-急増する熱中症、新型コロナとの見分け方は? マスクでリスク上昇って本当?-

2020.08.20

発熱や頭痛、めまいなど、共通して見られる初期症状も。判断と受診の目安とは・・・。

 

 

【まとめ】

 

☆連日の酷暑で、熱中症患者が急増。一方、新型コロナウイルス患者も毎日1000人前後の新規発症者。

 

☆熱中症と新型コロナ、初期症状が似ていて判別が難しいことも。どこで判断したらいい? 受診の見極めは?

 

☆withコロナで夏も手放せないマスクが、熱中症のリスクを高める!?・・・実際どうなの?

 

 

 

酷暑で熱中症による死亡者急増!! 熱中症の初期症状は新型コロナに似てる?!

 

 

連日の35℃越えで、各地で最高気温の更新が続く日本列島。東京都内では、今月に入り熱中症で亡くなった人が100人を超えています。NHKによれば、お盆休みにあたる8月14~17日の4日間で、50~90代の男女24人が熱中症で死亡したとのこと。

 

 

気象庁

 

 

一方で、引き続き新型コロナウイルスの感染者も、1日あたり1000人前後のレベルで増加中。「東京は、感染者が増えても重症患者が少ない」などとも言われていましたが、ICU患者を含めないカウント方法へと変更されていたことが報じられました。やはりコロナ対策の手を緩めることはできません。

 

 

そこで問題になるのが、熱中症と新型コロナの判別初期症状に似通った点が少なくないためです。

 

 

熱中症は、高温多湿な環境や体内の水分不足などから体の調節機能が失われ、その結果起きる全身の様々な不調の総称。私たちの体の中では、様々な化学反応が絶え間なく起き、生命が維持されています。しかし適切な体温や水分量が保たれないと、そのシステムは正しく機能せず、破綻してしまうのです。

 

 

 

 

熱中症はいくつかのタイプや段階に分けることができます。典型的なのは初期状態とも言える「熱疲労」から、生命の危険のある「熱射病」へと重症化するもの。米国疾病予防管理センター(CDC)英国保健サービス(NHS)によれば、多く見られる症状は以下の通りです。

 

 

●熱疲労:発汗が滞り始めて熱の放散が滞り始めています。すぐに受診を。

・頭痛

・めまい、意識混濁

・食欲不振、吐き気

・過度の発汗、青白く湿った肌

・腕や脚がつる、胃けいれん

・呼吸が速い、頻脈

・38℃以上の発熱

・のどの渇き

 

 

●熱射病:体温が異常に上昇してしまい、命に関わる状況です。直ちに救急車を。

・非常に暑いのに発汗しない

・40℃以上の発熱

・呼吸が速い、息切れ

・意識混濁・喪失

・反応がない

 

 

 

 

熱中症と新型コロナ、どうやって見分ける? 受診すべきかどうかの判断ポイントは?

 

 

これに対し、新型コロナウイルス感染症の典型的な症状は、

 

・発熱

・頭痛

・咳、息苦しさなどの呼吸器症状

・疲労感、倦怠感、筋肉痛

・吐き気、下痢などの消化器症状

・味覚異常、嗅覚異常

 

 

などとされています。熱中症とはかなり違うようにも見えますが、問題は、これらがいっぺんに現れるわけではないこと。初期症状は人によって様々で、状況次第では熱中症との見分けがつきにくいこともあるのです。

 

 

 

 

これについて、ナビタスクリニック川崎の谷本哲也医師は、日刊ゲンダイの取材に応え、

 

 

「どちらも症状が似ているため、初期症状から判断するのは難しい。医師の診察でも、熱中症になるような暑い空間にいたかといった“状況判断”から始めます。自分で対処しなければならない時は、まずは500ミリリットルのペットボトル1本分の水分を取って休んでください。軽症の熱中症であれば良くなってきます。それでも回復しない場合は、重度の熱中症かコロナの可能性があるので、医師や保健所に相談するのがよいでしょう」

 

 

とアドバイスします。

 

 

谷本医師

 

 

また、米国のニュースチャンネル(Kare11)でも、発熱や頭痛、めまい、倦怠感など、共通する症状を指摘。出演した医師も、診療現場で厳しい判断を迫られる場面があることを認めています。

 

 

新型コロナでは、顔が紅潮したり、大量に発汗したり、という症状は典型的ではありません逆に熱中症なら、乾いた咳などの症状は引き起こしません。呼吸器症状があるなら、新型コロナの可能性があります。ただ、少しでも疑いがあって新形コロナかどうか知る必要があれば、とにかく検査を受けてください

 

 

Kare11

 

 

状況的に熱中症が疑われる場合は、まず涼しい場所で30分間休憩し、十分に水分補給を。それでも改善しない場合、いずれにしても受診すべき、と考えておきましょう。

 

 

夏のマスクはなぜハイリスク? 安全に使うには? ひんやりグッズは過信禁物。

 

 

熱中症の増加の要因になると心配されているのが、マスクです。

 

 

 

 

2012年に行われた海外の実験では、室内のランニングマシーンで1時間、不織布マスクをつけてジョギング(5㎞)を行ったところ、心拍数、呼吸数、二酸化炭素が増加し、マスクに覆われた皮膚の表面温度は他より1.76℃高くなったと報告されています。

 

 

また、今年6月に行われたNHKのサーモグラフィー実験(晴天、正午前)では、マスクをしていない状態では口元の温度は36℃前後でしたが、マスクを着けると、温度はすぐに3℃程度上昇(39~40℃)。屋外に立っていただけですが、かなり暑苦しさが増し、5分ほどで口の周りに汗をかき始め、息苦しい感覚も出てきたとのこと。

 

 

NHK

 

 

熱中症を回避するには、体からの熱の放散が重要です。顔の表面から熱を放出するだけでなく、汗を出して気化熱として熱を奪わせてもいます。さらに、吐き出す息(呼気)からも熱が放出されます。

 

 

ところが、マスクを着けた状態では、そのすべてが妨げられます。「マスクが暑苦しい」と感じるのは、気分的なものだけでなく、実際に体温低下を難しくするのです。

 

 

 

 

なお、今年流行している接触冷感素材マスクは逆に、「気分的なもの」に過ぎないかもしれません。ナビタスクリニック新宿・濱木珠恵院長は、

 

 

「ひんやりグッズは涼しい気分にはなりますが、体内の温度を下げるわけではなく、熱中症の予防には直結しないのです。首や脇などの脈に触れる部分を冷やす方が効果的です」

 

 

と警鐘を鳴らします(フジTV「it!」2020年8月19日)。接触冷感素材は、触った瞬間ヒヤッとしますが、実際の温度は通常の製品と同じためです。

 

 

(フジTV「it!」2020年8月19日)

 

 

マスクは基本には、自分の飛沫を周囲に撒き散らさないためにつけるもの。周囲に人がいない時にはマスクを外し、熱中症リスク回避を心がけてください。

 

 

また、マスクを着けた状態での運動や屋外作業が必要な場合は、必ず短時間ごとに休憩を入れることが大事。風通しの良い室内や日陰で、人との距離を十分にとり、マスクを外して涼みましょう

 

 

マスクをしていると、湿気で喉の渇きを感じにくいとも言われます。喉が渇いてから飲む、という考えではなく、水分補給は30分ごとなど時間を決めて行いましょう。

 

 

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