-フジテレビ「直撃LIVEグッディ!」他💉久住医師が抗体検査を生解説-

2020.05.01

東京新聞一面トップで報じられたナビタスクリニックでの抗体検査。理事長・久住英二医師による解説をまとめます。(2020/04/30)

 

 

【まとめ】

 

☆東京新聞一面トップで公表――ナビタスクリニックでの新型コロナウイルス抗体検査(IgG)は、5.9%陽性との結果に。

 

☆結果について、久住医師がフジテレビ「直撃LIVEグッディ!」「Live News α」等にリモート生出演。安藤キャスターの質問に添って解説しました!

 

☆抗体検査結果の意味するところは? 抗体があれば、もうかからない? 抗体はどれくらいもつ? 無症状でも抗体はできる?・・・etc.

 

 

  

ナビタスクリニックでの抗体検査が東京新聞一面トップに――「抗体検査5.9%陽性」

 

 

ナビタスクリニック(新宿・立川)で希望される方に実施している、新型コロナウイルス感染症の抗体検査※。3月21日~28日の1週間で検査を受けた202人(男性123人、女性79人)のうち、5.9%にあたる12人(男女各6人)が陽性でした。この結果は、4月30日付東京新聞朝刊の一面トップで報じられました。

 

 

東京新聞2020年4月30日

↑全文は同紙web版から。画像をクリックするとリンク先に移動します。

 

 

抗体検査とは、感染後に体の免疫反応として作られる抗体の有無を調べるものです。感染歴を示す抗体として、IgGとIgMという2種類の抗体が知られていますが、ナビタスクリニックで行っている検査は、IgGを対象としたものです。

 

 

IgG抗体は、新型コロナウイルスに感染した後、体の中で徐々に作られ始めます。国立感染症研究所がPCR検査陽性の新型コロナ患者さんの血液を用いてIgG抗体の検出率を調べたところ、発症7~8日後は25%、発症9~12日後は約52%、発症13日後以降は約97%でした。

 

 

(トップ画像:「直撃LIVEグッデイ!」2020年4月30日)

 

 

また、世界的科学雑誌『nature』では、新型コロナウイルスの感染者全員が、発症から19日以内にIgG陽性となったとの研究結果が報告されています。

 

 

『nature』横軸は発症からの日数、縦軸は陽性率

 

 

以上から、IgG抗体が陽性の場合、概ね2週間程度前までに新型コロナウイルスに感染していたと考えられます。これは、症状の有無は問いません。実際、ナビタスクリニックで検査を受けられて陽性だった方でも、感染や症状に心当たりが全くない方は複数いらっしゃいました。

 

 

久住医師は東京新聞の取材に対し、

 

 

現行のPCR検査で判明する感染者よりはるかに多く感染している可能性が高く、確実にまん延していると言える

 

 

原因不明の死者が増えていることからも、PCR検査を拡大して速やかに診断し、早期に治療を開始すべき

 

 

とコメントしています。

 

 

※ナビタスクリニックでは、希望される方にはどなたでも抗体検査(IgG)を行っています。くわしくはこちら

 

 

 

 

フジテレビ「直撃LIVEグッディ!」他に久住医師がリモート生出演。抗体検査から何が言える? 

 

 

久住医師は同日、フジテレビ「直撃LIVEグッディ!」「Live News it!」「Live News α」にも診察室からリモート生出演し。抗体検査について、スタジオからの質問に沿って解説しました。

 

 

(トップ画像:「直撃LIVEグッデイ!」2020年4月30日)

 

 

陽性率(IgG抗体を持つ人の割合)が5.9%だったことについては、

 

 

「これはおおよそ6%とすると、東京で言えば今までに約78万人が新型コロナウイルスに感染したことがある、と示唆されます」

 

 

「これまで死亡率は、死亡者数を分子とした時に、PCR検査で分かっている患者数を分母として計算してきました。その結果、日本での新型コロナによる死亡率は数%(現時点で3%前後)に上り、季節性インフルエンザの致死率0.1%と比べても非常に高い数字となっています。

 

 

その分母を感染者全体、試しに78万人に置き換えると、死亡率は0.15%程度という計算になります。新型コロナウイルス感染症の死亡率は極端に高いわけではない、ということになれば、大きな安心材料になると思います」

 

 

と解説。「直撃LIVEグッディ!」安藤優子キャスターからは、インフルエンザはワクチンなどが普及しているとの指摘もありましたが、久住医師は、国内の接種者数は3000万人程度にとどまり、有効率も年代によって違うとし、必ずしもワクチンによって国民全員がリスク回避できているわけではないことを説明しました。

 

 

「もちろん、今回の結果はあくまで我々が調査した集団における抗体保有率です。ただ、東京都1300万人を代表する集団というのは、どうやっても作れないんです。例えば、国が予定している献血の血液を使った抗体検査にしても、献血に来られる方々が東京都民を代表する集団というわけでもありません。

 

 

他にも、持病で病院を受診される高齢者の抗体保有率なども調べてみるといいですし、いろいろな所がそれぞれ抗体検査をして、もっとデータを集めて全容を明らかにしていく必要がある。その結果が大体同じくらいならば、全体としてもそれくらい陽性の方がいる、と考えることができます」

 

 

(トップ画像:「直撃LIVEグッデイ!」2020年4月30日)

 

 

IgG抗体、出来ていればもうかからない? 出来た免疫はどれくらいの期間続くの?

 

 

さて、気になるのは、「抗体が出来ていれば再感染の心配はない」と言えるのかどうか。 WHOや米国疾病対策センター(CDC)は慎重な姿勢を見せています。

 

 

「実は、抗体にも色々あって、病原体をやっつける働きのない抗体と、やっつけられる抗体とがあるんです。後者を『中和抗体』と呼び、今回の新型コロナウイルス感染症で出来てくるのは、おそらく中和抗体だと考えられています。回復された方の血液成分である血漿を、治療中の方に輸血してあげると、回復が促進される現象が分かっています」

 

 

であれば、通常は抗体陽性ならば、再感染しないと見てよさそうですが・・・

 

 

 

「それでも今のところまだ、抗体があれば確実にもう大丈夫という証拠は得られていません。米国では一度感染した医療従事者が、再感染しないかどうか、今フォローアップして免疫の確かさを確認しているところです。ですが、色々なデータから考えると、2度目は、かからないとは言えませんが、かかりにくくなると見られています」

 

 

なお、再感染あるいは再燃については、そのメカズム自体がまだ分かっていないと言います。

 

 

「一度ウイルスが検出されなくなった方(PCR陰性)が、体から本当にウイルスがいなくなっていて、またよそからウイルスが入ってきて陽性となったのか、検出できなくなったレベルではあってもずっと体の中にいて、それが再増殖して陽性と出たのか。

 

 

ウイルスの遺伝子配列を調べれば、最初に感染した時と、2度目の発症時のウイルスが同じものかどうかは分かるので、そういった解析は今後出てくると思います」

 

 

 

 

では、一度獲得したIgG抗体による免疫は、どのくらい続くのでしょうか?

 

 

大体3~4年は抗体がもつのではと示唆されています。今回調べたのは新型コロナウイルスに関するIgG抗体ですが、はしかや風疹などで抗体のある・なしを検査する場合にも、それぞれについてのIgG抗体を調べます。過去にSARSやMERSなど他のコロナウイルスが流行した経験から、新型コロナウイルスでもIgG抗体は、数年は持つだろう、との考え方です」

 

 

無症状でも抗体は出来る? 症状があっても出来ない人もいる? そもそも症状の強さの差はどこから?

 

 

「直撃LIVEグッデイ!」ではさらに、安藤キャスターから「無症状でも抗体は出来るんですか?」という素朴な疑問が。無症状感染者が多い新型コロナウイルス感染症では、たしかに気になるところです。

 

 

無症状でも、基本的には抗体は出来ると思います。一方で、中国での研究結果で、感染して症状が出た方のうち、3分の1くらいは抗体の出来が悪く、たしか10人に1人くらいは抗体がほとんど出来ない、というケースが報告されています」

 

 

と、久住医師。どうしてそんなことが起きるのでしょうか?

 

 

「実はウイルスをやっつける上で働く免疫システムには、大きく分けて3つあります。敵が誰であろうととりあえずやっつける『自然免疫』と、相手に応じて巧妙にやっつける『獲得免疫』のうち抗体が主に作用する『液性免疫』と、リンパ球という免疫細胞がやっつける『細胞性免疫』があります。これら色々なメカニズムが共同してウイルスをやっつけていると考えられます。

 

 

(Shutterstock/ ustas7777777)

 

 

抗体の有無は、このうち液性免疫の作用を調べているのであって、細胞性免疫が働いていれば、ウイルスはやっつけられるので抗体が確認できないと見られます」

 

 

ちなみに、新型コロナウイルス感染症にかかったけれども症状があまり出ない人と、強く出てしまう人がいます。その差は何なのでしょうか?

 

 

「それに関しては、発熱などの根本となっている炎症の起こりやすさに、遺伝子の多型、つまり個人個人の遺伝子の細かな違いが、影響していると言われています。海外では、感染者の全ゲノム解析によって、遺伝子の違いと症状の強さの関係を調べる研究が進められています」

 

 

集団免疫獲得には2年かかる?! 社会を活かす現実的な道とは? 命を救うための検査・医療体制とは?

 

 

最後に、今後の見通しについて、

 

 

「ある程度この新型コロナウイルス対するIgG抗体を持った人が増えれば、この流行は収束に向かうだろうと、私は見ています」

 

 

と、久住医師。とはいえ、抗体保有率が今回の調査のように6%前後、あるいはそれと大差ない数字であれば、「登山に例えれば、まだ1合目」だと言います。

 

 

「感染を減らすためには、人と人とが会うのを減らすのは仕方ないと思います。ただ一方で、集団免疫、つまり『通常の生活を送っていてもその集団の中ではウイルスが広がらない』という状態に至るには、60~70%の方が免疫を持たなければならないと計算されています。

 

 

(トップ画像:「直撃LIVEグッデイ!」2020年4月30日)

 

 

ですから、今まで2カ月半くらい皆さん我慢して過ごされてきましたが、集団免疫の獲得までには、これをあと9回くらい繰り返さなければならない、ということなんです。

 

 

その間、およそ2年くらい、今の制限状態を一律に続けるのは難しいですよね。ですから、重症化リスクの高い方は行動を制限するけれども、そうでない方はある程度社会生活を送って経済を回していただくとか、リスクに応じて変えていく。それが現実的ではと考えています」

 

 

もちろん、医療体制の維持と、検査体制の拡充、そして適切な医療を行うための行政対応が、引き続き求められるとのこと。

 

 

「医療の現場では、今も患者さんが増え、重症者が増えているのも事実です。ですから医療の限界を超えない範囲にコントロールしていくことは、今後も続けなければなりません」

 

 

「また、今なおPCR検査は、熱が出てからだいぶ症状が強くなって4~5日経たないと受けられないのが実情です。結果が返ってくるのが発病から1週間後くらいで、その頃にはもう熱が下がって峠を越えていた、という人が結構いらっしゃいます。そうした中で、一部の人はすごく重症化して人工呼吸器が必要になり、場合によって亡くなる方もいらっしゃる。

 

 

(トップ画像:「直撃LIVEグッデイ!」2020年4月30日)

 

 

大事なのは、ウイルスをいかに体の中で増やさないようにするかそのためには早く診断を付けて早く抗ウイルス薬(ウイルスの増殖を抑える薬)で治療することが必要です。

 

 

今、アビガンやレムデシビルなど、色々な薬の効果が検証されています。それらの臨床試験の結果がどんどん出てきますが、有効性が明らかになったら、速やかに承認していただく。あるいは速やかに適応外使用の使用をバックアップしていただく。そうした行政的手続きを迅速化して、救える人を救うべきだと思います」

 

 

久住英二(くすみ・えいじ)

医療法人鉄医会(ナビタスクリニック立川・川崎・新宿)理事長。内科医、血液内科医、旅行医学、予防接種。新潟大学医学部卒業。虎の門病院血液科、東京大学医科学研究所探索医療ヒューマンネットワークシステム部門研究員を経て2008年、JR東日本立川駅にナビタスクリニック立川を開業。好評を博し、川崎駅、新宿駅にも展開。医療の問題点を最前線で感じ、情報発信している。医療ガバナンス学会理事、医療法人社団鉄医会理事長内科医、血液専門医、Certificate in Travel Health、International Society of Travel Medicine。

 

 

(トップ画像:「直撃LIVEグッデイ!」2020年4月30日)

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