withコロナの夏、熱中症リスクのあるマスクと換気時の冷房についてQ&Aで確認しましょう!
【まとめ】
☆熱中症を防ぎながらwithコロナの夏を乗り切るための久住医師のアドバイスをQ&Aでまとめます。
☆熱中症と新型コロナ対策、正しい両立の仕方は?マスクを濡らして使うのは? 不織布マスクは洗ってもいい?
☆室内でこそ起こりやすい熱中症。冷房は必須ですが、では換気はどうしたらいい?
マスクで熱中症に? 熱中症予防のための、夏のマスクの選び方・使い方は?
東京では30℃超えとなる日が急に増えてきました。湿度も上がっています。総務省消防庁の発表では、すでに6月1~7日の1週間で1194人が熱中症で救急搬送されたといいます(日本経済新聞)。
人の増えてきた街中や人と接するシーンでは、飛沫の飛散を防止するためのマスクの使用が求められます。しかしこの暑さの中、これまで通りのマスクの使い方では、熱が内側にこもり、さらに暑く感じてしまうことに。汗で汚れもひどくなります。
そこでまずはwithコロナの夏を乗り切るマスク使用について、ナビタスクリニック理事長の久住英二医師の解説(テレビ朝日「中居正広のニュースな会」他より)を交えつつQ&Aでまとめていきます。
(テレビ朝日「中居正広のニュースな会」2020年6月13日)
Q.不織布マスクでも布マスクでも、濡らして使えば涼しく感じて快適?
☞ 布マスクならOK!でも、不織布マスクでは難しいでしょう。
「布マスクは、濡らした部分が乾く時に一緒に熱が奪われて(気化熱)涼しく感じます。布マスクならそれがスムーズに行われるのですが、不織布マスクの表面は、防水・撥水機能があります(後述)。そのため、霧吹きをしてもはじいてしまってうまく濡らすことができません」
稀に、使い捨てのはずの不織布マスクを使いこんで繊維の目が粗くなり、防水・撥水機能が落ちてきたものには、水がしみ込むことも。「それはそれで、繊維の目に水が入り込んでしまい、通気がなくなって息苦しくなってしまいます」
では、不織布マスクと布マスク、新型コロナウイルス予防の観点ではどのように使い分けるべきなのでしょうか?
「マスクの本来の目的は、感染している人が、ウイルスを含む飛沫を周囲の人に飛ばさないことにあります。ですから人が集まった“密”の場では、不織布マスクの方がその効果が高いです。一方、人との距離をある程度保ちやすい屋外や屋内でも人が多くない場所では、布マスクでもよいと思います」
Q.不織布マスクは洗って使って複数回使用してもいい?
☞ NG! 不織布マスクは洗うことで機能が損なわれます。
適切に作られた不織布マスクは、一般に3層構造をしています。
(日本衛生材料工業連合会)
●外層は、 ポリプロピレンなどのプラスチック素材で出来ていて、防水・撥水機能があり、ウイルスを含む飛沫などの水分をブロックします。
●中層は、特殊フィルターで、細菌やPM2.5などのごく細かな粉じんをブロックします。
●内層は、肌への刺激の少ない種類の不織布が使われています。
不織布というのは文字通り、織られていない布。繊維がバラバラな方向を向いて絡み合い、布状になっているだけのものです。そのため物理的な力には決して強くはなく、洗濯機洗いやもみ洗いをしたり、絞ったりすると、ゆがみが生じて繊維間に目に見えない隙間があいてしまいます。
そうすると防水・撥水性が損なわれたり、また中層のフィルターが寄れたりして、本来の機能が発揮できなくなる可能性が高いのです。また、そうした力を加えずにただ洗剤でつけおき洗いをしても、今度は細かい目に入り込んだ汚れが落ちず、清潔感ある状態を回復するのは難しいのです。やはり、「使い捨てマスク」ということなのですね。
Q.マスクは人と会う時はどんな時もはずしてはいけないの?
☞ 屋外で人と十分な距離(2m以上)確保できる場合は、むしろはずしましょう。
環境省と厚生労働省が公表した「令和2年度の熱中症予防行動」でも上記のように呼びかけています。夏場のマスク着用は、心拍数や呼吸数、血中二酸化炭素濃度、体感温度の上昇をもたらし、熱中症のリスクを高める恐れがあるためです。
(環境省・厚労省)
「呼吸にも体の熱を逃がす役割があります。ですから外を歩いている時などは、外していただいて構わないんです。また、歳をとるほど、下半身はあまり汗をかかなくなり、そのぶん顔の周りからたくさん汗が噴き出す、という人が多くなります。これは人間の加齢に伴う変化です。そういう意味でも、適宜マスクを外して顔周りの汗を蒸発させ、体の熱を逃がしやすくしましょう」
熱中症予防の観点では、屋外では水分補給や日差しをよけることはもちろん、できればこまめに人のいる場所から離れ、マスクを取って顔に風をあてましょう!
熱中症対策には冷房が必須! でもコロナ対策に換気は必須!どちらを優先したらいい?
室内での新型コロナウイルス対策の感染予防には、換気が大事だとされています。一方で、2019年5~9月に熱中症で救急搬送された方のおよそ4割が、住居内で発症しています。
(日本気象協会「熱中症ゼロヘプロジェクト」)
「エアコンを入れていても、設定温度が高すぎたりして十分に効いていないことがあります。高齢者は温度に関する感覚が鈍くなり、室内でも気づかないうちに熱中症に陥ってしまうことがあるのです。年間に熱中症で亡くなる方は約1000人、そのうち60歳以上は約8割を占めます」
(テレビ朝日「中居正広のニュースな会」2020年6月13日)
一方、新型コロナウイルス対策として換気を徹底するには、窓を開け放しておくのが一番ですが、これからの時期はそれでは室温は上昇するばかり。どうしたらよいのでしょうか・・・。
Q.コロナ対策の換気と熱中症対策の冷房、どちらを優先すべき?
☞ 換気も冷房もやるべき。冷房しながらの窓開けや換気扇の使用を。
「結論から言うと、どちらもやるべきです。厚生労働省は、新型コロナウイルス対策のためには冷房時でも窓を開けたり換気扇で換気を行う必要があると言っています」
窓を開けながらの冷房・・・まさに新常識です。電気代がかさむのは必至。少しでも電気代を安くするために、窓の開け方とエアコンの設定にいくつかのポイントがあります(図)。
(テレビ朝日「中居正広のニュースな会」2020年6月13日)
この夏は、新型コロナウイルスと熱中症という、方向性が正反対の2つの疾病対策をバランスよく心がけていかねばなりません。何か不安なことがありましたら、医師にご相談ください。特に、体調がすぐれないけれど、梅雨の悪天候や夏の炎天下の受診は厳しい、という方はぜひオンライン受診をご活用ください。
久住英二(くすみ・えいじ)
医療法人鉄医会(ナビタスクリニック立川・川崎・新宿)理事長。内科医、血液内科医、旅行医学、予防接種。新潟大学医学部卒業。虎の門病院血液科、東京大学医科学研究所探索医療ヒューマンネットワークシステム部門研究員を経て2008年、JR東日本立川駅にナビタスクリニック立川を開業。好評を博し、川崎駅、新宿駅にも展開。医療の問題点を最前線で感じ、情報発信している。医療ガバナンス学会理事、医療法人社団鉄医会理事長内科医、血液専門医、Certificate in Travel Health、International Society of Travel Medicine。