-東洋経済オンライン 久住医師寄稿 新型肺炎記事まとめ(2)-

2020.02.12

新型コロナウイルスの感染状況や国の対応に関する久住医師寄稿の記事まとめ、後編です。

 

 

【東洋経済オンライン掲載記事】

 

☆政府がコロナウイルス「検査キット」を急ぐワケ

――特効薬はないから、調べても意味がない?
2020年2月4日(記事はこちら

 

☆クルーズ船停留が及ぼす健康被害と「人権侵害」

――日本が無意味な「水際対策」を推し進めるワケ

2020年2月10日(記事はこちら

 

 

 

新型コロナウイルス感染症に関して、ナビタスクリニック理事長の久住英二医師がこれまでに「東洋経済オンライン」に寄稿した記事から、知っておくべき情報のまとめ、後半2回です。

 

 

政府がコロナウイルス「検査キット」を急ぐワケ――特効薬はないから、調べても意味がない?

 

 

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(東洋経済オンライン2020年2月4日 写真:共同通信)

 

 

●厚生労働省は2月1日、都道府県宛に「帰国者・接触者外来」を開設するよう指示。担当させられる医師の心中は「確定診断の方法もないのに、なにを診察しろと? 国内で感染者が増えているのに、帰国者と接触者だけ診察して、何の意味があるのだ?」が本音。安倍晋三首相は2月3日の衆院予算委員会で、国立感染症研究所や地方の衛生研究所でしか行われていない検査について、「民間の検査機関でもできる体制の構築に取り組んでいる。簡易検査キットの開発にもすでに着手した」と発言。

 

 

●新型コロナウイルスの検査は、”湖北省しばり”があるが、そうした患者さんにはあったことがない。一方、風邪や肺炎の症状の患者さんがインフルエンザ陰性だった場合、新型コロナウイルスに感染していても、市中の医療現場では知るすべはない。実際ほとんどの患者さんたちは、とりあえず風邪と診断されて帰宅するが、もし感染者であれば、感染を広げ続けることになる。

 

 

●現在、特効薬はないが、60歳以上の高齢者や、糖尿病など基礎疾患を有する人では、重症化するリスクは高くなる。少しでも不安があれば検査でき、当面は対症療法であれ治療できるようにしておくべき。

 

 

●世界各国で今、主に既存薬から、新型コロナウイルス感染症の治療効果を確かめる作業が急速に進んでいる。中国内では、抗HIV薬である「ロピナビル・リトナビル」(タイ保健省がタミフルとの併用で有効と発表)や、エボラ出血熱向けの治験薬「レムデシビル」を臨床試験中。

 

 

●特効薬ができたとしても市中の医療機関での検査が普及していなければ、投与できない(耐性ウイルスの出現阻止のため予防投与は控えるべき)。

 

 

●新型コロナウイルス感染症の致死率は、今までのところ世界全体で2%超程度。しかも、武漢では5.5%との公式発表もあり(当時)、武漢以外で見れば0%に近い。この数字は、今後も下がることはあっても、急激に上がることはないだろう。通常、ウイルスは人の体に適応(馴化。ウイルスはヒトの体内でできるだけ増殖したいので、宿主をすぐ殺してしまわず、仲良くやっていこうとする)し、症状が穏やかになっていくとされているためだ。

 

 

症状が軽いほど、感染者は平気で出歩き多くの人に感染が広がる。結果、致死率は下がり、感染力が上がっていく無症状の人も検出できるようになれば、感染力の数値はさらに上がるが、恐れることなく予防に努めることが大事だ。

 

クルーズ船停留が及ぼす健康被害と「人権侵害」――日本が無意味な「水際対策」を推し進めるワケ

 

 

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(東洋経済オンライン2020年2月1o日 写真:共同通信)

 

 

●乗客乗員3700人超が海の上で停留状態にあるダイヤモンド・プリンセス号。香港で下船した乗客が新型コロナウイルスに感染していたことがわかり、着岸が許されないまま2週間の“軟禁生活”を強いられている。

 

 

●連日狭い客室に閉じ込められ、栄養の偏りと運動不足、不安、ストレスが、乗客の体と心を蝕む。常用薬の不足も深刻。新型コロナウイルス以上に健康被害をもたらしかねない。鳥取県中部、新潟県中越沖、能登半島地震、東日本大震災、熊本地震などの避難生活では、静脈血栓塞栓症の頻発が報告され、鬱や睡眠障害を発症する人も多かった。

 

 

●海事代理士の関家一樹氏(『MRIC』載)によると、船舶検疫の長い歴史の中でも今回の「隔離と船舶検疫は、現状の国際標準から考えてかなり異常な行為」だという。関家氏は、「検疫を受ける旅行者の人権保護に重点を置くようにシフトしている」今日、今回の措置は、過剰な検疫に対する警告を定めた国際保険規則32条に「違反している」と断じている。

 

 

●そもそも空港での水際対策も、当初からほとんど意味はない。ヒト―ヒト感染12月中旬に起きていたと報告されており、1カ月以上を経て武漢や湖北省からの入国を止めても仕方がない。無症状感染や長期間の潜伏期間があるなら、空港での検疫方法(自己申告とサーモグラフィー検査)はザルそのもの。お役所のアリバイ作りでしかない。水際対策は潔く諦め、国内感染を前提とした検査・診療態勢の整備へと、速やかにシフトしていくべき。

 

 

●まずは市中の医療機関でも新型コロナウイルスの検査を可能に! もし海外で簡易検査が早々に実用化されたならば、国産にこだわらず導入すべき。臨床試験中の抗HIV薬やエボラウイルス感染症の治験薬の有効性が実証されたなら、適応外使用を国としてバックアップし、あるいは特例承認を検討すべき。

 

 

●感染拡大を最小限にとどめるには、軽症の感染者に自宅にとどまっていただくのが一番。特に、都心の朝夕の通勤・通学列車は感染源に。勤務形態を在宅でのテレワークに一斉に切り替え、学校は自宅学習とするしかない。実際、香港と上海は、「在宅勤務は『してもよいもの』から『しなければならないもの』に変貌」した(『Bloomberg』)。

 

 

●だが、感染症対策に在宅ワークを導入しても、軽症患者が医療機関に押しかけ、ほかの病気で受診している人に感染させ、自宅に持ち帰ってしまう状況では意味がない。オンライン診療をもっと活用すべき。簡易検査キットが開発されたら市販化すれば、オンライン診療で確定診断が出せる。医療機関も、ネット環境とカメラ付きパソコンモニターがあればすぐに始められる。

 

 

●厚労省が現在進めている「オンライン診療の適切な実施に関する指針」の改定作業は、患者の利用の制限を強める改悪になる見込み(例として緊急避妊薬と既得権の問題)。何をして何をすべきでないかは、患者や国民の目線になれば明らかだ。

 

 

久住英二(くすみ・えいじ)

医療法人鉄医会(ナビタスクリニック立川・川崎・新宿)理事長。内科医、血液内科医、旅行医学、予防接種。新潟大学医学部卒業。虎の門病院血液科、東京大学医科学研究所探索医療ヒューマンネットワークシステム部門研究員を経て2008年、JR東日本立川駅にナビタスクリニック立川を開業。好評を博し、川崎駅、新宿駅にも展開。医療の問題点を最前線で感じ、情報発信している。医療ガバナンス学会理事、医療法人社団鉄医会理事長内科医、血液専門医、Certificate in Travel Health、International Society of Travel Medicine。

 

(トップ画像:「東洋経済オンライン」)

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