蚊は刺されてかゆいだけでなく、伝染病を媒介する厄介者。かしこい虫よけ剤選びと使用上の注意点は?
【まとめ】
☆蚊は感染症を媒介します。昔からある日本脳炎の他、2014年にはデング熱の国内感染も確認されました。
☆このところ注目を集めている虫よけ成分が「イカリジン」。有効性と安全性を兼ね備え、小さな乳幼児にも使えます。
☆虫よけの王道は、「ディート」。ツツガムシなどにも効き、大人ならアウトドアや海外旅行におすすめ。一昨年から高濃度(30%)タイプも国内発売に。
蚊の季節が到来! 気になるのは蚊が媒介する伝染病
蚊は、刺されてかゆいだけでなく、伝染病を媒介すること(蚊媒介感染症)でも知られています。昔から有名なのが、アカイエカの日本脳炎。さらに近年は、デング熱の国内感染例(2014年)など、熱帯・亜熱帯地域で蚊が媒介し流行している伝染病が、日本でも報告されるようになってきました。地球温暖化との関連も言われていますね。
蚊が媒介する伝染病には以下のようなものがあります。
☞デング熱、チクングニア熱、ジカ熱、日本脳炎、西ナイル熱、黄熱、マラリア
(詳しくはこちら)
今のところ日本脳炎以外は、海外からの輸入感染症ですが、この先は分かりません。また、海外旅行を考えるなら、蚊の対策は必須です。
というのも、これらの伝染病には、かかってしまった場合の特効薬がありません(予防接種が可能なものはあります)。もし自分を刺した蚊がウイルスを持っていて、発症してしまったら、とにかく症状を和らげる薬を飲みつつ、治すには自分の体力・免疫力頼みなのです。
つまり、蚊から身を守ることは、伝染病から身を守ること、とも言えます。
そこで重要なアイテムが、虫よけ剤(スプレー、ミスト、ジェルなど)ですよね。素肌につけるだけでなく、衣類の上からもかけておくことをおすすめします。
乳幼児にも使えるイカリジン。ただし、蚊以外の目的には要注意!
近年、新たな虫よけ成分として注目を集めているのが、「イカリジン」。一番のポイントは、小さな子供にも使えることです。
後ほどご説明する最も一般的な虫よけ成分の「ディート」は、効き目には定評がありますが、安全性の点で若干の注意が必要。乳幼児への使用や1日の使用回数には制限があります。
一方、イカリジンに関しては、そうした年齢制限等はありません。塗り直しの回数制限もありません。
じゃあ、効き目が弱いのでは? と思われそうですが、そんなことはありません。米国疾病管理予防センター(CDC)も、米国環境保護庁の評価にならって、イカリジンをディートに並ぶ「標準的な虫よけ」と位置付けています。
実は、イカリジンが開発されたのは20年も前。しかし日本ではようやく3年前に、イカリジンを主成分とする虫よけ剤の市販が開始されました。そして一昨年、イカリジンを15%と高濃度に配合した「防除用医薬部外品」(厚労省が有効性と安全性を認めた、ということ)の製品が発売され、一気に注目が高まりました(天使のスキンベーププレミアム、プレシャワーDF PROなど)。
その他、虫よけ特有のニオイがない、ディートと違って服の繊維や樹脂を傷めない、という特性もあり、より使いやすいと言えます。
ただ、注意したいのは、効果を発揮するのが、蚊の成虫、ブヨ、アブ、マダニに限られる、という点。
アウトドア活動や、宿泊先の衛生管理が微妙な海外諸国に出かける場合には、万能とは言えず、少し心もとないところもあります。
万能な虫よけ剤、ディート。アジア諸国への海外旅行にはおすすめ。
さて、虫よけ成分の王道とも言えるのが「ディート」です。
日本でも一昨年から、ようやくディート30%配合の虫よけ剤が市販されるようになりました(サラテクト リッチリッチ30 、ムヒの虫よけムシペールPS30、スキンベーププレミアム、プレシャワー30EXなど)。それまでは12%や15%が最高でした(なお、ディートは10%以下が医薬部外品、12%以上は医薬品です)。
ディートの濃度が高いと、何が違うのか? 実は、効き目の持ち時間が違います。ディート10%以下だと3時間ごとに塗り直しが必要ですが、30%だと8時間くらい、長持ちするのです。汗をかくとさらに落ちやすく、低濃度ではあっという間に効き目が切れてしまいそうです。
また、アウトドアや海外旅行で特にディートをお勧めするのは、ダニの仲間に対する効果が高いから。
草むらには、前回取り上げたマダニだけでなく、元々、命の危険もある病原体を持っているツツガムシが潜んでいます(日本にもいますよ!)。また、海外で衛生管理の悪いベッドなどに寝る場合、イエダニやトコジラミ(南京虫)が気になります。
いずれもダニの仲間ですが、これらに対しては、イカリジンでは十分な虫よけ効果を得られないのです。
大人が使用する分には、ディートの方が効き目が長く幅広いので、便利そうですね。
ただし、注意点もあります。厚労省では、子供への使用を以下のように制限するよう求めています。
小児(12歳未満)に使用させる場合には、保護者等の指導監督の下で、以下の回数を目安に使用すること。なお、顔には使用しないこと。
・6か月未満の乳児には使用しないこと
・6か月以上2歳未満は、1日1回
・2歳以上12歳未満は、1日1~3回
また、CDCも、以下のことを推奨しています。
●製品ラベルにある使用方法・使用上の注意をよく読み、従うこと。
●子供の手の届かないところに保管する。
●顔に付ける場合は、最初に手にスプレーし、顔に塗りましょう。
●外出時のみ使用し、帰宅後はすぐ石鹸と水で洗い流す。
●10歳未満の子供には自分で使わせないこと。
●小さな子供では、手や目・口の周りに使用しない。(目や口に入らないようにするため)
●吸い込んだり、呑み込んだり、目に入れたりしないこと。
●ケガや肌荒れを起こしている箇所に付けないこと。
この他、高濃度のディートは繊維や樹脂や傷めることが知られています。なお、神経毒性については確認段階ですが、正しく使用している限り心配なさそうです。副作用なども報告されていません。
どんな薬も、使い方を間違えれば毒になりますが、正しく使えば健康や快適な生活の維持に大に役立ちます。上手に選んで、正しく使いたいですね。