-子供が風邪? 調べたら違った!「溶連菌感染症」-

2018.07.02

身近な細菌感染症、でも怖い合併症。受診の見極めは? 5~10日間はきっちり薬を飲ませて。

 

【まとめ】

☆咳は出ないのにのどが痛い?! 風邪に似た症状の他、イチゴ舌や細かい発疹が特徴的。

☆合併症予防のため、服薬(抗生剤)の継続と、2~3週間後の再検査が必要。

☆大人もうつります。日頃からコップやタオルの共用は避けましょう!

 

 

のどが痛い、から始まって、発熱、嘔吐、発疹・・・

 

子供が突然、のどが痛いと言い出し、熱も出てきた。体がだるそう。あるいは突然に吐いた。そんな時、多くの親御さんは、「夏風邪かな?」もしくは「胃腸炎かな?」と思うかもしれません。たしかに、夏風邪が流行し始める時期です。珍しい症状にも見えません。

 

そのため見過ごされがちなのが、春から初夏にかけて増える「溶連菌感染症」です。患者の咳やツバに混じった溶連菌という細菌が、のどに付いて感染し、発症します。特に、咳は出ないのにのどが痛く、舌と皮膚に異変が現れてきたら、可能性大。

 

舌は、当初は白く、後から赤くなり、ブツブツが目立つようになります。その見た目から「イチゴ舌」とも。

イチゴ舌(国立感染症ホームページ)

 

体には赤く細かい発疹が広がります。わきの下や太ももの付け根、腕や脚に出ることが多く、紙やすりのようにザラザラした感じになります。顔だと、頬や額には発疹が出て、口の周りには少ないのが特徴です。

特徴的な発疹(国立感染症ホームページ)

 

ただ、発疹は必ず出るわけではなく、全体の3割程度。後から出てくることも多いので、発疹がないからただの風邪、とは言えません。舌も当初は白っぽいので、異変には気づきにくいようです。

 

3歳以下では熱があまり上がらないこともありますが、多くの場合は高熱が続きます(普通の風邪なら、高熱は何日も続きません。)。熱が下がらない、咳や鼻水はあまり出ないけれど、とにかくのどが痛い、という場合は、受診してみたほうがよいでしょう。

 

 

検査すれば10分で判明。怖い合併症を防ぐため、薬は5~10日すべて飲み切って。

 

実際、数日間で自然に治ってしまうことも多いもの。でも、小児科を受診して検査を受け、10日間程度きっちり薬(抗生剤)を飲ませるほうが安心です。生き残った細菌による再発や、重い合併症を防ぐためです。

 

合併症の代表例が、①関節や心臓弁膜に炎症を起こす「リウマチ熱」や、②腎臓の炎症から血尿が出たり尿が出なくなったりする「急性糸球体腎炎」、③脚などに皮下出血を起こし、腹痛や関節痛が起きる「アレルギー性紫斑病」です。

 

ただし、①は近年ではほとんど見られません。②では、悪化すると肺に水が溜まって呼吸困難を引き起こす可能性もあります。③では紫斑病性腎炎も併発し、治療が長引いてしまうことも。いずれも、発症してから2~4週間後、忘れた頃にやって来るのが怖いところです。

 

検査は、のどの粘膜を少しこすり採って調べるもので、結果は5~10分以内で出ます。溶連菌の感染と分かったら、熱やのどの痛みなどをやわらげる薬に加えて、抗生剤が出されます。

 

薬を飲み始めれば、2~3日で発熱その他の症状は治まってきます。そうして元気があれば登園・登校は可能。ただしその場合、医師の登校許可書が必要です。また、溶連菌を退治するため、症状が治まった後も、薬は処方された分を全て(10日間程度)きっちり飲まなければいけません。

 

こうして治療したとしても、溶連菌には種類がいくつかあるため、1年以内にまたかかるお子さんは少なくありません。実は溶連菌は健康な子供でも15~30%はのどに持っていると報告されています。そこから人にうつすことはまれと言われますが、完全になくすことができないものでもあるのです。

 

 

大人もうつります。油断せず、タオルやコップは共有NG。

 

さらに大人も感染し、発症します。家族内で次々に感染してしまうことも多いので要注意。実際、子供の患者の4人に1人は、兄弟からの感染と報告されています。ワクチンはなく予防は難しいのですが、せめてタオルやコップなど、口をつけたり唾液がついたりする可能性がある物の共用は、日ごろからやめておきましょう。

 

(参考サイト)

国立感染症研究所 「A群溶血性レンサ球菌咽頭炎とは」

 

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