熱中症予防に欠かせない水分補給。それは発汗を促して、体温上昇を防ぐためです。でも、飲んでいれば安心、というわけでもないのです。
【まとめ】
☆蒸し暑い日本の夏! 気温40℃超でもカラッとした暑さのエジプトよりも、体には負担大。
☆発汗で体温が下がるのは、汗が渇く時! すみやかに乾かなければ、体温が下がらず熱中症のキケンも。
☆水分補給の際、飲み物はシーン別に使い分けて。大量発汗時はスポーツドリンクでも、通常時は麦茶がオススメ。
知ってた? 日本の夏は、エジプトより体にキツイんです。
突然ですが、日本の夏は、エジプトの夏より体への負担が大きい、って知っていますか?
エジプト・アスワンの夏は、平均最高気温が40℃を超え、雨は一滴も降りません。猛烈な日差しが照り付ける毎日です。

気象庁 地点別データ・グラフ(2017年)
ところが、アフリカより平均気温も最高気温も低い日本の夏の方が、体にとっては酷なのだそうです。

気象庁 地点別データ・グラフ(2017年)
その理由は、湿度の高さ。
人類の起源はアフリカにあるとされています。だったら、ヒトは本来暑さには強いはずです。でも、アフリカの夏は、日本よりずっとカラッと乾いた暑さなのです。アスワンの春から夏の湿度は、平均16~21%です。
一方、日本の夏は、非常に蒸し暑いですよね。このところも毎朝、東京では湿度が90%を超えています。日中も、75%近くで推移する日も少なくありません。
湿度が高いと、同じ温度でも、より暑苦しく、体への負担が大きくなります。
なぜでしょうか?
汗をかいても蒸発しなければ、体温は下がらない。
カギを握っているのは、汗です。
そもそも人が汗をかくのは、体温を下げるため。ただし重要なのは、汗をかいただけではダメで、かいた汗が乾かないといけないのです。
「気化熱」という言葉を聞いたことがあるでしょうか? 水分は蒸発する際、つまり液体から気体に形を変えるのに、エネルギーを必要とします。エネルギー≒熱というのはなんとなく分かりますよね。つまり、汗をかいて、それが蒸発する際に、「気化熱」として体の表面から熱を奪っていくのです。

環境省(http://www.env.go.jp/earth/ozone/hiyasu-waza/tech/img/img_tech-needs01.png)
例えば湿度が90%の場合、空気が抱え込める水分の余白は、残りあと10%。100%を超えてしまったら、もう支えきれずに水=雨となって、降り注ぎます。夕立や、最近多いゲリラ雷雨はその典型です。
その状態では、なかなか空気は水分をもらってくれない、というのは想像に難くないでしょう。汗をかいても書いても、じっとり蒸発しない。考えただけもグッタリきますね。汗がすみやかに蒸発しなければ、体温は下がらず、行きつく先は、熱中症。それが日本の夏なのです。
というわけで、熱中症予防には、風通しも大事。
屋外であれば、こまめに日陰で休憩を取り、うちわなどで扇ぎます。
日差しがない室内でも、閉め切ったままエアコンも付けない状態でいれば、熱と湿気がこもって危険です。エアコンや扇風機を使う他、部屋の換気扇を入れた上でドアや窓を細めに開ける、という手もあります。細めに空けるのは、気圧差をつけて空気が流れ込みやすくするためです。
緑茶やコーヒーより、麦茶やスポーツドリンク(運動時)で水分補給を!
もちろん、十分な発汗のためには、十分な水分補給も必須。
その際、「水だけを大量に飲むとキケン」とよく言われますよね。これは、大量に汗をかいた場合に、体の中の塩分(ナトリウム)が失われ、そこにさらにお茶や真水を大量に飲んでしまうと、血液や体液が極端に薄まってしまうため。特にナトリウム欠乏は、筋肉のけいれんをひき起こします。
毎年この時期になると、「塩入り」を謳った清涼飲料水が店頭にずらずら並びますが、それもこの熱けいれん防止を売りにしたものです。
となると、大量に汗をかいたりスポーツをしたりすることもなく、涼しい室内でゆったり過ごす際には、この「塩入り清涼飲料水」には要注意。糖分と塩分の摂り過ぎになってしまうからです。せっかく食事で塩分や糖分の量に気を遣っていても、元も子もなくなってしまいます。逆に言えば、大量発汗時やスポーツ時には、塩入スポーツドリンクなどを活用してもよいでしょう。
日常的な水分補給なら、おススメは、ミネラルも一緒に摂れる麦茶やルイボスティー。緑茶は確かに体に良いのですが、利尿作用があるので、脱水防止には本当はあまり適していません。同じく紅茶、ウーロン茶、コーヒーなどカフェインを含む飲み物や、アルコールも、かえって喉が渇いてしまう可能性があります。
湿度と水分補給を意識して、賢く汗をかきましょう!