-【久住医師「学校での新型コロナ対策」ウェビナー】休校は不要?感染を完全に防ぐのは不可能、ではどうする?-

2020.06.23

学校再開から1カ月超。現場では今も試行錯誤が続いていますが、過剰な対策は子供たちの負担にもなりかねません・・・。

 

 

【まとめ】

 

☆新型コロナ休校は感染拡大の抑止にほとんど効果がなかった?!子供はかかりにくく、発病もしにくいためです。

 

☆感染を完全に防止するのは不可能。その認識を共有した上で、現実的な対策を。過剰策は子供への負担大。

 

☆「感染させた責任」はナンセンス。悪いのはウイルスであり人ではありません。その上でとるべき対策とは?

 

 

 

新型コロナウイルス感染症対策として、全国の小中学校・高校が一斉休校となったのが3月。2カ月以上を経て授業は徐々に再開され、1カ月以上が経過しました。しかし、どの学校もまだ試行錯誤の中にあり、親御さんたちの不安は消えていません

 

 

この度、ナビタスクリニック理事長の久住英二医師が、学校でのコロナ対策についてオンラインセミナーの講師として招かれ、講演しました。

 

 

 

 

※YouTube動画はこちら

学校でのコロナ対策と猛暑対策【PTA適正化おしゃべり会:番外編】第4回

 

 

今回はその内容を振り返りながら、子供たちの学校生活を軌道に乗せていくにあたって大事な、共有すべき視点をまとめていきます。

 

 

休校は効果がなかった?!「子供は感染しにくい」という事実。統計的にも子供の患者はわずか5%!

 

 

国内では、安倍首相から突如出された休校要請により、 3月2日から全国の小中高校生は自宅待機となりました。ただ、「世界的に見ると、休校は感染者を減らす上でほとんど効果がなかったと報告されています」と、久住医師。

 

 

このショッキングな研究結果が示されたのは、世界的な学術誌『Nature』掲載の論文(画像グラフ)。それによると、ロックダウン以外の対策は、休校を含め、感染拡大の抑止に対してさほど有効でなかったことが分かります。

 

 

(縦軸:上から対策の種類=ロックダウン、公共イベント中止、休校、自己隔離、ソーシャルディスタンスの奨励)

 

 

休校の効果が期待ほど高くなかった理由について、

 

 

子供はもともと大人に比べて感染しにくく、さらに感染しても発病しにくいからです」

 

 

と、久住医師。

 

 

 

 

実際、4月末までの米国の新型コロナ患者の年齢構成を見てみると、40~50歳代が多くなっています。本来は高齢者がかかりやすい病気ですが、なぜか60歳以降、徐々に減っています(おそらく60代以降は仕事を引退して出勤が減ること、また80代以降は年齢的に亡くなる方が増えて人口そのものが少ないことが理由。ただし重症化しやすいのは70歳以上)。

 

 

一方、子供はやはり少なく、10歳未満は1%、19歳までを合わせても5%にとどまります。

 

 

 

 

「この傾向は中国他でも同じです。となると、子供はかかりにくく発症しにくいにも関わらず、大人と同じ対策をとっていく必要があるのか、改めて考える必要があります」

 

 

子供が感染しにくい、重症化しにくい医学的メカニズムは? 無症状感染が多い可能性!

 

 

子供がかかりにくい医学的なメカニズムも明らかになってきました。現在最も有力視されている仮説を久住医師が解説します。

 

 

「ウイルスは、細胞の表面にある何らかのタンパク質をレセプター(入口)として、細胞内に侵入します。新型コロナではACE2というタンパク質なのですが、18歳未満の子供の細胞にはこのタンパク質が少ないことが分かっています。そのために子供は感染しにくいのです」

 

 

 

 

子供が重症化しづらいことについても、医学的な説明が試みられています。

 

 

新型コロナウイルスは、肺炎だけでなく、血管の細胞にも感染します。血管は、ただ血液を通すだけのパイプではありません。中で血液が固まらないよう調節する精緻なメカニズムを持っています(体の外に出ればすぐに固まりますよね)。その働きが低下して血液の流れが滞ると、よく知られている心筋梗塞や脳梗塞だけでなく、肝臓など内臓の働きも低下し、病気を重篤化させます。

 

 

 

 

「新型コロナも例外ではありません。新型コロナウイルスは血管の働きを妨げて血栓を作りやすくし、様々な合併症や重症化を招きます。その点、子供はまだ血管も若く、働きが低下していないため、重症化しにくいのではと考えられています」

 

 

 

 

また、新型コロナウイルスの特徴として、感染しても発病しないままの人が、想定していた以上に多いことが挙げられます。久住医師は、シカゴの老人ホームでの報告を示します。

 

 

平均年齢が80歳を超えるにも関わらず、PCR検査で陽性が判明した入居者のうち、4割近くが無症状のまま1カ月過ごしました。米国は先進国で唯一、平均寿命が短縮している国です。保険がなく適切な医療が受けられない人が多いためです。ですから、80歳といっても日本の80歳より歳をとっていますが、それでも必ずしも発病しないのです」

 

 

 

 

若ければなおさら発病しにくいと考えられます。

 

 

フランスの南極観測船では、もちろん乗組員はもっと若いですが、感染者の8割が無症状だったという報告があります。ですから子供さんでは無症状の割合はさらに高い可能性があります」

 

 

「感染を完全に防ぐのは不可能」という現実を前提に、学校での新型コロナ対策を!

 

 

では、学校での新型コロナウイルス感染症対策はどうあるべきなのでしょう? 久住医師は、

 

 

「感染を完全に防ぐことは不可能」

 

 

という認識を大前提として受け入れ、共有することがスタートだと言います。とはいえ、なかなか簡単には受け入れがたい、と思われるかもしれませんが・・・。

 

 

「私たちは本能的に感じる不安や恐怖にとらわれ、論理的・科学的に導かれた結論になかなか心が従えない、という問題があります。これをまず念頭においてください」

 

 

と、久住医師。その例として挙げるのが、米国の心理学者・行動経済学者ダニエル・カーネマンの著書『ファースト&スロー』での興味深い考察です。

 

 

米国では2000年9月11日の米同時多発テロ直後、旅客機の利用客が減り、米国内を車で移動する人が増加しました。その結果、その年の自動車交通事故による死者は、テロに巻き込まれて亡くなった人数を上回ることとなったのです。

 

 

 

 

冷静に考えれば、日常茶飯事レベルで発生する自動車事故に比べ、テロや飛行機事故の頻度は高くありません。しかし人は必ずしも論理的に行動できるわけではないのです。

 

 

新型コロナ対策を考えるうえでも、その自覚を持つことが大事

 

 

「もし新型コロナへの感染を完全に防ぎたいなら、無人島へ1人もしくは家族で移住するしかありません。もしくは家にこもって“セルフ無人島”をつくるしかない。しかし、実際には食べ物を買いに行かねばなりませんし、amazonの配達物を受け取らねばならない。現実的ではありません。学校での新型コロナ対策も、この前提のもとに、現実的に考えていく必要があるのです」

 

 

 

 

学校での新型コロナ対策は、手洗い励行が第一。石鹸や洗剤でコロナウイルスは死滅します。

 

 

学校が5月半ばから徐々に再開されて以降、フェイスシールドの着用など、各校で様々な対策が試みられてきたようです。しかし久住医師は

 

 

「私は実際には手洗い励行くらいしかできないだろうと思っています」

 

 

と、率直な見解を示します。

 

 

現実的でないものは、習慣化しないでしょうし、だんだんすたれていくと思います」

 

 

実際、大阪小児科医会も、ポスターを作成して学校でのフェイスシールド使用に待ったをかけています。書かれている通り、フェイスシールドを子供に使わせることは、メリットよりデメリットの方が上回るのです。

 

 

大阪小児科医会

 

 

また、久住医師は消毒に関しては、アルコールがなくても「普通の石鹸や台所洗剤で十分」とします。

 

 

「コロナウイルスはエンベロープという脂質の膜で包まれていて、通常の石鹸や台所洗剤でこの膜を破壊できますから、それでウイルスは死にます。吸ったら化学性の肺炎を引き起こす次亜塩素酸の噴霧など論外ですし、トイレ掃除も、目に染みるのを耐えながらわざわざハイターで掃除するまでもありません」

 

 

 

 

休校措置は、大人の都合優先で非合理的? 子供に与えるデメリットを考え、地域ごとに最適解を。

 

 

休校措置や学校での行き過ぎた新型コロナ対策については、もう少しそのデメリットを重く見るべきかもしれません。

 

 

たしかに子供たちが学校で感染して家に持ち帰り、同居の高齢者にうつすリスクがないわけではありません。しかし、先の通り、40~50歳代の大人の方が患者は多く、それでも強制力のない緊急事態宣言下で、やむを得ず通勤を続けていた大人は大勢います。通勤時にフェイスシールドを装着しているわけでもありません。

 

 

 

 

「言ってみれば、発言力の弱い子供たちがきちんとした根拠もないまま、大人の都合を押し付けられてきた状況です」

 

 

と、久住医師は指摘します。

 

 

休校は子供の精神面に大きな影響を与えます。英国での研究では、ロックダウンによって感情的な困難さ、振るまいがおかしくなる、落ち着きがなくなる、といった精神面で問題を抱える子供が増えました。新型コロナに際して人々が立ち向かわなければならないのは、病気そのものだけではないのです」

 

 

 

 

最適解は、一つに定めることはできません。新型コロナウイルスへの感染ばかりに関心が集まっていますが、全体に目を向けなければならないからです。図の通り、登校しても休校しても、それぞれに問題は出てきます

 

 

 

 

どの辺に最適点があるのかは、地域によって異なります。感染者がたくさん出ている地域とそうでない地域では、当然違ってきます。個別具体的に考える必要があります」

 

 

久住医師からのメッセージ――悪いのは人ではなくウイルス。一人ひとりが広げない努力を。

 

 

感染は広がることは間違いありません。ですが、「お前が感染させたから責任取れ」とか、「もし感染させたらお前が責任取れるのか」ということではありません。誰も責任は取れないのです。悪いのはウイルスであり、人ではないからです。

 

 

感染の疑いがあったら、速やかにPCR検査を受けること。また、受けられるようにすること。感染者を早期に見つけ、広げないことが大事です。見つかったら、周りの方もどんどん検査をして、陽性になった方は家や施設で過ごしていただくようにすることです。

 

 

この認識を社会が共有し、一人ひとりが行動するこれに尽きると思います。

 

 

 

 

※聴講者からのQ&Aコーナーでも、寄せられた質問に久住医師が率直に回答しています。ぜひ併せてご視聴ください。
こちら⇒https://www.youtube.com/watch?v=AtLs4Us8JUI

 

 

久住英二(くすみ・えいじ)

医療法人鉄医会(ナビタスクリニック立川・川崎・新宿)理事長。内科医、血液内科医、旅行医学、予防接種。新潟大学医学部卒業。虎の門病院血液科、東京大学医科学研究所探索医療ヒューマンネットワークシステム部門研究員を経て2008年、JR東日本立川駅にナビタスクリニック立川を開業。好評を博し、川崎駅、新宿駅にも展開。医療の問題点を最前線で感じ、情報発信している。医療ガバナンス学会理事、医療法人社団鉄医会理事長内科医、血液専門医、Certificate in Travel Health、International Society of Travel Medicine。

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