緊急事態宣言延長後初めての週末は気の緩みが続出? 厚労相発言についても濱木医師が斬り込みました。(2020/05/11・12放送)
【まとめ】
☆受診・相談の“目安”から「37.5度」項目がようやく削除。厚労相の「勘違い」発言に濱木医師が物申す!
☆PCR検査数が伸びない日本。問題の一因は、大学病院の縦割り行政問題にあった!?
☆GW明け初めての週末、人々に新型コロナ自粛疲れや気の緩みも…。今の行動が緊急事態宣言解除の判断後の数字に直結します!
※後編「39県解除でも残る課題。唾液PCR検査っていいの?」はこちら。
ナビタスクリニック新宿院長の濱木医師が、TBS「ひるおび!」に2日連続でスタジオ生出演し、新型コロナウイルス対策について解説しました。両日のまとめを前編・後編に分けてアップします。前編は、検査体制に関する厚労相発言や大学の縦割り行政問題、人々の自粛疲れについて。
PCR検査の相談・受診“目安”から「37.5℃」削除で、厚労相の無責任発言が物議。
厚生労働省は5月8日、新型コロナウイルスの相談・受診目安から、「37.5℃」の項目を外しました。それまでは、2月17日に公表された「37.5℃以上が4日以上(高齢者・基礎疾患のある人は2日程度)」という項目が公には撤廃されていませんでした。
これについて、加藤厚労相が「目安ということが、相談とか、あるいは受診の一つの基準のように(とらえられた)。我々から見れば誤解でありますけれど…」と発言したことにも非難の声が上がっています。
番組MCの恵俊彰氏も、「厚労相は『みんな(保健所や国民)が誤解してたんですよ、我々はとっくにそんな目安、別に基準にしなくていですよ』とおっしゃってるように聞こえるんですが・・・」と批判的です。
意見を求められた濱木医師も、「寝言は寝て言え、って感じですけど」とバッサリ。
「目安も基準も、一般に考えたら同じじゃないですか。実際これを厚労省が健康局の文書として出しているということは、自分たちがそうアピールしているということです。もちろんそれを柔軟に対応しろ、と言っていたかもしれないですが、出された保健所の方々は少なくともそれを守ろうとしますよね。だからこそ医師会が、医師の裁量で検査をさせてくれと言っていたんです。
私たち国民は、“誤解”していないです。もしあるとすれば、彼らが誤解させてるんですよね。2月の時点ではまだ、その制限があっても仕方がなかったかもしれない。重症者の方をなるべく早く拾い上げようとするのであれば。
一方、3月1日の連絡事項で、地域によっては入院ではなくて宿泊施設等にうつしてもよい、という話も出ていました。しかし、結局ホテルへの移動が始まったのはかなり遅くなりましたし、基準を変えるのも5月まで伸びました。『遅かった』という自分たちの非は認めるべきなんです。
できなかった状況は分かります。ただし、2月の時点であなたたちの言ったことには責任を持て、と思いますね」
「実際にPCR検査を保険適用にします、と言っておきながら、その話もスムーズに動いていません。ですから東京のように患者さんが多くなってきている地域では追い付いていないんです。37.5℃の制限を設けたために遠慮した方もいるでしょうし、そのせいで断られた方もいる、もちろんゴリ押しで検査を受けられた方もいるかもしれません。目安を出したことで、どれだけの人がその数字に縛られたのか、認識していただく必要はあると思います」
PCR検査数伸び悩みの一因は、縦割り行政?!大学や民間の検査は活用されず。
リモート出演(5/12)の山梨大学の島田眞路学長(元同大学病院長)は、全国の国立大学や大学病院には相当数のPCR検査の機器があるにもかかわらず、厚労省あるいは文科省からの通達もなく、当然予算もつかず、まったく活用されてこなかった事実を糾弾しました。
山梨大学は、2002年のSARSの際には同病院で感染対策委員長を務め島田学長の指示で、費用も大学負担で、これまで独自に新型コロナウイルス対策を行ってきました。地域を支える病院として、患者さんの命を一番に考えてのことだと言います。いち早く大学独自にPCR検査を実施する中で、意識障害のある搬送男性を国内初の新型コロナによる髄膜炎と確認したほか、心肺停止の0歳女児の感染を確認し、即座に救急体制を見直して院内感染を防いだ実績を持ちます。
国は、全国の大学にPCR検査を実施する能力がどの程度あるかさえ、これまで把握してきていませんでした。ようやく5月11日に、文部科学省が調査を始めたことが報じられています。
濱木医師も、
「やはり文科省と厚労省、縦割り行政の弊害がここにもあると思います。民間の検査会社も2月の時点で、PCR検査を行うキャパシティはあったにもかかかわらず、医療機関に対し、感染研や衛生研からの検査依頼しか受けませんという連絡をしています。状況は変わってきているとは思いますが、結局今も状況は実質的に変わっていません。
そもそも民間の会社がわざわざ医療機関にそんなことを言ってくるなんて、裏から何か手を回されたのかな、ってちょっと勘ぐってしまいますよね。それも含めて、もちろん感染研や衛生研は誇りをもってやってくださったのかもしれないですが、あまりにも『自分たちの業務なんだ』とこだわりすぎたために、PCR検査が広がらなかった。そこは今後、反省して方向転換していく必要があると思います」
と、検査方針改善の必要性を、改めて指摘しました。
自粛疲れ?気の緩み? GW明けの感染者報告数は減少も、問われるのは今から2週間後。
先週末は、緊急事態宣言が延長されて初めての土日。2日間で確認された感染者は182人、東京だけで見ると58人でした。1週間継続して感染者ゼロも20県に上りました。全国的にも感染者の報告数は減少し、自治体ごとの対応にも差が出始めています。一方で、人々も自粛疲れからか、「3密」回避の不徹底が目立ち始めました。
にぎわう商店街や飲み屋街などの様子に、恵氏も懸念を隠しません。「こういう風にまた人が動き出したな、というのを見ると、ちょっと不安になっちゃうんですが・・・」
濱木医師も、
「そうですね。そこは本当に不安なんですよね。今幸い、感染人数は減っては来ているんですが、地域差がものすごくあって、人の動きが大きい地域はそれなりに患者さんがまだ出ています。まだ感染者の方が隠れている状態です。もちろん以前よりは交通量も大幅に減り、新規感染者の数も減っています。かといって、またいつも通りに、それこそ3月くらいの活動量にいきなり戻してしまうと、また同じことを繰り返すだけなんです。
一方、地方で、もともと人の行き来が少なく、公共交通機関より車移動という地域は、そもそも人口が少なかったり、密にならなかったりするので、新規感染者はますます減少が期待されます。
第2波、第3波を医療者はほぼ全員警戒しています。緩めるにしても、やはり段階をおいて少しずつ、こは大丈夫、ここはリスクがある、というのを分けて進めていく必要があると思います」
と、性急かつ一律の警戒解除を避けるよう、クギを刺しました。
ゴールデンウィーク中の新規感染の程度は来週に明らかになりますが、そこまでは国民の多くが努めて自粛に協力的だったので、感染者数は少ないまま推移すると見られます。しかし、気がかりなのは再来週の数字。GW明けで、なおかつ感染者の減少が伝えられている現時点の結果は、再来週に明らかになるためです。今こそ気を引き締めていく必要がありますね。
※後編「39県解除でも残る課題。唾液PCR検査っていいの?」はこちら。
ナビタスクリニック新宿院長
濱木珠恵
(画像:TBS「ひるおび!」2020年5月11・12日)