新型コロナウイルス感染症流行の中、GWの過ごし方や検査体制についてナビタスクリニック理事長の久住英二医師が解説!(2020/05/02)
【まとめ】
☆新型コロナウイルス感染症にまつわる街の人々や中居君、スタジオメンバーからの疑問に、久住医師が答えます。
☆GW中の自粛で感染者は減るの? 抗体検査で何が分かる?
☆3密から「ゼロ密」へ? GW中の海やキャンプもNG? 太陽に当たるといいって本当?
ゴールデンウィーク(GW)を前に、全国的に1カ月程度延長となった新型コロナウイルスに対する緊急事態宣言(4日に最終判断の方針)。GWをどう過ごせば感染封じ込めにつながるのでしょうか?
ナビタスクリニック理事長の久住英二医師がテレビ朝日「中居正広のニュースな会」に出演し、GW中の過ごし方と、これまでに変わってきた新型コロナウイルスに関する認識について解説。街の人々や中居君、スタジオおよびリモート出演メンバーからの質問に答えました。今回と次回の2回に分けて内容をまとめます。
久住医師がギモンにお答え。GWの外出自粛で新たな感染は減っていくの? 抗体検査では何が分かる?
まずは、GW中の過ごし方について。「外出自粛すれば新規感染者は減っていくの?」という質問が取り上げられました。これについて久住医師は、
「確実に減っていきます。ただ、それが数値としてどの程度現れてくるかは、ちょっと難しいところです」
と回答。たしかに、緊急事態宣言が出された4月上旬から2週間(~20日頃)までと比べれば、それ以降は東京都で確認された新規感染者数はなだらかに減ってきているようですが・・・。
「新型コロナウイルスは潜伏期間が2週間ですから、宣言の効果があるとすれば、そこから2週間後以降です。その点では、効果があるようには見えます。ただ、PCR検査が今、十分に行われ、感染者をきちんと拾い上げられているのか・・・懸念はあります。確認され公式発表さている感染者数というのが、実態全体を十分に反映しきれていないならば、もっと対策を強める必要も出てきます。その点、この発表数だけでは判断できない部分があります」
ここで、リモート出演の柳澤秀夫氏(元NHK解説委員)が、抗体検査について言及。「全体状況の把握に役立つんでしょうか?」と質問。
「はい。私はそう思っています。抗体検査(IgG)では、過去に新型コロナウイルスに感染したかどうかが分かります。厚労省も日本赤十字社に依頼して、献血の血液で抗体検査を始めていますし、街のクリニックでも費用自己負担で実施しているところも出てきています。私のクリニックでも、3月21~28日に202人の方が抗体検査を受けられて、5.9%にあたる12人が陽性でした」
当院では今回、自ら抗体検査を希望して受診された一般の方々や医療従事者に実施しましたので、東京都全体の人々を代表したサンプルというわけではありません。
「完全なサンプルというのは、どうやってもなかなか難しいですね。ですから、例えば日本赤十字社のデータ、当院のデータ、他のところが出しているデータなど、多くのデータを集めてみる。それでもし大体同じ数字であれば、全体としてもそれくらいの陽性率だろう、と推察できます」
実際、慶應義塾大学病院が新型コロナウイルス感染症以外の理由で受診した人々に実施した抗体検査でも、6%程度の陽性率でした。おそらく東京にはそれくらい、普通に生活している人にも感染者がいると見られます。
「ですから、『自分は何の症状もなくて元気だから、ちょっとくらいGWは出かけてもいいだろう』というのではなく、『もしかしたら感染しているかもしれない』と考えて行動自粛していただくことが大事です」
「3密」を避けても海やキャンプはNG? 1日30分太陽光にあたるといい?
そもそも「3密」とは、「密集、密接、密閉」の意味。「キャンプや海などのアウトドアは、これに該当しないから大丈夫では?」との認識の人もいるようですが・・・。
「海やキャンプも避けるべきです。日常過ごしている都市部を離れて大自然の中で遊んだりすると、普段では考えられないような想定外のケガをすることがあります。その場合、その郊外や地方の病院を受診することになりますが、もし自分が知らないうちに感染していればそこで院内感染を広げてしまうことになりかねません」
「もし救急車を呼ぶようなことになっても、今は医療機関も人員などが逼迫しているところが多く、すぐに受け入れ先が見つからない可能性があります」
と、久住医師。行った先の地域のためにも、そして自分たちの“もしも”のためにも、アウトドアレジャーは自粛が必要と言えそうです。
「実は厚生労働省では、『ゼロ密』を提唱し始めています。そもそも3密を避けるのは、人が集まることで飛沫感染が起きるのを避けるためです。ただ、物を介してウイルスが伝播する接触感染を避けるには、程度や人数によらず人に近づかないように、ということです」
一方、ウイルスは紫外線に弱いことから、外に出て太陽に当たることを心がけている人もいるようです。これについて久住医師は、
「適度に日光を浴びるのは体にいいですが、体内のウイルスまで殺すわけではありません」
とクギを刺します。
「米国の研究では、気温22℃・湿度80%に条件をそろえた上で、紫外線量を変えた検証実験が行われました。すると太陽光が当たらない暗い場所では、ウイルスが半分に減るのに6時間かかったのに対し、太陽光が当たっていると2分程度で半減しました」
「ただこれはあくまで、物や体の表面についたウイルスへの効果です。ですから夏になって紫外線が強くなったからと言って、それで新型コロナが終息するとは考えられません」
ですからこのGWは、できるだけ自宅で過ごす「STAY HOME」が大事。
「もちろん、家の中だけでは足腰が弱ってしまいますから、人と会わないよう気を付けながら家の周辺で、散歩などの軽い運動を取り入れてみて下さい」
GW中はPCR検査が受けづらいの?「地域外来・検査センター」って何?
さて、もし新型コロナウイルス感染症にかかったかも、と思った時、GW中のPCR検査体制はどうなっているのでしょうか? お休みの医療機関が多いので、PCR検査も受けづらいように見えますが・・・。これについては、
「休みでも多くの人が検査を受けられるように、仕組みが変わってきた」
と、久住医師は解説します。
「これまでは、保健所に自ら電話して、必要だと認められたら保健所で検査を受けていました。ところが、もう保健所も手が回りきらないほどに感染者やその疑いのある人が増えてきています。そこで地域の医師会が協力して、別の検査ルートを作りました。
新しい流れは、まずかかりつけ医もしくは近くの診療所に、電話やオンライン受診で相談します。そこで医師が感染の疑いがあり検査が必要と判断した場合には、その地域の医師会が運営している『地域外来・検査センター』へと紹介されます。そこで検体を採取され、民間の検査機関でPCR検査が行われます」
「地域外来・検査センターにもよりますが、GW中もずっと開設しているところや、日を決めて開くところがあります。これは自治体によるので、各自問い合わせていただくしかありません。また、保健所や帰国者・接触者外来でもGWもやっているところもありますので、休みだから全く検査できないというわけではありません。安心してください」
自分の住んでいる町には、地域外来・検査センターはないけれど・・・と思われるかもしれませんが、
「地域外来・検査センターの設置は、人口密度に応じて検討されるべきものですので、自分の市町村にないからと心配なさらなくて大丈夫です。近隣の自治体が広域連携していくことで、地域格差は解消できると期待されます」
と、久住医師は説明します。
「例えば東京都23区でもあちこち出来始めていて、病院の駐車場にテントを設営しているところもあります。地方では自家用車がメインの交通手段というところが多いので、ドライブスルー方式を採用しているところが多いです。検査の部屋を汚染せずに済み、院内感染防止になりますし、担当者は手袋の交換だけで済み防護服も不要です。ただし誰でも勝手に乗り付けて検査を受けられる、という体制ではなく、医師が必要と診断した場合に紹介を受けて行っていただくことになります」
ここで劇団ひとりさんから「PCR検査は、以前は条件などがあってなかなか受けられなかったけれども、最近はハードルは下がっているんですか?」との質問。
「最近では4日待ってからではなく、具合が悪かったらすぐにでも検査をしていいと、考え方が変わってきています。ですから『熱が出て4日経たないとだめなんだよな』といった思い込みはすっぱり捨ててください。例えば熱がなくても強いだるさや息苦しさがあるなど、具合が悪かったらすぐにかかりつけの医療機関などにご相談いただき、検査の必要性を判断してもらうとよいと思います」(久住医師)
不安があったら、一人で我慢せず、まずは電話やオンラインで医師に相談してみることをお勧めします。
※後編「急変して重症化の予兆は?心血管疾患も?久住医師が解説!」は、こちら。
久住英二(くすみ・えいじ)
(画像:テレビ朝日「中居正広のニュースな会」2020年5月1日)