-「HPVワクチン、政治家はなぜ騙されるのか?」~現場からの医療改革推進協議会第14回シンポから②-1-

2019.12.21

先日のシンポジウムより、今回はHPVワクチン問題に斬り込んだ音喜多駿・参議院議員の講演レポート(前編)です。

 

 

※後編はこちら⇒https://navitasclinic.jp/archives/blog/4681

 

 

【まとめ】

 

☆ナビタスクリニックで自らもHPVワクチン接種を受けた音喜多参議院議員。きっかけは、区議会議員の妻が反対の立場をとったことでした。

 

☆自ら接種勧奨再開に向けて動き出すとすぐに、反ワクチン派の攻撃対象に。「普通の政治家なら引いてしまう」。

 

☆それどころか、HPVワクチンは他のワクチンより危険だと信じ込んでいる政治家も。なぜ政治家は騙される? 音喜多議員は原因を4つに分析。

 

 

 

前回から間が空きましたが、12月7・8日に開催された「現場からの医療改革推進協議会」第14回シンポジウムから、ナビタス選5演題(久住医師司会)を紹介していく企画。今回と次回は、都議会議員時代から現在まで一貫してHPVワクチン推進活動を続けている、参議院議員の音喜多駿氏の講演です。

 

 

多くは、反対派の反撃を恐れて静観。中にはHPVワクチンが危険と信じ込む政治家も。

 

 

音喜多議員は、男性ながらHPVワクチンの接種3回を完遂している一人。接種は、ナビタスクリニック新宿で久住英二医師が担当しました。まずはその経緯から・・・。(以下、まとめ)

 

 

 

 

音喜多議員がHPVワクチンの接種を受けたのは、2017年12月、今からちょうど2年前でした。きっかけは当時、とある区議会でHPVワクチン積極勧奨再開の請願が上がってきたのに対し、区議会議員である自身の妻が反対の立場をとったことでした。

 

 

理由は、「怖いから」。なぜなら、「科学的に安全なのか、よく分からないから」音喜多議員自身はHPVワクチンの安全性等を信頼していたものの、納得はしてもらえなかったとのこと。そこで当時からHPVワクチンを支持していた知り合いの一人、NPO法人フローレンス代表理事の駒崎弘樹氏に相談したところ、「それは自分が実際に接種を受けてみて見せるのが一番いい」とアドバイスをもらったそうです。

 

 

 

 

駒崎氏からナビタスクリニックを紹介され、接種を受けた音喜多議員。その経緯をブログやツイッターにもアップして、接種の勧奨に向けて活動を始めました。ところが、早々に「これは難しい戦いだな」と感じることになったのです。

 

 

まず分かったのは、当時、このHPVワクチンについて積極的に取り組んでいる政治家は極めて少ない、ということでした。「なぜならば、ブログやツイッター等でHPVワクチンについて発信すると、反対派と呼ばれる人たちのかなり熱心な反撃にあうのです」

 

 

普通の政治家は、「あれだけの反撃にあえば、『まあ、この問題に関わるのはやめておこう』ということになる」と音喜多議員。「実際それをやったところで、ほめてくれる人はほとんどいない。対して、その批判のすごさ。政治家は引いてしまうんですね」

 

 

(イメージ)

 

 

取り組まないならまだしも、政治家の中にもHPVワクチンは危険だとする人も。「HPVワクチンは通常のワクチンよりも、副反応が極めて深刻だと信じ込んでしまっている人が多数いるのです」

 

 

原因1:政治家に理系の基礎知識がなく、科学的見地から判断できない。

 

 

これについて音喜多議員の仕分けでは、原因は大きく4つ

 

 

1つ目は、「政治家は文系の人が多く、理系の基本知識があまりないこと。さらに、それに対応する厚労省のお役人や都の職員たちが、ゼロか100かでしかものを考えられないこと」

 

 

例えば、「政治家が厚労省に『HPVワクチン、安全なんですか』と聞くと、厚労省も『100%安全とはいえないです』と口ごもったような言い方しかできないんです」

 

 

 

 

「でも、極端な話、自動車は100%安全なんですか、と言えば、そうではない。交通事故も起こります。また、インフルワクチンであろうと、風邪薬であろうと、多少の副反応はあります。『その程度にはリスクはあるかもしれません』と厚労省が丸めて話すと、(理系的な物の見方に慣れていない)政治家側は、『ああ、危険なんだ』と解釈してしまうんです」

 

 

その結果、政治家は「触れずにおこう」「推進してはいけない」という結論を出してしまうとのこと。

 

 

原因2:安全性を否定する学術論文(科学的には誤り)がまだ撤回されていない。

 

 

2つ目は、HPVワクチンの安全性に関して、肯定と否定、両方の論文が出された状態であること

 

 

HPVワクチンについては、いわゆる『名古屋スタディ』と呼ばれる大規模調査によって安全性が科学的に示され、決着がついたはずです。ところが、「名古屋スタディの研究手法は誤っており、ワクチンと症状に一部関連がある」とした反論(いわゆる「八重論文」)が看護専門誌に掲載されました。

 

 

(名古屋スタディ)

 

 

八重論文は科学的に間違った論文ですが、存在することで、メディアや世間的には両論併記にならざるを得なくなっています厚労省の役人も政治家に聞かれたら、『別の学説もあります』と言わざるを得ない。政治家は両論ある事柄には極めて弱い。どうしても喧嘩両成敗にするのが、政治家の仕事だと思ってしまう人が多いんです」

 

 

「私も名古屋スタディの鈴木先生とお会いしてお話を聞いたのですが、今、学術誌に論文を出して、八重論文の撤回のために頑張っているそうです。撤回が実現しない限り、この議論は政治的にはなかなか進みづらいのではと思っています」

 

 

原因3:目の前で苦しむ人に「ワクチンのせい」と訴えられると、情が先立ってしまう。

 

 

3つ目は、「政治家は意外といい人なんです、みんな。政治家を志す人は、金に汚いなんていう悪いイメージもあるかもしれませんが、実際、弱者に寄り添いたい、困っている人を助けたい、という志を持っている人が非常に多いんです」

 

 

「そういう方々が、被害者団体で、『歩けなくなって車いすになってしまった』『手が震えて字が書けなくなってしまった』『これはワクチンのせいなんです』と目の前で切々と語られると、心打たれてしまう」とのこと。

 

 

(イメージ)

 

 

「ワクチンによる副反応」として訴えられている諸症状は、実はワクチンを接種していなくても一定の割合で発生するものであることが分かっています。因果関係もはっきりしません。「しかし、苦しむ方々が目の前にいる、そして涙ながらに訴えている、となると、政治家はどうしても動かされてしまう人が多いんです」

 

(つづく)
※後編はこちら⇒https://navitasclinic.jp/archives/blog/4681

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