この頃の体の不調、暑さのせいだと思っていませんか? 夏バテと間違いやすい貧血についてまとめました。
【まとめ】
☆だるい、疲れやすい、すぐに息切れする・・・これって夏バテ? そもそも夏バテとは?
☆実は夏バテじゃなく、貧血かも? 貧血って何? 何が起きている?
☆食事と寝室環境を整えれば、夏バテも貧血もいっぺんに撃退できます!
※ナビタスクリニック新宿・濱木珠恵院長が監修した『栄養と料理』(2018年8月号)についてはこちら。
このところの暑さで、体がまいった! これって夏バテ?
蒸し暑い日が続いています。こう暑さが続くと、早々に夏バテ気味になってきている人もいるのではないでしょうか?
「夏バテ」というのは、高温多湿環境や冷房による急激な温度変化に体が対応できず、体がだるかったり、食欲不振に陥ったり、といった、この時期の体の不調をざっくりまとめていう言葉。医学的に定義されてはいませんが、経験的に知られてきました。
具体的には、主に以下の3つの症状のどれか、あるいは複数が重なって起きているものと考えられます。
① 外気と室内の温度差による自律神経の乱れ
猛暑の屋外から、キンキンに冷えた室内に入るのは、本当に気持ちがいいですよね。しかし、この急激な温度変化は、体には大きな負担。体には内部の状態を一定に保とうとする性質(「恒常性」と言います)があるため、外界の変化が大きいほど、それに抗うために体力を消耗してしまうのです。冷房の効きすぎも同じ理由でNGです。そうしているうちに、体温調節を担う自律神経が乱れ、全身の倦怠感や食欲不振を招き、夏バテ状態となります。
② 厳しい発汗環境による体温調節困難や脱水
先日も「発汗」について取り上げた通り、高温多湿の環境では汗をかいても蒸発が妨げられ、体温を下げる効果がうまく得られません。体は必死で体温を下げようとしますが、下がらないことが自律神経を疲弊させます。また、発汗が過剰になれば当然、体内の水分が失われ、脱水気味に。やはり全身倦怠感や食欲不振につながり、夏バテを引き起こします。
③ 熱帯夜の増加で、寝苦しさが招く睡眠不足
「遮熱」の回で見た通り、日本の夏は年々暑さを増し、熱帯夜も増加しています。特に都市部は、エアコンの室外機や住宅密集化などが原因で、夜間も高温状態が続きやすい環境にあります。しかし、スムーズに眠りにつくには、体から熱をしっかり放出して、体温を下げる必要があります。熱帯夜だと、暑さで寝つきが悪くなったり、眠りが浅くなったりして睡眠不足に陥り、疲れが溜まって夏バテにつながります。
だるい、疲れやすい、すぐ息切れする・・・夏バテじゃなくて貧血かも!
「そうか、このだるさや疲れは、やっぱり夏バテか」と思われた方、ちょっと待ってください。その全身倦怠感や疲労感、本当に夏バテのせいでしょうか?
だるい、疲れが取れない、すぐに息切れがする、寝ても寝ても眠い・・・そんな状態が続いているようなら、まずは貧血を疑ってみたほうがよいかもしれません。
貧血は、いわば「鉄分の赤字」。体から出て行く鉄分と、摂取する鉄分のバランスが崩れ、収支が不足している状態です。
鉄は、血液(赤血球)の主成分であるヘモグロビンの最も大切な構成要素。鉄が酸素と結びつき、それが血流に乗って全身を巡ることで、体のすみずみまで酸素を届ける仕組みになっています。
となると、鉄が足りない=酸欠=酸素を体中に充分運べない、ということ。要するに、貧血は全身に酸欠を招くのです。筋肉が酸欠状態になると、疲労感やだるさ、肩こりなどの症状が現れます。また、酸欠を補おうと、普通にしていても呼吸が速くなっていて、ちょっとした階段などでもすぐに息切れしてしまうのです。
食事と寝室環境を改善して、夏バテも貧血も撃退しよう。
貧血かどうかは、受診すればすぐに調べてもらえます。深刻な貧血と分かれば、鉄剤が処方されます。ただ、鉄剤は体に合わず、気分が悪くなってしまう人も。また、ぎりぎり基準値程度であれば、「経過観察」と言われるかもしれません。「経過観察」とは、放置することではありません。生活改善などをしながら、専門家の指導の下に変化を見ていくことが大事です。
そこで実践したいのが、食生活の改善と、睡眠環境の整備です。
体に吸収されやすい鉄分を多く含むのが、赤身の肉や魚。豚肉や牛肉、羊肉、そしてカツオやマグロなどです。ほうれん草なども植物性の鉄分を含みますが、それだけでは吸収率が低いのが気になるところ。動物性タンパクやビタミンCと一緒に摂ると、吸収率がアップします。
また、豚肉やマグロ、カツオをお勧めしたい理由が、ビタミンB群も一緒に摂れる点。いずれも赤血球を作るのに必要なビタミンB12を多く含み、さらに疲労回復に役立つB1やB6は、それぞれ豚肉や、マグロやカツオに豊富です。貧血予防の食事を心がけることで、夏バテ予防にもなる、というわけです。
また、鉄分不足は睡眠障害(不眠症)の原因としても知られます。鉄分不足によって神経伝達物質の受け渡しがうまくいかないため、とされます。睡眠不足では疲労が不十分に回復せず、夏バテを招きますから、こちらも貧血改善策によって一石二鳥の効果が期待できると言えます。
ただし、寝付けない、寝ても寝足りない、といった寝不足の原因は、鉄不足だけにあるとは限りません。床に就く際、寝室の温度は低めになっていますか? 寝る直前まで部屋の照明が明るすぎたり、深夜のコンビニに出かけたり、スマホを眺めたりしていませんか? 十分に体温を下げ、強い光を浴びないようにし、神経を鎮めて、スムーズに眠りに就くための気持ちと体の準備を心がけましょう。
貧血も夏バテもはねのけて、これからの夏本番を乗り切りたいですね!