-【中居正広のニュースな会📺前編・アビガンてどんな薬?レムデシビルは? 久住医師が解説】-

2020.05.11

今回も久住医師が中居くんのギモンに答えます! 新型コロナの特効薬、かかったら誰でも使えるの?(2020/05/09放送)

 

 

【まとめ】

 

☆新型コロナウイルス感染症にまつわる疑問、今回は特効薬について、久住医師が回答!

 

☆アビガンは日本発、でも臨床研究段階の治療薬。どんな薬?どこで使える?妊婦さんには副作用がある、って本当?

 

☆日本初承認の新型コロナ治療薬、レムデシビル。でも備蓄量はごくわずかで日本は入手困難?!

 

 

 

5月31日まで延長された新型コロナウイルス感染症に対する緊急事態宣言。13の都道府県については状況は大きく変わりませんが、それ以外の34県では自粛要請の緩和などが始まっています。第2波の心配も出てくる中、ますます気になるのが、治療薬

 

テレビ朝日「中居正広のニュースな会」でナビタスクリニック理事長の久住英二医師が、3つの治療薬について解説しました。前編は、アビガンとレムデシビルについてです。

 

 

 

 

日本発「アビガン」はまだ臨床研究中。感染後すぐ飲まないとダメ? 飲む量が多い、って本当?

 

 

まず、一番よく名前を耳にする薬が「アビガン」。新型コロナウイルス感染症にかかった芸能人に投与され、回復したというニュースもたびたび耳にするようになりました。もともとは2009年の新型インフルエンザ流行の際に日本で開発された薬です。

 

 

「新型コロナウイルスは、特に肺の細胞が好きなんですね。肺の細胞に入ってきて、自分の遺伝子をコピーして増えたウイルスが、他の細胞にも侵入していきます。それに対する防御反応として、咳などの症状が出ます。アビガンを服用すると、そうしたウイルスの増殖をブロックしてくれます」

 

 

と、久住医師。

 

 

 

 

中居君たちからの「アビガンは感染したらすぐ飲まないと効果がないの?」という質問については、

 

 

「ウイルスが増殖するのをブロックする薬ですから、増える前に使うのが一番です。それでも、重症の方に使っても効果は期待できます。日本感染症学会は、重症の方に投与したところ6割くらいの方で症状が改善した、と報告しています。ただ、アビガンは錠剤なので、口から飲みこまないといけません。酸素吸入をしていて息が苦しい方、起き上がることさえ難しい方は、なかなか飲めないですし、人工呼吸器を使用している重症患者には投与はほぼ無理です」

 

 

と解説しました。

 

 

 

 

さらに、スタジオの劇団ひとりさんたちからは、「どれくらいの量を飲まねばならないんですか?」「砕いて飲んだりしてはだめなんですか?」といった質問も。

 

 

「特に1日目は、9錠ずつ朝晩2回、合計18錠飲まなければなりません。2日目からは4錠ずつの計8錠になりますが、これを2週間続けていただくことになります。砕いたり粉にして飲んでいただくことも可能だとは思いますが、その場合は錠剤と吸収スピードが違ってくるため、期待通りの効果が得られるかどうか。そういったデータはありません」

 

 

備蓄量は多いが、使える医療機関は限られている? 妊婦さんは使っちゃダメ、って本当?

 

 

現在、アビガンは備蓄量は多いのですが、使用できる病院は限られています。

 

 

「今、この薬をどんどん作るように政府が指示をして、実際に備蓄量は増えていますが、すべての医療機関で使えるわけではありません。まだ薬の効果を検証する臨床試験段階のためです。新型コロナウイルス感染症の患者さんを受け入れていて、なおかつこの臨床研究に参加している大学病院や総合病院に限られています。インフルエンザの際に街のお医者さんでタミフルをもらえる感覚とは全く違うんです」

 

 

「ですから今は、新型コロナウイルス感染症を疑ったら、まずは帰国者・接触者相談センターに電話で相談し、紹介された保健所や検査センターでPCR検査を受けます。陽性だった場合に、重症やその恐れがあれば、所定の医療機関で医師がアビガン等の投与を判断します。軽症だった場合は、自宅待機もしくは宿泊施設に入のようながオンラインなどで様子を見させていただきます。ただ、そうした宿泊施設や自宅待機の段階でアビガンを使いましょう、という判断は今はできないし、将来的にもやらないかもしれません

 

と、久住医師は説明します。

 

 

 

 

さらに、柳澤秀夫氏(元NHK解説委員)からの「アビガンを使わせてもらえる病院は公表されていないんですか? あるいは、アビガンを使っている病院に転院したいんですけど、っていう希望は可能なんでしょうか」との質問には、

 

「患者さんのご希望であれば、我々医療者はかなえて差し上げたいと思うんですが、今まだアビガンは臨床研究で効果を確認中のため、もう少しお待ちいただく必要があります。もし薬が潤沢に入手できるようになれば、例えば65歳以上だとか血圧の高いとか、リスクの高い方には早めに使おうということになっていくと思われます」

 

 

との見解を示しました。

 

 

なお、気を付けたいのが、妊婦さん。妊娠中の女性が服用すると、副作用として胎児に影響が出る恐れがあり、服用には同意書へのサインと妊娠の可能性がある場合は妊娠検査が必要になります。

 

 

メーカー側は、服用後も1週間は避妊が必要としていますが、リモート出演の大阪医科大学付属病院・鈴木富雄医師は、念のため3カ月の避妊を指導しているそうです。

 

 

 

 

また、男性も同じ観点から注意が必要。アビガンは精液中へも移行するためです。メーカー側は、男性も服用期間中とその後1週間、「性交渉を行う場合は極めて有効な避妊法の実施を徹底(男性は必ずコンドームを着用)するよう」にとしています。また、この期間中は妊婦との性交渉を行わないように、とのことです。

 

 

国内初承認の新型コロナ治療薬「レムデシビル」は、点滴投与で重症者向け。

 

 

まだ臨床研究中のアビガンに対し、5月4日に新型コロナウイルス感染症治療薬として国内で初めて承認されたのが、「レムデシビル」です。

 

 

もともとはエボラ出血熱の治療薬として開発が進められたものでした。錠剤ではなく点滴投与で、現時点では人工呼吸器を使用するような重症患者の方の使用が想定されています。

 

 

 

 

「通常は、薬が出来た後に何段階もの臨床試験をクリアし、ようやく製薬企業が承認申請を行ってから国による承認まで、さらに1年くらいかかります。ですが、レムデシビルは米国で緊急使用が認められたことを受けて、国内初の新型ウイルス治療薬として特例承認されました。

 

 

流行拡大の中で、1年も待っていられるわけにいかず、おそらく効果が期待できるだろう、との判断からです。ただしあくまで特例なので、後使用していく中で効果や副作用のデータを集めて、最終判断を行います」

 

 

ここで劇団ひとりさんから、「なぜ先発のアビガンはまだ臨床試験中なのに、レムデシビルは一気に承認なんですか?だったらアビガンももう承認しちゃえばいいのに」との鋭い質問が入りました。これに対し、

 

 

私もそう思います

 

 

と、久住医師。

 

 

 

 

「ただアビガンは、もともとインフルエンザ治療薬として承認されていたので、適応外使用ではありますが、新型コロナウイルス感染症にも使おうと思えば使えるため後回しになった可能性があります。レムデシビルは世界中で市販前の段階だったので、まず土俵に乗せようと急いだのではないでしょうか」

 

 

世界で重症者70万人に対し、備蓄はわずか14万人分。副作用も未知・・・。

 

 

レムデシビルは、米国の製薬企業(ギリアド・サイエンシズ社)が開発、生産しています。その日本法人は5月8日、当面は日本での処方分を無償提供する方針を明らかにしました(毎日新聞)。

 

 

ただし、問題は備蓄量が絶対的に少ないこと。

 

 

「承認されると、新型コロナウイルス感染症患者を受け入れている病院なら、基本的にはどこでも使えるようになることが期待されます。しかし、レムデシビルは米国の本社にも現在14万人分くらいしか備蓄がありません。となると、新型コロナウイルス感染症患者さんの数で割り当てを考えるなら、日本への配分はだいぶ少ないと見られます」(久住医師)

 

 

 

 

中居くんも「米国は米国で大変ですから、米国だって手放したくないですよね。まず自国から、とならないんですかね?」と指摘。

 

 

「そうですね。これが医薬品、人の命に関わる薬の難しいところです。やはり本来は、国の経済力や政治力に関わらず、世界中の方々に均等に供給されるようにすべきなんですね。ですから今後どんどん生産されていって世界中に行きわたるのが望ましいと思っています」(久住医師)

 

 

番組によると、ギリアド・サイエンシズ社は今年10月までに50万人分を製造の見込みで、重症患者を対象としていると公表(米国でも重症例に限っての承認)。しかし、現時点で世界には既に70万人超の重症患者がいるとされます。

 

日本への供給量は明らかになっていません。おそらく日本では今後、レムデシビルについては政府が管理して配置していくことになりそうです。

 

 

 

 

なお、レムデシビルの副作用としては、肝機能障害、腎機能障害、吐き気や下痢などの消化器症状、皮膚症状など、重い物から軽いものまで様々な可能性があります。国内での使用例もないため、副作用のリスクも念頭に置きながら慎重に使っていく必要があります。

 

 

新型コロナウイルス感染症は、そもそも8割の方が自然に治癒する病気です。また、特例承認の治療薬では、今後どのような副作用が明らかになるかは分かりません。そのため、有効性とリスクを天秤にかけ、投与の必要性を見極めることが大事、ということです。

 

(後編につづく)

 

 

久住英二(くすみ・えいじ)

医療法人鉄医会(ナビタスクリニック立川・川崎・新宿)理事長。内科医、血液内科医、旅行医学、予防接種。新潟大学医学部卒業。虎の門病院血液科、東京大学医科学研究所探索医療ヒューマンネットワークシステム部門研究員を経て2008年、JR東日本立川駅にナビタスクリニック立川を開業。好評を博し、川崎駅、新宿駅にも展開。医療の問題点を最前線で感じ、情報発信している。医療ガバナンス学会理事、医療法人社団鉄医会理事長内科医、血液専門医、Certificate in Travel Health、International Society of Travel Medicine。

 

 

(画像:テレビ朝日「中居正広のニュースな会」2020年5月9日)

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