刻一刻と変化する新型コロナウイルスの感染状況や国の対応。久住医師寄稿の記事を2回に分けてご紹介します。
【東洋経済オンライン掲載記事】
☆コロナウイルスの「国内感染」はもはや免れない
――SARSやMERSと比べて感染力は?致死率は?
2020年1月31日(記事はこちら)
☆コロナウイルスは正しく知れば「防御」できる
――飛沫感染と「接触感染」をどう避ければいいか
2020年2月1日(記事はこちら)
日々状況や情報が変わっていく新型コロナウイルス感染症。それでも変わらず知っておくべきこともあります。ナビタスクリニック理事長の久住英二医師が「東洋経済オンライン」に寄稿した記事をまとめます。
コロナウイルスの「国内感染」はもはや免れない――SARSやMERSと比べて感染力は?致死率は?
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(東洋経済オンライン2020年1月31日 写真:共同通信)
●中国・武漢市に端を発し、全世界で感染者・死亡者の報告数が急増している新型コロナウイルス感染症。潜伏期間中の感染者(キャリア)からの感染も。多くの感染者が日本に入り、確認されていない国内感染者がすでに大勢いると見るべき。
●昨年12月に武漢で初めて患者が報告され、1月中に中国内での感染が広まって以降も、日本は中国からの渡航者を制限なく受け入れてきた。日本経済や日中関係を考えればやむをえない。特に観光業・小売業は今日、中国観光客に大きく頼っている(2兆円市場)。
●コロナウイルス自体は決して珍しいウイルスではない。ヒト-ヒト感染を起こすのはこれまで6種類知られてきた。4種類は一般的な風邪の原因ウイルスの約10~15%を占め、あとの2つはいわゆるSARS(重症急性呼吸器症候群)とMERS(中東呼吸器症候群)。
●1人で数十人の他者に感染させてしまう感染者「スーパースプレッダー」は、SARS流行の際に初めて、発生から3カ月程度の時点で出現が確認された。ヒト-ヒト感染が進むうちに出現すると考えられ、その局面に入ると感染が一気に広がる。武漢ではスーパースプレッダーがすでに存在していることを示唆する報告も。
●感染力は、公式発表より実際には高い可能性がある、もしくは高まっていく。致死率に関しては、全体で約2%。SARSは9.6%、MERSは34.4%とされ、致死率を見る限り新型コロナウイルスの毒性の強さは、過度に心配する必要はない。
コロナウイルスは正しく知れば「防御」できる――飛沫感染と「接触感染」をどう避ければいいか
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(東洋経済オンライン2020年2月1日 写真:共同通信)
●コロナウイルスの感染経路は、基本的には、くしゃみや咳で飛んでいくしぶきによる「飛沫感染」と、飛沫や吐物、便由来のウイルスが付いた汚染物に触れた手で口や鼻を触って起きる「接触感染」。結核や麻疹のような空気感染は通常は考えにくい。SARS同様、目の結膜からの感染にも注意。
●SARSウイルスは、潜伏期間中には他者への感染力はなく、発症後10日目頃が最も感染力が強い、という特徴があったのに対し、今回の新型ウイルス感染症では、潜伏期間中にも他者へ感染させる可能性。不顕性感染(感染しても症状が出ない状態)も多く、初期症状も軽いとされる。
●コロナウイルスには、今のところ予防接種も特効薬もない。新型コロナウイルスの培養に成功したとの発表もあるが、ワクチン製造までには長い道のりがある。ただし、中国ではHIV(いわゆるエイズウイルス)治療に用いる薬などを使った臨床試験が、すでに開始されている。
●予防のためにもっとも肝心なのは、体力・免疫力の維持。粘膜に多少のウイルスが付着しても、そこで排除されるか、体内に侵入しても直ちに駆逐できれば、感染は成立しない。それには十分な睡眠と食事が必要。
●さらに徹底すべきは、石鹸による手洗い。コロナウイルスは脂を主成分とする膜(エンベロープ)に包まれているため、石鹸が膜を壊しウイルスを殺す。30秒間(=童謡の「うさぎとかめ」を2回繰り返す長さ)は手洗いを。洗った後は使い捨ての紙タオルで拭く。タオルの共用は感染源になりNG。下痢も特徴のため、多くの人が使うトイレの使用後などは入念に洗いを。
●石鹸と同じ仕組みで、70~80%アルコール除菌剤も有効。薄まると効果減のため、よく水けをふき取ってから使うこと。拭き掃除にも。煮沸・熱湯消毒や日光消毒も有効。
●うがいは、長時間の外出後では意味がない。ウイルスが粘膜に付着してから15~20分で体内に侵入し、感染を成立させるとも言われるため。外出中にこまめに水分を取って喉の粘膜を洗い流すほうが良い。喉の粘膜を潤すことは、粘膜のウイルス排除機能も高める(マスクは保湿効果は期待できる)。
久住英二(くすみ・えいじ)
(トップ画像:「東洋経済オンライン」)