新型コロナ対策を緩和し始めた韓国や中国。各国の飲食店、スポーツ、エンタメ事情は?再流行は大丈夫?(2020/05/23放送)
【まとめ】
☆新型コロナ対策としての活動制限をいち早く緩和し始めた韓国と中国。人々の生活は今どうなっている?
☆韓国では飲食店やスポーツ、エンタメも徐々に再開へ。集団感染も、匿名検査の導入で急速に追跡拡大へ。
☆中国では飲食店再開も、各地で再流行の兆候?武漢では市民全員のPCR検査を開始。複数検体を一度に検査していいの?
緊急事態宣言が全面解除となる日本。今回のテレビ朝日「中居正広のニュースな会」前半のテーマは、「日本より先に制限を緩和した国は今?」。前編では、韓国や中国に何を学ぶべきか、ナビタスクリニック理事長の久住英二医師による解説を中心にまとめます。
※後編「新型コロナ、ドイツは今? 「接触確認アプリ」とは?」はこちら。
制限解除後に200人超の集団感染が起きたソウル。“匿名検査”が広がり阻止に効果?
韓国・ソウルでは、5月上旬に飲食店等の営業制限が解除されました。しかしその後、ナイトクラブで200人超の集団感染が発生。そのためナイトクラブや接客を伴う飲食店(韓国の法律で定められた、密な状態を作りやすい業種)の営業が禁止されたそうですが、一般市民の生活には新たな制限はなく、現在のところ大きな影響は出ていないそうです。
韓国では1日の新規感染者数が50人未満であれば、制限には至らない、という基準。院内感染等も起きてはいますが、今のところ第2波というべき大きな流行は来ていないません。
また、当初は集団感染が起きた施設の利用者の追跡ができなかったことから、爆発的拡大が心配されました。しかしその後、携帯電話の位置情報やクレジットカードの利用情報などを分析し、人を割り出しました。
さらに、匿名でのPCR検査が導入されたことで、検査数は一気に7万7,000件に。それまでは集団感染関連では2~3万人の受診にとどまっていました。集団感染が発生したナイトクラブの利用者・関係者には性的マイノリティの人や未成年もいたようで、それまではプライバシー等を気にして受診していなかったと考えられます。
これについて久住医師は、
「韓国の場合、クラブでの集団感染以外にも感染者はぼちぼち出ています。韓国では、日本でいう保健所に行くと、すぐにPCR検査を受けることができるそうです。日本では今のところ保健所や医療機関で個人情報をいただいたうえで検査する仕組みですが、一方でHIVなど、保健所等での性感染症検査には匿名で受けられるものもあります。ですから日本も韓国のように新型コロナも匿名検査を導入したほうが、裾野は広がると思います」
との見解を示します。
中居君たちも、「韓国は非常に対応が迅速ですし、検査できる量が日本とは違うな、と感じてしまいますよね」と韓国の対応や検査体制を評価。
「日本は1日2万件を目標にやっていますが、実際にはそこまで実施できた実績はありません。今日本はかなり感染が落ち着いていますから、この間にいかに検査体制を増やすかが大事だと思います」
飲食店はほぼ通常営業。スポーツイベントも次第に再開。コンサートも夏再開へ?
解除後、韓国の飲食店はほぼ通常営業で、来客数も戻ってきているそうです。飲食店内でも、さほど密を避ける様子もなく着席しています。韓国と言えば鍋料理も多くありますが、これまでは直箸で鍋をつついていたのを、トングや採り箸で取り分ける、という対応に切り替えた店が増えているそうです。
市場も、観光客はまだ来られないため地元の人がほとんどで、多くの人がマスクを着けてはいますが、賑わいを取り戻しつつあります。
また、プロスポーツも制限付きながら再開し始めています。5月5日のプロ野球を皮切りに、現時点では、サッカーやゴルフも行われています。ただし、無観客。Kリーグでは選手やスタッフのPCR検査陰性を確認しての再開で、世界でも一番安全なリーグの1つとされています。女子プロゴルフも、選手やキャディーさんは毎日検温を行い、ホールの外には診療所も設けられているそうです。
エンターテインメント施設も、十分な距離をとることで、ほぼ全て再開。中でもタッチパネル案内やロボットを駆使した映画館の無人システムが注目を集めています。一方、K-popアイドルのライブなど、人と人との距離をとることが難しいイベントはまだ開催できず、ネットLIVEなどを行っているといいます。
完全な再開は、感染者数や感染経路不明者の数、医療体制などを総合的に韓国政府が判断することになります。飲食店やスポーツイベントはかなり再開されてきているため、夏にかけてコンサートなどのイベント再開も模索されていく見通しです。
韓国の特徴は、宣言解除後に人々の生活が急速に元に戻ったこと。そうなると第2波の訪れもそう遠くないことが予想されます。その時のためにどう準備するか。ここでもやはり、検査の体制整備と使い方が重要といえます。
久住医師は、
「検査体制に関しては、韓国は世界のモデルにもなるくらいに整備が進んでいます。それによって、新型コロナ感染拡大の早期封じ込めにも成功しました。医療体制としては日本も遜色ないとは思いますが、いわゆる集中治療ベッドのキャパシティを超えてしまえば死亡率が上がってしまいます。重症化の分かれ目は発症からおおよそ10日目くらいまでですので、その様子を見ながら制限を緩和し、経済活動を徐々に再開していく必要があると思います」
と再開までの道のりを示しました。
中国も飲食店は全面再開。ただし厳しいチェックが・・・。一方、各地で集団感染も。
新型コロナウイルス感染症が最初に発生した中国・武漢は、1月下旬に都市封鎖となりました。それから2カ月半たった4月8日、行動制限が解除。さらに首都・北京でも制限は解除されてきています。
中国では現在、ほぼ全ての飲食店等の小売店が営業を再開し、入店前に徹底的に体温チェックを行う体制になっています。入店時に、名前と体温、そして携帯番号まで、お店側の用意した用紙に記入が求められます。そこまでして外食をしたくはない、という人もいるため、飲食店にお客さんが以前通りに戻ってきているわけではないようです。
また、経済の回復を図る中で、民間の開発した求職・求人のマッチング・アプリが流行っているといいます。中には、今は給与を支払えないけれども解雇を回避する手段として、会社同士やりとりし、従業員の籍を置いたまま一時的に別の会社に出向してもらい、給料を受け取ってもらう、という方法も増えているのだとか。こうした取り組みは日本でも「従業員シェア」「在籍出向」などと呼ばれ、すでに行われています。
なお、中国ではプロスポーツや、映画などのエンタメ業界はまだ再開されていません。中国ではサッカーとバスケットボールが2大人気スポーツですが、天津を本拠地とする強豪プロサッカーチームは新型コロナの影響で破産。エンタメ業界、劇場再開にあたって指針が出されましたが、「お客さん同士の間は数席空ける」「演者同士も距離をとる」といった難題が突きつけられているそうです。
このように、飲食店以外の活動がなかなか全面解除とならない背景として、一部地域で、新型コロナウイルスが勢いを盛り返す兆候がみられることが挙げられます。ロシア国境の黒竜江省や、北朝鮮国境の吉林省など、いくつかの地域では、解除後に集団感染が発生しています。
武漢でも、再び感染クラスターが発生。危機感を持った当局は、全市民を対象にPCR検査の実施を決めました。武漢は今も1,000万人規模(封鎖前は約1,400万人)の住民数。ほぼ東京と同じ人数が、先週から一斉にPCR検査を受け始めています。「10日間戦争」などとも言われ、検査に疲弊した看護師が座り込んで泣き叫ぶ様子がSNSにアップされる、といった状況も。
全市民検査を開始した武漢では、複数検体をまとめて検査。それって大丈夫なの?
こうした検査のキャパシティ超過に対し、武漢では複数の検体をまとめて検査する、といった手法もとられ始めています。
この検査のやり方について久住医師は、
「PCR検査は、ウイルスが入っていればそれを検出する感度は非常に高いので、まとめて検査しても問題はありません。日本でも、献血で集められた血液の感染症チェックで同じ手法がとられています。陽性率が10%以上になると毎グループ反応が出てしまうので無理ですが、10%よりも低い、~5%程度だろうという場合は、10人分くらいまとめて検査しても大丈夫ですし、検査回数が減らせて効率的です。
例えば、20人を検査するのに、1人ずつ検査すると20回検査が必要です。しかし10人ずつ2グループに分けてまとめて検査し、片方のグループから陽性反応が出たら、その10人を1人ずつ検査する、というやり方なら、2+10=12回で済みます。そうすれば検査に関わる人、物、時間を節約できます」
と説明します。
中居君も「こうしてみると、韓国も中国も、日本に比べて検査のキャパシティも大きく、対応もかなり迅速ですよね…」と、両国と日本の各差に深刻な顔つき。
「はい。日本はかなり置いていかれているな、という印象はやはりぬぐえません。もちろん中国は人口が日本の10倍いますので、日本と比べてキャパシティが格段に大きいとは思いませんが、韓国と比べると日本はかなり件数が少ないです。
今後、人々が活動再開する中で、必ず感染者はまた出てきます。しかし、再開自体は悪いことではないんです。それと引き換えに得られる経済的メリットも、人々の生活継続にとって非常に重要です。ただし、感染者の方々が出始めた時に十分なキャパシティをもって検査できる準備が必要です。
抗原検査(PCRより簡便に、30分程度で現在の感染の有無を調べられる検査)なども国内で出来ていますから、それも併用することでPCR検査を少なくしつつ、より大規模に検査をできる体制を早めに構築しないといけないですね」(久住医師)
※後編「新型コロナ、ドイツは今? 「接触確認アプリ」とは?」はこちら。
久住英二(くすみ・えいじ)