がんを体に負担をかけずに発見し、適切な治療のための情報が得られる検査、「リキッドバイオプシー」をご存じですか?
【まとめ】
☆少量の血液を分析することで、全身にひそむがんの超早期診断が可能になる「リキッドバイオプシー」検査を当院に導入します。
☆血中に含まれるがん特有のDNAを検出する仕組み。体への負担が少ないので、術後や治療後のモニタリングで再発の早期発見も。
☆がんは患者さんによっても、また出来たがんそのものによっても千差万別。多く含まれるがんのDNAから、最適な治療薬の選択も可能に。
少量の血液、体への負担はほぼゼロで、がんを超早期診断! リキッドバイオプシーって何?
ナビタスクリニックではこのほど、血液など少量の体液を採取するだけで、がんの超早期診断が可能になる「リキッドバイオプシー」検査を導入することになりました。
リキッドバイオプシーは、厳密には血液に限らず尿や唾液など様々な体液の成分を分析し、体に潜む病気を感知する検査技法です。
体液には、様々な組織や細胞由来の情報が含まれています。がんも、がん特有の成分を体液中に放出しています。中でも血液は全身を巡っているため、体のあらゆる部位に潜むがんからの情報を含みます。ですから少量の血液を詳細に分析すれば、体中のがんの可能性を網羅的にチェックできるのです。
現在、広くがんの診断に際して行われている生体組織採取検査(いわゆる生検)では、手術や内視鏡、針などで組織の一部を採取する必要があり、苦痛とリスクを伴います。にもかかわらず腫瘍組織のごく一部しか採取できないので、採取した組織や細胞によって検査結果にばらつきが出る可能性があります。診断への影響も排除しきれませんでした。
一方、リキッドバイオプシーで見るのは、がん細胞から体液中に漏れ出て血中を循環しているDNA(遊離DNA)です。肺がん始め様々ながん患者で、ごく早期ステージから、がん由来のDNAが血中に漏れ出しています(ctDNA)。このctDNAは、がん関連遺伝子に変異を持つため、正常な組織に由来する遊離DNAと区別がつくのです。

(Shutterstock/Meletios Verras)
これまで、がんの早期発見と言っても、多くはCTやMRIなどの画像診断によるものでした。その場合は当然、肉眼で見える大きさまでがんが成長している必要があります。しかし、リキッドバイオプシーは、DNAレベルでがんの存在を確認するもの。より早期の段階でがんとの診断が可能です。
このようにリキッドバイオプシーでは、血中のctDNAの有無や種類を詳細に分析することで、従来の生検では捕えきれなかったがんの存在を超早期に、しかも体への負担もほとんどなく、明らかにすることができるのです。
治療後のモニタリングに導入することで、再発の早期発見も可能に。
リキッドバイオプシーは、手術・治療後のモニタリングにも有効です。
がんの治療方法には、外科手術や抗がん剤、分子標的薬などによる薬物治療、放射線治療など、様々な方法がありますが、どの場合でも治療中・治療後に、がんの状態をモニタリングしていく必要があります。再発や治療効果を見極めるためです。

(Shutterstock/Rido)
その際、定期的にリキッドバイオプシー検査を行うのです。リキッドバイオプシーで検出できる遺伝子異常は、手術や治療でがんが小さくなると数値が下がります。逆に、がんが進行して大きくなると、数値が上がる傾向が見られます。
実際、米国の臨床研究では、術後の化学療法を行うかどうかの判断に際し、リキッドバイオプシーでctDNAを確認することの有効性が示されています。ステージⅡの大腸がんで術後に化学療法を行わなかった患者178人中、ctDNAが確認されたのは14人、そのうち11人(79%)が後にがんを再発しました。他方、ctDNAが確認されなかった患者164人中、後に再発したのはわずか16人(9.8%)でした。
また、CTスキャンで肺がんの再発を確認できる状況になる数カ月前から、ctDNAによって再発を予測できた例も報告されています。
がんの遺伝子変異情報が分かるから、適切な治療薬の選択にもつながります。
リキッドバイオプシーで血中のctDNAを検出することで、患者ごとに最適な治療法や治療薬の選択に活かすこともできます。
がんはそもそも遺伝子(DNA)の異常によって起こる病気です。一口に「肺がん」「大腸がん」などと言っても、実際にどの遺伝子に異常が起きているかは、患者ごとに千差万別。起きている異常の種類も、厳密には細胞ごとに異なっています。
遺伝子異常のタイプによって効果のある薬剤も異なるため、どんな遺伝子にどんな異常が起きているのか、正しく知ることができれば、適切な治療薬の選択が可能になります。
さらに、治療中の薬剤に対して耐性が出てきてしまったとしても、リキッドバイオプシーで薬剤への反応を逐一確認しながら、薬剤の量や種類を変えていくこともできるのです。
こうして継続的・定期的に検査ができるのも、リキッドバイオプシーの体への負担が少ないからこそ。繰り返し検査しても体調に支障が出ず、生活や仕事などへの影響も最小限で済むからです。
血液内科医で白血病など血液がんが専門のナビタスクリニック理事長・久住英二医師も、「がんは今や慢性疾患」とし、「高血圧や糖尿病と同じく、働きながらがん治療を続けるのがスタンダードになりつつある」と考えています。それには、体への負担が小さい治療や検査を、身近なところで受けられる体制整備が重要。

(shutterstock_CA-SSIS)
そうした考えに基づき、ナビタスクリニックはリキッドバイオプシーの導入に踏み切りました。仕事の合間にがんの早期発見に努めたい方や、万が一の再発が気になるがんサバイバーの方など、詳細を知りたい方はぜひお問い合わせください。