新型コロナで予防接種まで自粛してしまっていませんか?もっと怖い病気からお子さんを守りましょう。
【まとめ】
☆乳幼児の定期接種ワクチンの接種率が低下しています。新型コロナによる受診控えのためと見られます。
☆赤ちゃんやお子さんの予防接種はタイミングが大事。接種スケジュールを守るべき3つの理由とは?
☆同時接種を積極的にお勧めしています。遅れを挽回し、新型コロナよりも怖い病気を確実に防ぎましょう!
赤ちゃんの予防接種率が大幅に減少しています。スケジュール通り受けられていますか?
先日、「乳児の予防接種率が低下 重い感染症リスクに警戒を」というテレビ報道がありました。ネットニュースにもなっていたので、目にされた方は少なくないと思います。
「新型コロナウイルスの感染拡大の影響で赤ちゃんの予防接種を控える家庭が増えている」「厚生労働省は重い感染症にかかるリスクが高まるとして適切な時期に接種するよう呼び掛けています」という内容でした。
(厚労省リーフレット 一部)
これについては私も、日々の診療の中でとても気になっていました。緊急事態宣言が解除されて2週間あまり、ナビタスクリニック立川でも、ようやく予防接種を受けられるお子さんの姿が診察室に戻りつつあります。
報道で紹介されたと思われるNPO法人「VPDを知って、子どもを守ろうの会」のホームページを拝見しました。
実際、4・5月は、当院でもいわゆる“受診控え”が本当に多かったです。風邪などでしたら、ご自宅で療養されていただいても、そのまま治ってしまうことが多いので問題ありません。また、アレルギーなどでいつも飲まれているお薬があるなら、前もってご相談いただき、普段より長期間分お出しできる場合もあります。
しかし、予防注射はそうはいきません。こればかりは、この先もオンライン受診というわけにも、ご家族に代わりに来ていただくこともできません。
お子さんをお持ちの方で、新型コロナウイルスへの不安から外出自粛を徹底され、その結果として予防接種が後回しになってしまった、という方も多いのではないでしょうか。ぜひお子さんの母子手帳を見ながら、接種歴と接種スケジュールをもう一度照らし合わせてみてください。
予防接種はタイミングが大事。もう一度ご確認を! その3つの理由とは?
以下は、国立感染症研究所が公表している予防接種スケジュールの一部です。5月25日に最新版に更新されました。
(国立感染症研究所 詳しくは必ずサイトPDFをご確認ください)
できるだけこの接種スケジュールを守っていただくことは、3つの理由から大事です。
まず1つ目の理由は、お子さんをお持ちの方はもうご存じの通り、受けるべきワクチンの数が非常に多いことです。恐ろしい病気からお子さんを守るには、定期接種だけでなく任意接種ワクチンも必要です。
しかも、原則として、生ワクチン接種後に他の病気のワクチンを接種したい場合は4週間(中27日)以上、不活化ワクチン接種後は1週間(中6日)以上、間隔を空けなければなりません。その後すぐ風邪などを引いて体調を崩してしまえば、さらに間があいてしまいます。
まごまごしている間に、ワクチンで防げたはずの病気にかかってしまっては仕方がありません。

(Shutterstock/Anna Litvin)
特に定期接種ではワクチン(病気の種類)ごとに無料で接種できる期間が決まっています。後ろ倒しにしているとあっという間に過ぎてしまいます。せっかく無料で打てるものを自費で打つことになるのは避けたいですよね、というのが2つ目の理由です。
1回あたり数千円、2~3回接種のものもありますから、自費だとばかにならない金額です。なかには、無料だったものにわざわざお金を払うことに納得できず、打たせないままずるずる行ってしまう親御さんもいらっしゃるようです。
「どうしてそんな期限付きなの?」という疑問へのお答えが、3つ目の理由になります。予防接種の時期は、それぞれの病気にかりやすい年齢などをもとに決められているのです。
生後すぐは、まだお母さんから受け継いだ免疫が体の中に残って、赤ちゃんを守ってくれます。しかしその免疫は、時間と共に消えていってしまうもの。半年後には、赤ちゃんの体を流れる血液が新しく作られたものと全て入れ替わって、免疫も失われます。

(shutterstock/zffoto)
特に、細菌性髄膜炎や百日せきなどは、生後比較的早い段階からリスクが高まります。それらから赤ちゃんの身を守るには、生後2カ月以降、予防接種を受けられるようになったらすぐ、きっちり受けていくことが一番なのです。
当院では同時接種をお勧めしています。接種スケジュールの遅れもご相談ください。
ナビタスクリニックでは、ワクチンの同時接種を積極的にお勧めしています。複数の種類のワクチンを1度の受診で済ませるものです。
任意接種ワクチンを含めれば、予防接種で防げる病気は15種類以上。それらのワクチンを別々に接種していたら、スケジュールを守るのは実際のところ無理と言っていいでしょう。混合ワクチンを使っても、複数回接種のものや接種間隔を考えると、かなり困難です。
例えば、細菌性髄膜炎の予防には、小児用肺炎球菌とヒブワクチンを生後6か月までに3回接種しなければなりません。かなりタイトなスケジュールになることがお分かりいただけると思います。

(Shutterstock/REDPIXEL.PL)
同時接種を取り入れていけば、お子さんの体調がよいタイミングを逃さずに、早期に接種を完了できます。もちろん医学的には問題なく、安全であることも分かっています。生ワクチンと生ワクチン、生ワクチンと不活化ワクチンの組み合わせも可能です。ぜひご相談ください。
なお、新型コロナウイルス流行や外出自粛によって、決められた期間内に定期接種を受けられなかった方も、自治体によって公費接種を受けられる場合があります。ぜひお住いの市町村にも問い合わせてみてください。
また、乳幼児健診もお忘れなく。お子さんの健康状態だけでなく、成長の状態を定期的に確認し、相談することで、病気や障害などを早めに発見することも可能です。そのまま様子を見る場合もありますが、疾患によっては早期の治療が有効で、その後のお子さんの人生を大きく左右することもあり得ます。
予防接種や乳幼児健診は、「不要不急」ではありません。予防接種で防げる病気は、命に関わるものや、非常に感染力の強いもの、とお考えください。そのために予防接種が開発され、普及しているのです。ほとんどのお子さんにとっては、新型コロナウイルス以上の脅威であることは間違いありません。
ナビタスクリニックでは、待合も3密にならないよう配慮し、アルコール消毒などを設置しています。室内や備品等の消毒や換気にも努めていますので、ぜひ安心して受診なさってください。
ナビタスクリニック立川院長(小児科)
細田和孝
(トップ画像:Shutterstock/goodluz)