細菌の繁殖しやすい季節。除菌グッズや抗菌加工製品、殺菌剤、滅菌済み・・・“菌”への似て非なる効果、気になりませんか?
【まとめ】
☆滅菌、殺菌、消毒は、法令で定義が定められています。
☆除菌は、実は定義があいまい。ものによって一定の業界基準も。
☆抗菌は、製品表面の細菌増殖は抑えられますが、付いた菌は死滅しません。
前回まで3回にわたって取り上げた食中毒予防(第1回、第2回、第3回)では、食品や食器に原因となる微生物(細菌・ウイルス)を付けないことが大事、付いてしまったものは殺すしかない、という前提でした。
そこで目が行くのが、様々な清潔用品や、清潔加工品。今や、ありとあらゆる工業製品に「除菌」「抗菌」「滅菌」「殺菌」といった清潔効果が謳われています。さらに、「消毒」も同じような意味で使われますよね。
でも、「除菌」「抗菌」「滅菌」「殺菌」「消毒」・・・どう違うのでしょうか? それぞれどんな効果をどこまで期待できるのでしょうか?
法令で定められた「滅菌」「殺菌」「消毒」
除菌と抗菌は後に回すとして、まず、「滅菌」「殺菌」「消毒」の3つについては、きちんと法令で定められています。「日本薬局方」という、薬機法(旧薬事法)第41条に基づく医薬品の規格基準書に、
☑「滅菌」とは すべての微生物を殺滅させるか除去すること
☑「殺菌」とは 微生物を死滅させること
☑「消毒」とは 人畜に対して有害な微生物又は目的とする対象微生物だけを殺滅すること
と定義されているのです。
法令で定められている以上、「滅菌」「殺菌」「消毒」を謳っている商品は、それぞれの効果が保証されていると考えてよさそうです。ただし、滅菌が最も徹底して微生物を排除することを指すのに対し、殺菌は程度を問わない、消毒は目的がはっきりしている、というイメージです。
実は定義があいまいな「除菌」
次に、「除菌」について。スプレーやジェル、ウェットティッシュなど、直接的に“菌”を排除して手や物を清潔にする、というイメージがありますね。
(独)国民生活センターの資料では、除菌とは、「対象物からろ過又は洗浄によって微生物を除去すること」という定義を紹介しています。要するに、微生物をフィルターなどで取り除く、または洗い流す、ということです。
ただ、「その対象や程度について公的には定められていない。業界により自主規格を設けているところもある」とも書き添えられています。
つまり、先の殺菌・滅菌・消毒と違って、法令に定めのない用語なので、微生物を取り除く作用を広く意味することができる、とも言えます。そのため、実際に殺菌・消毒効果があっても、医薬品や医薬部外品として認められていない製剤などに「除菌」という言葉が使われています。オゾン除菌などがその例です。
また、台所用洗剤でも、「除菌効果あり!」と謳った製品は多いですよね。そのため台所用洗剤のスポンジ除菌や住宅用洗剤については、ルールが定められています(こちら)。
「抗菌」製品は、表面の細菌が増えない(でも減らない)
「抗菌」をうたった製品も身の回りにあふれています。お風呂場やトイレ、台所用品といった水周りグッズ、靴下やタオルなどの繊維製品、はたまた机や文房具などのオフィス用品まで、抗菌加工は当たり前のようになっていますね。
経済産業省では、「抗菌加工製品ガイドライン」を示し、「『抗菌加工製品』における『抗菌』とは、『当該製品の表面における細菌の増殖を抑制すること』」と定めています。
しかも、ガイドラインでは、「汚れ」「臭い」「ぬめり」や「カビ」を防止又は抑制する効果は、あくまで「副次的効果」であって、製品ごとに多種多様なため、「抗菌」の範疇に含めないとしています。
つまり、「抗菌加工」を謳った製品は、
☑「細菌」について、しかも
☑「製品の表面」のみに関して、
☑「増殖を抑制」するような加工が施されている。ただし、
☑カビ等の菌類についての効果は示していない
と考えておく必要があります。
ですから、“抗菌コート”などと宣伝している商品も、一度ついてしまった細菌が死滅したり、減ったりするわけではありません。大量に付いてしまえば、増えないというだけで、大量についたまま。“抗菌コート”のお陰で常にその製品が清潔に保たれている、と思ったら大間違いなのです。
ちなみに、ウイルスは“抗菌”の対象外ではありますが、基本的には人の体の中でしか生きられないため、外に出されてしまうと紫外線などの影響により、だんだんと死滅していくそうです。しかし、ノロウイルスなど、一部は体外でも長時間生き続けます。手洗いなど、清潔のための基本習慣は徹底するようにしましょう。