバランス)を一定に保つ仕組みがあります。

 

例えば、ナトリウム濃度が高くなると、のどが渇き、水分を摂るように働きかけます。さらに、脱水に反応して脳から抗利尿ホルモンが分泌され、腎臓に作用して尿の量を減らします。血液中の水分量が増加すれば、濃度が薄まって、ナトリウムと水分のバランスが正しく保たれる、という具合です。

 

 

体の水分が足りない! 初期症状を放置すると、こんなにキケンな状態に。

 

軽症~中等度の脱水では、

 

・のどが渇く

・汗をかきにくい

・皮膚の弾力性が低下(シワシワになってハリがなくなる)

・おしっこが減る

・くちびるや口の中が乾く

・頭痛

 

といった症状が見られます。

 

ただこの時点で、水分と塩分を補給するなど適切に対処すれば、最悪の事態は避けられるかもしれません。

 

対処もないまま脱水が進めば、必要な量の血液と血圧を維持するために、水分が細胞内から血流へ移動します。体の組織が乾き始め、細胞はしぼんで機能しなくなります。皮膚のシワシワ状態は目に見えますが、体の中でも同じ事態が起きているのです。

 

ところが逆に、のどの渇きが減ってきたら、非常に危険なサイン。重度の脱水に陥っています。血圧が下がって、急に立ち上がるとふらついたり失神したり(起立性低血圧、立ちくらみ)、手足のしびれなどが起きてきます。

 

さらにはショック状態(重度の血圧低下)となり、酸欠に陥った腎臓、肝臓、脳などの臓器が重いダメージを受けます。特に脳細胞は影響を受けやすく、意識障害や錯乱状態に陥り、完全に意識を失います。その結果、臓器不全や、時には死亡につながります。

 

重度の脱水が見られたら、電解質を含む点滴が必要。場合によっては迷わず救急車を依頼するなどして、病院へ急ぎましょう。

 

 

脱水予防には、1日にどれくらい水分を摂ればいいの?

 

水分が体から出て行く一番のルートは尿。年齢や体格、その日の状態により。尿の量は、1日に0.5L以下から10L前後まで様々。通常は2~2.5Lの水分が1日に体から出て行くとされます。その他、普通に過ごしていても、気づかないうちに皮膚から蒸発したり、息と一緒に吐き出されたりして、1日に0.7L程度は失われます。さらに激しい運動や、高温状態、体温上昇などで大量の汗を書けば、水分量は劇的に失われます。

 

このように、口から水分補給をしない限り、水分は体から失われる一方です。では、どれくらい摂れば脱水を防げるでしょうか?

 

熱くない、快適な室内で1日過ごす場合でも、大人で最低コップ6杯(1.2リットル)の水分を摂る必要があります(環境省)。水分補給のタイミングは「のどが渇く前」が理想的。ただし、一度に多量に水分を摂取すると、大部分は吸収されずに尿として出されてしまいますこまめに摂ることが大事なのです。特に起床時と、入浴の前後は意識的に摂りましょう。

 

加えて、このところのように暑い日に外で過ごしたり、長時間の運動を行う場合は、努めてたくさん水分を摂るようにします。運動前と運動中、その後は特に、スポーツドリンクなど電解質を含む飲料を利用するようにします(その他、どんな飲み物が適切かは、「発汗は体温を下げる手段。でも、汗をかいてもつらい日本の夏。なぜ??」をご参照ください)。

 

飲み物の温度は、体温に近い方が吸収がよいといわれていますが、これは誤解冷たい方が胃にとどまる時間が短く、腸に速やかに到達します。しかし、脱水のことを考えるのであれば、飲む量が大事なので、自分が飲みやすい温度が一番です。また、熱中症の予防という観点では、体を冷やす意味でも冷たい飲み物は有効です。

 

また、飲み物ばかり飲んでばかりいるのも苦痛、という方は、果物や野菜など水気の多い食材や、冷たいスープ仕立ての食事など、食べ物も工夫してみるといいですね!

 

【参考サイト】

MSDマニュアル家庭版 脱水

熱中症環境保健マニュアル – 環境省熱中症予防情報サイト

 

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