乳児マスク不要論の医学的な根拠が出てきています。買い物や飲食店の新常識とは?(2020/05/30放送)
【まとめ】
☆「子供は新型コロナにかかりにくい」という統計的な現象、分かってきた生理学的なしくみとは?
☆買い物は夜に行くべき? エコバッグVSレジ袋、新型コロナ対策に適切なのはどっち?
☆テイクアウト、どれだけ利用するようになった? でも、そろそろ飲食店に行きたい、だったら何に気を付ける?
※前編「満員電車は3密じゃないの? 超過死亡って何?」はこちら。
「子供はかかりにくい」医学的な根拠って? カギはウイルスの“入り口”。
前回、新型コロナウイルス対策でも3歳未満にマスクは不要であり、「しない方がいい」理由として、呼吸器が未発達で熱中症リスクが高いことを紹介しました。さらに、「しなくてもいい」理由も明らかになりつつあります。
「まず、世界的にも子供は大人に比べれば感染例は少なく、重症例も極めて少ないことが、データでも示されてきています。ロンドン大学などの最新研究では、子供の方が大人より56%うつりにくいことが分かっています。つまり、大人が100人感染する状況では、子供なら44人しかうつらないということです」
と、久住医師。
「さらに、その生理学的な理由も研究が進んでいます。有力なのは、細胞の表面にあって新型コロナが侵入する入り口になるタンパク質(受容体)『ACE2』が、小さいお子供ほど少ないため。米国の学者の研究では、ACE2の量を10歳未満、10~17歳、18~24歳、25歳以上に区切って調べたところ、10歳未満で最も少なく、次いで10~17歳が少ないことが分かりました。年少の子供ほど体が未発達で、ウイルスが侵入するとっかかりがないので、感染しにくいと言うわけです」
「このウイルスの特徴を利用して治療に結び付けようという研究も始まっています。血液中に“おとり”のACE2を感染予防薬としてたくさん入れば新型コロナウイルスがそちらに取りついて、細胞に感染せずに済むのではないか、というものです」
逆に、インフルエンザはお子さんたちが一番かかりやすいことからも、子供が感染しにくいことは新型コロナウイルスの特徴と言えるとのこと。久住医師によれば、「インフルエンザは患者さんの7割が14歳以下、入院する患者さんの7割が65歳以上」なのだそう。
「子どもたちはかかりにくい、というのであれば、大人と比べて外出制限を少し緩めてあげてもいいのでは、という考えもあります。もちろん、まったくかからないわけではないと思いますので、『かからない』といった報道が先行してしまうと問題が生じます。PCR検査を広く実施して統計を取り、動向を見て対策等を切り替えていくことのできる体制をまず整える。その上で、制限の程度について検討していくとよいと思います」(久住医師)
解除後の買い物は、夜行くべき? 買い物袋はエコバッグとレジ袋、どっちが感染リスクが低い?
解除後の生活について、リモート出演の柳澤秀夫氏(元NHK解説委員)のご家庭では、購入したパッケージ商品を全て店内でアルコールシート消毒してからマイバッグに詰めているそうです。これについては、
「そこまで神経質にならなくても大丈夫だと思います」
と、久住医師。
「これまでは他のコロナウイルスのデータからの推測でしたが、新型コロナウイルスに関しても、時間がたてば物の表面に付いたウイルスの量はどんどん減っていくことが分かっています」
世界的な医学雑誌『The New England Journal of Medicine』では、新型コロナウイルスが半減するまでの時間は、銅に付着した場合は約1時間以下、段ボールでは約3時間、そしてプラスチックでは約7時間と報告されています。
銅と言えば、10円玉。お金を触った直後の手は用心、ということ。また、外出自粛で宅配便を経由しての物品購入が増えていますが、受け取った段ボールは半日くらい玄関などに置いておく、という案がスタジオの劇団ひとりさんから提案されました。
しかし久住医師は、
「そもそも段ボールにウイルスがついていなければ、そんなことはしなくていいですよね。ウイルスが段ボールに付いている可能性は今のところ極めて低いと思います」
と、過剰反応を制します。
また、プラスチックは、ボールペンなどの文房具類や、コンビニの弁当容器、調味料や飲料のボトル、お菓子のパッケージなど、生活のいたるところに存在します。
「スーパーで買った物に少しくらいウイルスが付いていたとしても、先の通り、時間とともにウイルスはどんどん死んでいきます。ウイルスが1個体内に入ってきたとしても、感染するわけではないですし、ウイルスに触れた手も手洗いすれば済みます。ただ、すごく気になる方は、アルコールシートで拭いていただいたり、野菜であれば流水で洗っていただければウイルスは落ちることは分かっています」(久住医師)
また、街の声として聴かれるのが買い時間帯について。「混雑を避けるため、スーパーマーケットには夜9時以降に行く」という人もいるようです。緊急事態宣言の解除前と後を見ると、買い物時間帯に変化はないとのこと。解除前の買い物行動が定着してきていると見られます。
リモート出演の古市憲寿氏(社会学者)は、混雑時の買い物を避けるために、Googleマップや地図アプリでお店の混雑時間帯を確認しているそうです。
さらに、買った商品の持ち運びについて、国内外でもエコバッグ持参とレジ袋派で感染リスクについて意見が分かれていますが、これについて久住医師は、
「エコバッグの材質にもよりますが、布製であればウイルスはレジ袋にくらべて速やかに死んでいくと思われます。今後レジ袋は有力化の予定ですので、これを機にエコバッグに替えるというのも手だと思います。
そもそもウイルスがプラスチック表面で比較的長生きするのは、ウイルスは乾燥すると感染力を失う性質があるためです。ですから布や段ボールなど繊維の上では水分が吸い取られて乾燥しやすいため、感染力を早く失います。例えばナイロン糸には吸水性はなくても、繊維が編み込まれていると毛細管現象で水分が引っ張り込まれますから、つるつる表面のところにいるよりは早く感染力を失うと考えられるのです」
とエコバックを支持しました。
ちなみに水分や乾燥の点で言うと、これから日本は梅雨や夏、高温多湿の季節を迎えます。「そうなるとウイルスは弱まりますか?」と、中居君。これに対し、
「弱まっては来るんですが、中国からの報告で、北部の涼しく乾燥した地域と、シンガポールのように高温多湿の地域で、人から人へうつる感染効率にあまり差がない、というデータが出ています」
と、久住医師は厳しい見方を示します。夏だからと言って油断はできないようです。
新型コロナ対策で、みんなのテイクアウト率はどれくらい? そろそろ外食したい? だったら・・・
飲食店の利用に関しては、まだ極力テイクアウト、という人も多いようです。最近は、イタリアンやフレンチなど、高級店もテイクアウトに参入しています。緊急事態宣言など自粛生活による外食産業への影響は甚大で、柳沢氏によれば、昨年4月に比べて今年4月は40%も売り上げが落ち込んでいるそうです。それでも、テイクアウトを導入しているお店では、かなり落ち込みが抑えられているとのこと。「それぞれ色々と知恵の出しどころなのかな」と柳沢氏は分析しました。
中居君も断然テイクアウト派だそう。行きつけは吉野家ですが、ついこの間、ロイヤルホストデビューしたと言います(カニクリームコロッケとエビフライの入ったメニューで、1600~1700円だった、と報告🍤)。
実際、1週間のテイクアウト利用回数は、緊急事態宣言以降、倍増しているとのデータもあります。1度も利用していなかった人も6割から2割程度に減り、4人に1人は週3回以上の利用となっています。
「店内で飲食するよりも、店員さんや他のお客さんと接する時間は短くなりますから、感染予防にはテイクアウトは有効だと思います」
と、久住医師。
「外食時、いわゆる大皿料理で、お皿をテーブルの真ん中に置いてみんなでつつくようなものは、しゃべることで飛沫と共にウイルスが付着する可能性があります。その料理を各自の箸でとったりすると、もし自身がウイルスを持っていた場合に大皿料理を汚染してしまうことにもなります」
新型コロナウイルスの流行を受け、大皿料理が主流の中国でも、最近は最初からとり分けて提供するスタイルが増えたりと、食文化にも影響が出ているようです。ホテルバイキング(ブッフェ)も、トングの共用などに不安を感じる人が多いのだとか。久住医師は、
「ですから、飲食店ではできるだけ一人ひとり分けられた料理を注文する。大皿料理であれば、料理が来たらすぐに人数分にとり分けてしまうのがおススメです。だんだん、これくらいのことなら大丈夫だ、というのが分かってくると思います。もちろん緩み切ってしまうと、感染する方が増えてきてしまいますが、じゃあその手前ならいいね、という合意点が出来てくるのでは?」
と、解決策と見通しを示しました。
ウイルス侵入口の『ACE2』は唾液腺や舌にも。やはり唾液方式PCR検査の普及に期待!
「最近の研究では、ウイルスの入り口となる『ACE2』が、口の中の唾液腺や舌の表面の細胞にもたくさん出ていることが分かっています。ACE2(受容体)は口以外にも出ていますが、口は食べ物を介してウイルスが入ってきやすい場所なので、感染が起きやすいんです」
「これから発症する感染者(発症2日前から人にうつしてしまいます)の方含め、無症状感染者の口にもウイルスが多くいると考えられます。ですから、自他ともに感染が分からない状態で、もし一緒に大皿料理をシェアして食べれば、感染が広がるリスクは高くなります」
さて、口の中にウイルスが多くいる、という観点からも、唾液を使ったPCR検査は非常に合理的と言えます。
「ACE2の観点からも、唾液を使ったPCR検査は合理的ですし、今後広がっていくと思います。日本国内では北海道大学の豊嶋教授の研究グループの報告では、鼻や喉のぬぐい液と同等の感度で、唾液を使ったPCR検査ができることが分かっています」
「これが普及すれば、患者さんも検査が苦痛ではなくなりますし、医療者もくしゃみなどで飛沫を浴びるリスクが減ります。将来的には企業などで検査をするのにも、検体として唾液を集めるだけ済みますから、だいぶ楽になりますね」
と久住医師も、唾液によるPCRの普及に大いに期待します。
※ナビタスクリニック立川でも、唾液によるPCR検査を始めました✨ ☞こちら。
中居君も、「2カ月夜ご飯を一人で食べているんですけど、一人が好きな僕でも気持ちが切れそうになってきちゃってます」と、もう限界の様子。劇団ひとりさんがZOOM飲み会を誘っても、どうも気乗りがしないようです。意外とそういう方は少なくないのでは?
テイクアウト利用が増えている一方で、宣言解除後、飲食店で外食したい人は8割以上に上っています。油断は当分できませんが、検査や治療の進歩・普及によって上手く折り合いをつけ、経済社会活動を回復させていくことも大きな課題と言えそうです。【完】
※前編「満員電車は3密じゃないの? 超過死亡って何?」はこちら。
久住英二(くすみ・えいじ)