新型コロナ対策、BCGワクチンやマスクはどうなってる?来冬はインフル流行が重なる?(2020/05/16放送)
【まとめ】
☆新型コロナウイルス感染症の予防にBCGワクチンが有効かも、という仮説はその後どうなっているの?
☆中居君も目撃!巷にちらほら姿を見せ始めたマスク。夏は暑苦しい…それでも着用した方がいい?
☆来年の冬は、インフルエンザと流行が重なってしまう? 予防接種など、できる対策を着実に!
今回のテレビ朝日「中居正広のニュースな会」のテーマは、「新型コロナ対策、1カ月前と比べてこう変わった」。後編は、BCGワクチンのその後やマスクの使用などについて、ナビタスクリニック理事長の久住英二医師による解説をまとめます。
※前編「PCR検査は今?抗原検査って何?」はこちら。
BCGワクチンが新型コロナ予防に効果があるかも…という話、その後どうなった?
ワクチンと言えば一時、「BCGワクチンが新型コロナウイルス予防に効果があるのでは」という仮説が注目されました。久住医師は、
「これはもともと、中国や日本などの東アジアでは新型コロナウイルス感染症にかかっても重症化する人が欧米に比べて少ないことから、その要因としてBCG接種の有無が浮上したんです。しかしWHOは4月12日の時点で、『根拠がないので新型コロナ対策としては推奨しない』という報告書を出していました。
現在も海外で臨床試験は行われていますが、まだ研究結果は出ていません。イスラエルからの5月13日の報告では、BCGワクチンには新型コロナウイルス感染予防の効果は認められない、とのことでした」
と、説明します。
これに対し、スタジオの劇団ひとりさんからは、「でも、アジア諸国は欧米に比べて明らかに致死率が低いと、グラフなどを見ても思うんです。これがBCGが理由じゃないなら、他にどんなことが考えられますか?」という質問が…。
「一つには、遺伝的背景の違いはあるかもしれません。例えば今、新型コロナウイルス感染症で問題になる、血の固まりやすさが人種によって違う、とか、肥満の方が多いか少ないか、といったことが影響しているとも考えられます。ところが、欧米に住むアジア人と多人種を比べると、人種差はあまり見られなかったのです。ですから今、様々な要因の仮説が立てられ、次々に検証が行われている最中です」
と、久住医師。
「BCGは本来は重症の結核を防ぐもので、日本ではお子さんには接種が推奨されています。新型コロナウイルスの予防効果が否定されたとしても、お子さんも打たなくていい、ということではありません。ところが今、日本では新型コロナ感染を恐れて医療機関への受診控えが起き、そのせいでお子さんの予防接種の実施率がすごく下がっているんです。
コロナも怖いですが、すでに予防接種がある病気の方が、実はよっぽど怖いんです。そうした病気にお子さんがかかることのないよう、きっちり予防接種は受けていただきたいですね」
マスク不足は今どうなっている? 夏はマスクは暑苦しい…それでもつけるべき?
今から1カ月前には、全国的なマスク不足に対し、政府調達の布マスク(いわゆる“アベノマスク”)の配達が始まったというニュースもありました(4月17日)。現在では、徐々に店頭にも並び始めています。
中居君も、「居酒屋さんが店頭に並べて、50枚3000円で売ってました。たぶん店員さんが。どこから仕入れたのかは分からないけれども」と報告。中国での感染の収束傾向の中で、中国産のマスクが輸入され、街中のあちこちで売られているようだ、とのこと。
マスクの着用について久住医師は、
「本来、マスクは感染していない人が予防のためにつけるものではなかったんですが、新型コロナでは、症状の出る2日前からウイスの排泄が始まることが分かっています。そこで、皆さん感染していると考えて皆さんが外にウイルスを出さない、という気持ちで装着していただければと思います。
マスクを装着していただく際には、鼻も含めて顎まで覆われるようにしてください。マスクが果たして有効かどうかはまだ分かっていません。たしかに物理的にはウイルスを放出しなくなるので、うつりにくくなるとは思いますが、同じようなうつりかたをするインフルエンザでは予防効果は示されていません。後々検証されてくるとは思います」
との見解を示しました。
中居君も、「(科学的な予防効果のためというよりは)なんだかエチケットみたいなものにも感じますし」と、微妙な表情。劇団ひとりさんも、「夏になると(暑くて)しんどいですね」と、ちょっと困り顔です。中居君は医療者について、「夏は、あの防護服を着ながらの検査や治療となると…」と心配します。
「そうですね。当然、地域のPCRセンターで検査に当たる人も、フル装備で屋外のアスファルトの上でとなれば、しんどいですね」(久住医師)
一般用マスクに関しては、最近では様々な素材のものが開発されています。夏向けのマスクも登場しつつありますので、試してみてはいかがでしょうか?ただし、ファッション性よりもまずは機能が大事。その点を念頭に購入されることをお勧めします。
また、医療者や検査に関わる方は使い捨てマスクにせざるを得ませんが、防護服に関しては、唾液でのPCR検査が国内でも実用化・普及すれば、必要なくなると見られます。
夏をしのいでも来冬が心配。インフルエンザと一緒に流行ったらどうする?
夏を乗り切ったその先、来冬の流行も気になります。「インフルエンザと新型コロナと、両方来てしまったら、えらいことになってしまいますよね?」と、リモート出演の柳澤秀夫氏(元NHK解説委員)。
これについて久住医師は、
「実は、一般にウイルスの特徴として、様々な種類が同時に流行しないらしい、というのが最近分かってきたんです。何かが流行している時は、そちらに譲る、というような感じですね。今度の冬にインフルエンザが流行するのか、新型コロナが居続けてインフルが流行しないのかは、まだ分かりません。ちなみに、インフルエンザなのか新型コロナなのか、統計データが出始めるまで2週間くらい遅れがありますから、当初ははっきりしないでしょう」
と、解説します。
劇団ひとりさんも柳沢氏も、「インフルも新型コロナも、すべきこと、できる対策は一緒ですよね?」と口々に確認。
「はい。手洗いや人込みを避ける、といったことは一緒です。また、秋冬になって熱が出た時などにインフルエンザか新型コロナか、戦々恐々とされることを考えると、インフルエンザワクチンは例年通り接種を受けた方がいいと思います。もちろん、新型コロナもその頃までにワクチンが出来て普及すればいいのですが」
まずはインフルエンザの予防接種を受け、その上で自らの衛生行動を一層徹底していく、というのが王道のようです。
さて、日本より早く流行のピークを迎えた韓国や中国では、行動制限の緩和が進んでいます。中国では、その分、徹底した検温(1日4~5回)が行われているとのレポートがありました。これについては、「ちょっと厳しすぎるのでは」と、久住医師。
「たしかに体温は数値化しやすい指標の1つなんですね。ただ、体温は正常でも具合が悪い場合もあります。全身状態から判断すべきで、体温だけが独り歩きするのはどうかと思います」
ご存じの通り、新型コロナウイルス感染症を疑った場合の受診・相談の目安からも、“37.5℃縛り”は外されました。体温だけでなく、ご自身の全身の健康状態について、いつもよりもちょっとだけ敏感に(決して過剰にではなく!)センサーを働かせながら、予防に努めていきましょう。【完】
※前編「PCR検査は今?抗原検査って何?」はこちら。
久住英二(くすみ・えいじ)
(画像:テレビ朝日「中居正広のニュースな会」2020年5月16日)