ナビタスクリニック新宿の濱木珠恵院長がTBS「ひるおび!」に生出演。陽性率の高さと検査体制、緊急事態宣言解除、院内感染対策等について解説しました。(2020/04/27)
【まとめ】
☆世界で死者20万人!ただ、注目すべきは死者数よりも「陽性率」。東京や大阪の異常に高い陽性率は、どう解釈すべき?
☆週明けの東京は感染確認数が13日ぶりに2桁台に。しかしその理由は・・・。GW明けの緊急事態宣言解除はアリなの?
☆全国19都道府県で800人に迫る院内感染。感染経路不明は市中感染の広がりを意味しています。対策は?
全世界で感染者数が20万人を超えた新型コロナウイルス感染症。東京は週明けにやや患者確認数が減少しましたが、これは週末の検査数が少なかったことによるもの。依然としてPCR検査の陽性患者数は、患者数の全体像をカバーできていないようです。
ナビタスクリニック新宿院長の濱木珠恵医師が、TBS「ひるおび!」に生出演。注目すべき「陽性率」や、ゴールデンウイーク明けの緊急事態宣言解除の是非、院内感染の広がりと検査体制について見解を述べました。
世界で死者20万人!ただ、注目すべきは死者数よりも「陽性率」のもつ意味。
番組では、今年1月9日に中国・武漢市で新型コロナウイルス感染症による最初の死者が出てから、世界での死者数が10万人に達するのに92日間かかった(4月10日)のに対し、更なる死者10万人増加にはわずか15日間しかかからなかった事実を指摘。この2週間で急激に増えたことになります。
これについて濱木医師は、
「患者数全体が増えていることが反映されていると思います。病気そのものによる死者数ももちろんですが、患者数が増えたことで医療が追い付かなくなっている部分があると考えられます。また、感染が広がれば、高齢者や持病をお持ちのハイリスクの方々にも感染者が増えます。そうした方々はやはり亡くなりやすいので、そうした状況を映し出していると思います」
と指摘しました。
ここでMCの恵俊彰氏が、京都大学iPS細胞研究所所長の山中伸弥教授が新型コロナウイルス感染症について発信する中で、「陽性率」の重要性を強調していることを紹介。
陽性率とは、検査件数に対する陽性者の割合(陽性者÷PCR検査件数)のことで、陽性率が諸外国と比べて不自然に高ければ、計算式の分母であるPCR検査数が不十分であることを示唆します。
ここ最近の東京の陽性率は約40%、大阪も約20%と異常な数値です。一方、1週間に数十万人単位で検査を実施し十分と考えられるドイツでは陽性率7%、そうした検査体制をいち早く敷いて患者数減少に転じた韓国も陽性率は3%です。
山中教授は、「これは危険境域です。非常に多くの陽性者を見逃している可能性が高いと推定されます」と強い懸念を表明(ホームページ)。検査数を3倍に増やす必要性があり、それが、自粛要請を解いて社会活動を再開させるための最低条件だと主張しています。
濱木医師も、
「医師などが患者さんを診て少しでも新型コロナを疑い、検査すべきだと判断したのが例えば100人だとして、そのうち陽性が3人だったのであれば、実際に人口全体の感染割合も3%、それほど感染者は多くないんだと思います。
ただ日本の場合だと、以前に比べて陽性率が高いのは、もしかしてと本人や医師が疑った見立てがマッチしてきている、というのもあるでしょうし、あとは実際の患者数が増えている可能性がある。日本は、他の国と比べて検査実数がどうかというと、だいぶ分母が小さく、相当絞り込んでいると考えられます。ですから、世界で算出される陽性率と日本での陽性率を単純に比較することはできないですね」
と、日本の数字について解説しました。
東京都の新たな感染確認数は、72人(4/26)。13日ぶりに100人を下回ったけれど・・・。
なお、東京都は4月26日、都内で新たに72人の新型コロナウイルス感染を確認したと発表しました。都内で感染確認人数が1日あたり100人を切ったのは、4月13日以来、13日ぶり、と報じられました。
しかし、小池百合子・東京都知事も「これは曜日の関係(週末)で、検体の持ち込み数が減っている」ためだとして、都民に気を抜かないようメッセージを発信しています。
濱木医師も、
「大きな流れの中での一瞬のこと。全体の流れを見ていく必要があります。先週・先々週とおおよそ横ばいです。若干下がっていたとしても、大体2週間前と同じなので、すぐに順調に下がることまで期待できないと思っています。検査数も東京都は十分ではないので、これから検査体制を変えていって検査数を増やしますから、それで見つかる患者さんがどの程度いるか、隠れていた患者さんがどの程度減らせるか。ですから、まだしばらくかかると思います」
と、決して楽観できない状況だと釘を刺しました。また、今週来週については、
「ゴールデンウィークは検査数の減少が見込まれます。カレンダー通りお休みの医療機関が多く、そこに間借りをしている検査センターも閉まってしまいます。今週はまだ祝日になる水曜日以外は検査をするはずですが、週末から来週前半(5月1~6日)は検査があまりできない可能性があります。ですから今週から、特に来週前半の数字、発表で言うと来週木・金曜日あたりまでの数字は、あてにできないと思います。逆に週末近くにゴールデンウィーク中に検査できなかった方の数字がワッと出てくる可能性もありますが」
と指摘しました。この時期の数字をもって自粛要請を解除するのかどうか判断するのは、果たして適切なのでしょうか?
ゴールデンウィーク中の自粛の効果が表れるのは、さらに2週間後です。片山善博・前鳥取県知事からは、少なくともそこまでは緊急事態宣言がカバーされるようにしておくべきだった、という意見も出されました。
「私も最初から、解除までは6週間くらいかかるだろうとは見ていました。ゴールデンウィークが空けて1~2週間たたないと、減ったかどうかは確認できません。もちろん自粛だけ続けているのでは世の中が回らない、という考え方もあると思います。ただ、緊急事態宣言を解除するにしても、いきなりまた元通りというわけにはいかないと思います。
今入院されている方がベッドを埋めていて、その数が減らないと次の準備態勢がとれません。解除するとしても、全面的にでなく、部分的・段階的に様子を見ながらやっていかないと、また同じように危機的状況に陥ることになります。医療側の受け入れ態勢ができるか、物品調達を含めて、そのめどが立つかを見ながら解除していただきたいと思います」(濱木医師)
深刻な院内感染――19都道府県783人で医療崩壊への危機感と市中感染の広がり。
全国的な患者数の増加に拍車をかけているのが、院内感染です。これまで全国19都道府県で、783人が院内感染と報告されています。職員からなのか、患者さんからなのか、感染経路が特定できないケースが多く、それだけ市中感染が蔓延していると見られます。
医療機関側も、ただ手をこまねいて見ているわけではありません。入館する人すべてに検温・消毒を徹底し、入院前の患者に独自のPCR検査を実施している病院もあります。発熱など新型コロナの症状はなく骨折などまったく異なる理由での救急搬送患者であっても、CTスキャンで肺炎の有無だけは確認するなどの対策もとられ始めています。それでも院内感染者が出てしまう、という状況なのです。
「新型コロナじゃない病気で来た方に対しても、新型コロナの可能性を警戒し受け入れている、という話はよく聞きます。早めに全体の患者数を把握して、どれくらいの対策をとって、どれくらい隔離をできるのか。そうした対策を講じないと、今まで皆さんが普通に受けられていた医療を、医療側としても普通に提供できなくなってしまう、というところまできています」(濱木医師)
実際、慶應大学病院で新型コロナウイルス感染症以外の患者さん67人にPCR検査を実施したところ、6%に当たる4人が陽性でした。全員無症状だったとのこと。市中感染の程度を反映していると見られています。
市中感染の広がりは、先の通り陽性率の高さを見ても推察されます。PCR検査体制の拡充は依然として急務です。厚労省は27日、PCR検査の実施数を増やすために、歯科医師もPCR検査を実施できる方針を認めました。これについては、
「たしかに人手不足の解消にはつながると思います。ただ、PCR検査の実施には、適切な場所や機器、マスクや防護服、綿棒といった道具も必要になります。そうしたモノの面でも対応が必要です」
と、濱木医師。
「米国では、検体を鼻の奥から採るのではなく、唾液を使って調べられるPCR検査なども、当局(FDA)の承認を得たと聞いています。今、そうして色々な検査が開発され出てきているところです。もちろんその精度・感度はこれからの検証になるとは思いますが、そうした新しい情報や検査機器、ツールをいかに採り入れながら次の作戦に切り替えていくかが大事だと思います」
ナビタスクリニック新宿院長
濱木珠恵