2011年に始まった「いのちの授業」。中学生に、命の大切さや生きる意味について考えてもらうきっかけになればと、初回から8年にわたり講師を務めてきました。
【まとめ】
☆中学生の多感な時期に、命の大切さや生きる意味を考えてほしい。
☆参加型の授業で、自分で考えるきっかけにしてもらいたい。
☆医療はコミュニケーションが大事。医師とも、そして家族とも。
患者と医師のタッグで伝える、がん、いのち、生きる。
いのちの授業は、「いのち」の大切さや自分の生き方を考えてもらうきっかけづくりとして、心と体が大きく成長し変化を迎える中学生を対象に、私と患者の2名をメイン講師として2011年度から行われている授業です(くわしくはこちら)。「ロハス・メディカル」誌が主催し、大塚製薬株式会社の協賛で行われています。
「ロハス・メディカル」は、患者と医療者の自律をサポートする院内情報誌。2005年9月の創刊以来の医療従事者や患者さんとのネットワークを活かし、教育の場に貢献できないか、と始まった取り組みの一つが「いのちの授業」(2014年度より「いのちの授業〜がんを通して」にタイトル変更)でした。
当初の講師は、医療者側からは私、患者側からは吉野ゆりえさん(「サルコーマセンターを設立する会」代表)でした。吉野さんは、元ミス日本で元全日本ダンス選手権ファイナリストでしたが、2005年に希少がんである「後腹膜平滑筋肉腫」を発症。再発・転移のため10年で19度の手術と5度の放射線治療を経験されながらも、がんサバイバーとして、肉腫(サルコーマ)を「忘れられたがん」でなくすため広くご活躍されてきました。
大変残念ながら吉野さんは2016年7月に逝去され、現在は患者側講師2代目の阿南里恵さん(特定非営利活動法人 日本がん・生殖医療学会 理事・患者ネットワーク担当)と共に、「いのちの授業」を継続しています。
自ら考えてほしい。きっかけを促す参加型授業。
「いのちの授業」では、3つの目標を掲げています。
① 生徒たちが「いのち」と健康、医療に関する偏りない知識を身に着けられるよう、教育の場に素材提供する。
② 医療従事者と患者を講師とすることで生きた情報を提供し、生徒たちに本物の声を聴かせる。
③ 生徒たちに「いのち」について自ら考えるきっかけを提供し、「いのち」の尊さや生きることの意義を考えながら生活することを促す。
私たち講師は、ステージに上がらずフロアで話を進めます。生徒さんたちにはステージに向かって「コの字」型に座ってもらい、ステージ上のスクリーンに映し出されるスライドを参考にしながら意見や質問を出してもらう、という参加型授業をめざしています。
医療はコミュニケーションが大事です。
今月は、2か所で授業を開催しました。
6月9日の中野区立緑野中学校では、3年生の生徒さんのみを対象とした授業となりました。通常は全学年を対象としていますが、緑野中学校は来年に中野区の「がん教育」推進プログラムの割り当てがあり、それを逃してしまう現3年生のために今回の授業を希望されたようです。80名程度の生徒さんたちが参加されました。
6月16日には、東大和市立第一中学校で、通常通り全校生徒対象の「道徳授業地区公開講座」として授業を行いました。各学年4クラスずつ、プラス特別支援学級の生徒さんたちを加えた約450名が参加されました。
私からは、「がん検診は受けるべきだが、それでも全てのがんを早期発見できるわけではないこと」「がんを治すことだけが医療の目的ではないこと」「医療を受ける際には、医師任せにするのではなく、要望をしっかり伝えられるよう、コミュニケーションをとることが大事であること」など、中学生向けに、噛み砕いてお伝えできたかと思います。
中学生というと、ちょうど親御さんががん年齢に差し掛かる年代なので、ぜひ今日の話を家庭でも話し合ってみて下さい、とお願いしました。
阿南さんのお話については、このブログでも後日インタビューを企画しています。ぜひそちらをお読みいただければ幸いです。
◎いのちの授業~がんを通して ホームページはこちら
医療法人鉄医会ナビタスクリニック
理事長 久住英二