今まさに急増している「水虫」のご相談。女性医師の多い当院の皮膚科には、女性の患者さんも多く受診されます。
【まとめ】
☆今年も気温・湿度の上昇とともに、水虫の相談で皮膚科を受診される方が増えています。
☆ナビタスクリニック皮膚科の福原麻里医師に聞きました。女性に多い水虫のタイプとは? その原因は?
☆水虫の治療は長丁場。いきなり市販薬を使うのがおススメでない理由とは? 正しく知って適切に治療し、予防しましょう。
温度と湿度が上昇するこの時期、ダニ刺され(先日の記事はこちら)と並んで皮膚科へのご相談が増えるのが、水虫です。ナビタスクリニックの皮膚科には女性医師も多いことから、女性患者さんからのご相談も少なくありません。
ナビタスクリニック立川・皮膚科の福原麻里医師に、女性に多い水虫の症状とその予防策などについて聞きました。
――梅雨に入って水虫での受診が増えているそうですね。女性の水虫患者さんに多い症状というのはあるのでしょうか?
福原医師 今日も女性の水虫患者さんが受診されました。最近女性で多いと感じるのは、「小水疱型」と呼ばれるタイプで、土踏まずに水疱が出来ます。かゆみの訴えも強いです。
水虫と言えば、足指の間に出来てジュクジュクするもの、と思われている方が多いようですが、症状の出方にはいくつかタイプがあります。典型的には、4つほど挙げられます(図)。
大きく分ければ1~3は足白癬(あしはくせん)、4は爪白癬(つめはくせん)と呼ばれますが、原因となるのはどれも「白癬菌」と呼ばれるカビ(真菌)の仲間です。国内では10種類ほどの白癬菌が原因となりますが、水虫を起こすのは主に2種類です。
症状として最も多いのは、やはり1の趾間(しかん)型、足指の間がジュクジュクするタイプです。次に多いのが2の小水疱型で、足の裏に小さな水疱が出来たり、皮がめくれたりします。かゆみで困ると訴えられる方が多いです。
(趾間型 ロート製薬)
(小水疱型 ロート製薬)
今日の女性患者さんは、水疱が増えて大きくなって、歩くのが痛いと言っていました。また、小水疱型の患者さんの多くに、足底だけでなく足の縁から足背側にかけても、皮むけなどの症状が見られます。
3の角化型は、足の裏全体が固く、厚くなり、ガサガサします。かゆみがない人もいて、水虫と気づかないままにされている方も珍しくありません。足白癬を放置して、爪まで感染してしまった状態が4の爪白癬です。爪が黄色く濁り、分厚くなったり、だんだんもろくなってボロボロになってしまったりします。白癬菌の種類の違いで症状の出方が変わるわけではありません。
(角化型 ロート製薬)
(爪水虫)
1人の足に複数のタイプが見られることもあります。
――足の水虫も爪の水虫も、ジュクジュク型もガサガサ型も、白癬菌の種類が違うわけではないのですね。それらしき症状があったら、とりあえず市販薬で治療するのはどうですか?
福原医師 医療機関が処方するのと同じ主成分で、1日1回すり込めばいい、という市販薬(塗り薬)もあります。ただ、薬局で、自己判断で購入していきなり使い始めるのは、あまりお勧めできません。
まず、外見が白癬とよく似ている全く別の病気は少なくないためです。手のひらや足裏に水疱ができて痒みを伴う「異汗性湿疹」や、小さな膿疱のできる「掌蹠膿疱症」など、色々あります。それなのにいきなり水虫薬をつけてしまうと、かえって悪化することもあるのです。
(異汗性湿疹 埼玉県皮膚科医会)
(掌蹠膿疱症_田辺三菱製薬ヘルスケア)
しかも市販薬は、医療機関で処方される薬よりかぶれやすい可能性があります。主成分以外の成分の影響です。
ですからまずは皮膚科を受診して、きちんと診断を受けましょう。患部の皮膚や爪をほんの少し削って採取して、顕微鏡で見ます(直接鏡検)。もし白癬菌と診断されれば、薬が処方されます。市販薬は、その薬が万が一切れてしまった場合や、治った後の予防薬として利用されてはいかがでしょうか。
もちろん放置はよくありません。特に趾間型だと、指の間の皮膚は薄く、ジュクジュクした傷口から細菌が入りやすいため、細菌感染を起こすこともあります。また、白癬菌は物や床を介してヒトからヒトへとうつりますから、家族内やスポーツクラブなどで感染を広げてしまう可能性もあります。
――治療にはどれくらいの期間がかかるのでしょうか? また、生活するうえで心がけることなどはありますか?
福原医師 足白癬と診断がついたら、抗真菌薬の塗り薬をつけていただきます。その際は、患部だけでなく両足の裏側から側面まで広く塗ってください。治療開始後、2週間ほどで症状がだいぶ改善してくる患者さんが多いです。(爪白癬の場合、塗り薬もありますが、原則的には最初から飲み薬になります)
注意していただきたいのは、皮膚症状が収まってもまだ白癬菌が残っている可能性がある、ということです。そのため、さらに1カ月を目安に薬を継続していただいています。
一方、ご自身の判断で早いうちに薬をやめてしまった場合、治療が不十分なことが多くあります。実際、冬は白癬菌が減少して症状が出ず、夏にかけて潜伏していた白癬菌が再び増えて再発、というのを毎年繰り返している方もよくいらっしゃいます。
生活上の心がけとしては、感染を広げない配慮が必要になります。
特に、フローリングや畳を介しての家族への感染は要注意です。白癬菌が湿っているところで増殖しやすいのは有名ですが、乾いたところでもホコリや髪の毛などと共にかなり長期間、生息し続けるとのデータもあるんです。
ですから、室内ではなるべくソックス着用で過ごすよう、お話ししています。もちろんサンダルや浴室マットの共有も避けてください。患者さんのご家族も、もらってしまわないよう、素足ではなく靴下やスリッパなどで生活する方がよいかもしれません。
――女性の足元ファッションと水虫に何か関係はありそうでしょうか? 予防のポイントと併せて教えてください。
福原医師 ストッキングにつま先の細いパンプスは、非常に水虫リスクの高いファッションですね。長時間はお勧めできません。ナイロン製のストッキングは吸水性が低く、つま先の細い靴は足指の間が密着して汗が乾かないので、多湿となります。白癬菌にはうってつけの環境です。
また、素足で履くサンダルやミュールなどは一見、水虫予防によさそうですが、意外と足底に汗がたまりやすいようです。小水疱型の水虫が発生しやすくなりますね。
予防には、とにかく清潔と足指の間の汗対策です。
白癬菌は24時間以内に洗い落とせば感染を防げます。外出して長時間靴を履いた後、素足でどこか歩いた後などは、帰宅後すぐに石鹸で足全体と、汚れや汗のたまりやすい足指の間をよく洗ってください。
通年を通して多い趾間型には、やはり5本指ソックスがお勧めです。最近は5本指ソックスもかなり進化して、シルク素材や、指先だけになっていてパンプスやサンダルを履きながら着用できるものもあります。
5本指ソックスが苦手だったり、履くのが大変な方には、「趾間ガーゼ」を受診時にお勧めしています。
ただ、自分で行うのは少し大変です。市販品で、私が最近見かけて便利だなと思ったのが、「足ゆびちゃん」という商品です。足指を密着させず、汗や汚れを吸い取る、という機能に特化しています。ズボッと足指を通していただくだけなので、とても簡単です。
(足ゆびちゃん アズマ工業)
女性ですと外反母趾で変形している方や、男性でも足指がピタッと密着している方は多く見受けられます。ご高齢で足指までよく洗えない方もいらっしゃるようです。こうした商品の利用もご検討されてはいかがでしょうか。
――ありがとうございました。夏場は暑いですし、裸足でいれば蒸れないから良いように見えますが、かえってリスクが高いのですね。夏でも家では5本指ソックスで過ごすのがよさそうです。
また、処方薬と同じ主成分の市販薬に飛びつかず、自己判断で使用する前に皮膚科でまず相談すべきことが分かりました。水虫は意外と長期戦です。中途半端に薬をつけたりやめたりして再発を繰り返さないためにも、皮膚科の医師の指導を受ける方が近道かもしれませんね。
福原麻里(ふくはら・まり)
2002年、杏林大学医学部卒業、同年4月、同大学皮膚科入局。その後、日野市立病院勤務、2度の産休、海外生活等を経て2015年より杏林大学病院。公立阿伎留病院、久我山病院にて診療にあたり、2016年4月よりナビタスクリニックにて診療開始、現在に至る。日本皮膚科学会認定皮膚科専門医。
(トップ画像:shutterstock/aslysun)