-「無症状感染者2人」が意味すること。国内感染を前提とした対応策を。-

2020.02.02

武漢帰国者の受け入れ態勢の議論は無意味!? 日本国内でもすでに感染が広がっている可能性があります。

 

 

【まとめ】

 

☆新型肺炎問題について、久住医師がテレビ朝日「羽鳥慎一モーニングショー」「スーパーJチャンネル」などに生出演し、解説しました。

 

☆武漢帰国者から2名の無症状感染者を確認。すでに日本にも大勢の無症状感染者が入り、感染は起きていると見るべき。

 

☆その前提の上で、検査・診療体制を整備すること。国は水際対策よりも、国内感染者対応と情報公開を。

 

 

 

新型肺炎問題で、政府チャーター機による中国・武漢からの第一陣帰国者のうち、無症状でホテルに滞在していた2名から陽性反応が出ました。2人はそれぞれ別の相部屋に宿泊していたことから、厚労省の対応に対して非難の声も上がっています。

 

 

新型コロナウイルス感染症は今後どうなっていくのか、どう捉え、対処していくべきなのか。ナビタスクリニック理事長の久住医師が、テレビ朝日「羽鳥慎一モーニングショー」「スーパーJチャンネル」、TBS「ひるおび!」、インターネットTV(AbemaTV)「AbemaPrime」などに生出演し、解説を行いました。その他にも複数のTV番組、メディアでコメントしています。

 

 

(テレビ朝日「羽鳥慎一モーニングショー」2020年1月28日)

 

 

状況は刻一刻と変化していきますが、そうした中にあっても大事なことを、久住医師のコメントを中心に何回かに分けてまとめていきます。

 

 

「無症状の2人に陽性反応」。帰国者受け入れ態勢への批判も。

 

 

WHOが緊急事態宣言を出すわずか2日前、中国・武漢からの帰国第一陣206人が羽田空港に到着しました。その時点で発熱など風邪に近い症状があった5人が即入院して検査を受けましたが、翌日陰性と判明しました。

 

 

一方、帰国時点で症状がなかった201人のうち199人は国際医療研究センターで検査を受け、うち7人が入院、191人が自主判断で政府用意のホテルに滞在、1人が自宅待機となりました。残る2人は、検査を拒否して自宅に直行しました。

 

 

検査の結果、入院して症状のあった50代男性と、無症状でホテル滞在していた40代男性、50代女性の3人が新型コロナウイルス陽性確認されました。

 

 

(テレビ朝日「スーパーJチャンネル」2020年1月30日)

 

 

そして後日さらに、陰性とされていた1人がCT検査で肺炎とされ、再度のウイルス検査で陽性と判明。検体を採取した部位が、初回は上気道(気管より手前、口内粘膜等で調べる)、再検査では下気道(気管より先、痰で調べる)という違いがありました。

 

 

無症状の2人から陽性反応が出たことは、大きな衝撃でした。政府は200余人の帰国者に対し、140室しかホテルの部屋を用意していませんでした。隔離のためのホテル滞在であるはずが、相部屋で感染が広がりかねない、と受け入れ態勢に疑問の声が上がりました。

 

 

「厚労省も経験がない、前例の蓄積がない中で、よかれと思うことをやっているのだと思いますが、部屋が足らずに相部屋にしてしまうとか、当然やっておくべきことができていなかった。問題が起きてからやっているので、国民からすると対策が後手に回っていて、逆に不安感を惹起してしまいました」

 

 

武漢人口の1%が無症状感染? ならばすでに日本も感染拡大中。

 

 

結局、厚労省はその日のうちに相部屋を取りやめる方針を発表。一部の滞在者が、ホテルを移動することとなりました。

 

 

久住医師はそれでも、

 

 

いまの停留のやり方は、泥縄式でお粗末。『こんなんだったら家に帰る』『俺、検査も受けない』という人も出てくるでしょう」

 

 

と厳しい見方を示しました。これは、相部屋の一件だけを指しているのではありません。では、何が問題なのでしょうか?

 

 

(TBS「朝チャン!」2020年1月31日)

 

 

「今回の武漢からの帰国第1弾200余人のうち、『感染しているけれど無症状』という方が、約1%(2名)いらっしゃいました。その感染者2名が、この先も発症しないままかどうかは分かりません。ただ、もしそうだとすると、武漢市民の1%の人々も『感染しているけれど無症状』の可能性があります。

 

 

報告されている患者数は数千人ですが、武漢人口は1000万人超。その1%、つまり10万人超の人が、無症状のまま感染を広げているかもしれない、というわけです。そうした方々が、春節の前にも後にも、たくさんツアーで来られています。であれば、日本国内でそこからすでに感染が広がっていると考えるべきです」

 

 

「今回帰国されて検査で陽性反応が出た3名の方も、見つかったから特別扱いをされているけれども、見つからないままの無症状感染者が街中にたくさんいるのであれば、相部屋云々どころか、そもそもホテルに帰国者を隔離しておくことさえ意味はなくなってきます」

 

 

(テレビ朝日「グッド!モーニング」2020年1月29日)

 

 

つまり、帰国者をホテルに何日も、終日閉じ込めておくこと自体が、彼らの人権侵害の程度と、国内での感染拡大予防効果を比較した時に、どう考えても見合わないのです。今回、第1便のうち2名が帰国時に検査を拒否して帰宅しました(後に同乗者に無症状感染いたことが分かってから検査を希望)。これに対し非難の声もありましたが、実質的にはその2人だけで国全体の状況が変わるわけではないのです。

 

 

なお、武漢からの帰国者受け入れ方法については、実施前から不安の声が上がっていました。症状のない人は空港から直接帰宅し、潜伏期間とされる2週間だけ自宅待機という対応が、適切なのか・・・。

 

 

例えばフランスの場合、武漢からの帰国者は全員、専用の受け入れ施設に2週間滞在させられます。台湾では、感染者と接触があった人に国がスマートフォンを携帯させ、監視しています。また、オーストラリアでは、大陸から1500kmも離れた島に、帰国者を一時隔離すると言います。こうした諸外国と比較して、日本の対応は不十分ではないか、というわけです。

 

 

(テレビ朝日「羽鳥慎一モーニングショー」2020年1月28日)

 

 

しかしこれについても、議論の価値はないのは上記の通りです。

 

 

バス運転手は本当に2次感染者? ただ、その議論にも意味はない。

 

 

同じ理由でナンセンスなのが、国内ヒト-ヒト感染の患者3名について、2番目に確認されたツアーガイド女性が2次感染なのか3次感染なのか、という議論があったことです。

 

 

ツアーガイド女性の感染が分かった時、武漢からの観光客からツアーガイド女性に2次感染したのか、バスの運転手からツアーガイド女性に3次感染したのか、という話題があちこちで聞かれました。しかし久住医師は、

 

 

「2次感染か3次感染かを知ることで、どの程度感染が広がっているのかを推測しようということなのかもしれません。しかし、そもそもバスの運転手さんが誰からうつったのかが特定できていない状態で、2次か3次かを議論することに、あまり意味はありません。バス運転手に感染させた何者かが、すでに2次感染者、3次感染者だった可能性もあるからです」

 

 

と、バッサリ。

 

 

(テレビ朝日「スーパーJチャンネル」2020年1月30日)

 

 

実際、3人目の感染者となったバスガイドの女性は、武漢からのツアー客とはほぼ接点はなく、すでに症状の出ていたバス運転手と行動を共にしていました。運転手から感染したと見てほぼ間違いない状況です。こうして、あっさり“3次感染”(実際には4次あるいは5次かも分かりませんがが)が出てきてしまった、というわけです。

 

 

今後もこのバスツアー関連の感染者が発生するかもしれません。しかし特定のグループだけを取り上げて、「何次感染なのか」と詮索してみても、もはやまったく意味はないのです。

 

 

国内感染を前提に、検査体制の拡充を。私たちがとるべき行動は?

 

 

もう一度、武漢帰国者の話に戻ると、

 

 

「どこでどれくらいの人が感染しているのかは、今把握できてはいませんが、今回の帰国者の中の感染者のように、今後は日本の街中でも、感染者グループが見つかり始めると思われます。感染が広がっていると考えて次の手を打つかどうか、広く検査をするかどうか、この先を見据えて議論すべき段階に来ているんです」

 

 

と、久住医師。現状を正しく受け止めるならば、水際対策よりも、感染の広がりを前提とした施策が必要、ということです。

 

 

無症状の人からどれくらい感染が広がるか、というデータは、今回の帰国者第1陣のケースが世界初。中国では症状のある人の検査で手いっぱいで、無症状の人を調べたらこれだけの人が感染していました、というデータは前例がないんです。もしこうしたデータを他の国でも収集して、同じ程度の率で感染者が見つかった場合には、武漢発の新型コロナウイルスの感染の広がりを示す重要なデータになると思います」

 

 

「国に求めたいことは、現時点では、たとえ肺炎の症状があって新型コロナウイルス感染が疑わしい人が受診しても、武漢から帰ってきた人やそういう人と接触があった人でないと、検査してもらえないんです。都道府県の判断で広く検査体制を整えるところは出始めているようですが、全国の保健所は武漢関係以外、一切受け付けてもらえません。そうではなくて、広く検査をできるよう体制を整備して、安心できる人を増やしてほしい

 

 

(テレビ朝日「羽鳥慎一モーニングショー」2020年1月28日)

 

 

一方、私たち国民それぞれはどう認識、行動すべきでしょうか?

 

 

「今、新型コロナウイルスが問題になっていますが、日々診察しているとインフルエンザの患者さんが大勢いらっしゃいます。今はインフルエンザの流行期で、それによって具合が悪くなったり亡くなったりしている人の方が圧倒的に多いんです。

 

 

たしかに新型コロナウイルスは心配ですが、心配したからと言って、かからなくなったり、感染者がいなくなったりするわけでもありません。ですから状況を冷静に把握しつつ、風邪と同じように、しっかり手を洗うなど日常生活の中で出来る予防策を徹底していくことが大事です」

 

 

(テレビ朝日「グッド!モーニング」2020年1月29日)

 

久住英二(くすみ・えいじ)

医療法人鉄医会(ナビタスクリニック立川・川崎・新宿)理事長。内科医、血液内科医、旅行医学、予防接種。新潟大学医学部卒業。虎の門病院血液科、東京大学医科学研究所探索医療ヒューマンネットワークシステム部門研究員を経て2008年、JR東日本立川駅にナビタスクリニック立川を開業。好評を博し、川崎駅、新宿駅にも展開。医療の問題点を最前線で感じ、情報発信している。医療ガバナンス学会理事、医療法人社団鉄医会理事長内科医、血液専門医、Certificate in Travel Health、International Society of Travel Medicine。

 

(トップ画像:テレビ朝日「スーパーJチャンネル」2020年1月30日)

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