-意外と知らない食中毒3 ~熱湯で漂白剤よりも即効除菌!-

2018.06.13

 

除菌には消毒薬が一番、とにかく何でも冷蔵庫に入れておけば大丈夫、夏を乗り切ればもう安心…なんて思っていませんか? どれもちょっとずつ違います。

 

【まとめ】

☆調理器具や食器は、熱湯消毒が早くて確実、安全です。

☆冷蔵庫を過信しないで! 庫内でも食中毒の原因細菌は生きています。

☆ノロなどウイルス性の食中毒は一年中起こります。

 

 

食中毒予防にまつわるよくある誤解、シリーズ最終回です。

●その1:よく加熱しても毒素は消えません は こちら

●その2:調理時の油断が料理をキケンに は こちら

 

 

誤解7:食器や調理器具は、漂白剤かアルコール消毒が一番・・・熱湯消毒が最速です!

 

 

食中毒予防には、食中毒微生物が食べ物につかないよう、調理器具や食器を清潔に保つ必要があります。

 

まな板や包丁、それらを拭くふきんなどの調理器具は、できれば肉・魚用と野菜用を分けると良いでしょう。食中毒の原因としてよくあるのが、「肉を調理した包丁やまな板を使って作った生野菜サラダ」。同じまな板や包丁を使うなら、先にサラダを作りましょう。まな板の傷の黒ずみはバイ菌ですから、木製よりも傷のつきにくい樹脂製がお勧めです。

 

また、キッチン周りで一番、雑菌が多いのが、実は食器洗い用のスポンジです。

 

東京都衛生研究所の実験でも断トツの検出数。食中毒細菌の代表格でもある「黄色ブドウ球菌」も検出されました(冷蔵庫の野菜室、シンクからも検出)。食器を洗っているつもりが、食中毒の元を塗り付けていた、なんてことにならないよう、毎回よく洗って絞り、乾かし、頻繁に取り換えるのがよいでしょう。

 

 

調理器具や布きんの消毒には、漂白剤やアルコールなどがよく使われます。ただ、東京都立衛生研究所の実験によれば、一番即効性が高いのは、「熱湯消毒」

 

昔から煮沸は有効な消毒方法の一つですが、面倒なイメージがありますよね。まな板などは大きさの点で不可能です。でも、大丈夫。まな板や布きんなら、熱湯をかけるだけでOK。一瞬で済みますし、薬剤が残留するような心配もないので、とても手軽。非常にオススメです。スポンジも是非、熱湯をかけて消毒しましょう。

 

漂白剤では塩素系(次亜塩素酸ナトリウム)が効き目が早く、効果も十分、という実験結果でした。ただし、取り扱いには注意が必要ですし、後のすすぎもしっかりとしなければなりません。酸素系漂白剤やアルコールだと時間がかかったり、効きにくかったりしました。

 

 

誤解8:何でも冷蔵庫に入れておけば、安心・・・菌は生きています。詰め込み過ぎも危険!

 

食中毒の原因細菌は、食品の保存方法が適切でないと、食品中で増えてしまいます。増やさないために重要なのが、温度管理です。

 

原因細菌の多くは室温 (約20℃)で活発に増え始め、ヒトの体温くらいで最も増殖スピードが速くなります。ですから生ものや調理品は冷蔵庫や冷凍庫での保存が鉄則。ただ、使い方を間違えると、食中毒のリスクを高めます

 

というのは、細菌は冷蔵庫の中でも生き続けるからです。

 

食中毒予防の観点から、冷蔵庫は以下の点に注意して正しく使いましょう!

 

☑買ってきた肉や魚、卵などは、すぐに冷蔵庫にしまう

☑庫内の温度が上がらないよう、開け閉めの頻度はできるだけ少なくする。

☑まだ温かい料理を入れるのは論外

☑庫内に隙間を多く作るよう食品を入れ、冷気が隅々まで行き渡るようにする。食品の詰め込み過ぎは、庫内温度が上がる原因に。

☑未開封の瓶詰め、乾めん、レトルト食品、砂糖・塩、たまねぎやじゃがいも、バナナなど、冷蔵の必要がないものまで入れない

定期的に清掃して、庫内の清潔を保つ。

☑生の肉や魚からドリップ(汁)が漏れないようビニル袋で包む(血液は細菌の大好物!)。

☑生卵は稀に殻にサルモネラ菌が付いているため、パックのまま奥の棚にしまう

 

 

誤解9:夏を過ぎれば、もう食中毒は心配ない・・・なんてことはありません。

 

細菌性の食中毒は、梅雨から夏に多く、確かに年間の発生件数の上位を占めます。高温多湿な環境が細菌の増殖にもってこいだからです。しかし患者数では、冬場を中心に一年を通じて患者が発生するノロウイルスによる食中毒が一位です 。

 

ノロウイルスは、流行性胃腸炎の原因としてよく知られていますね。ただ、元はといえば、カキなどの二枚貝を生や加熱不十分なまま食べることで感染します。ヒトからヒトへの二次感染も多いので、そのイメージのほうが強いかもしれません。

 

ウイルスというものは、細菌と違って食品中では増えません。一方で、100個以下の少数でも発症します。ですから、そのまま口に入る食べ物に付いてしまったら、発症は目に見えています。調理場などに「持ち込まない」「広げない」ことが何より大事です。

 

患者は調理場に立ち入らないことは基本。さらに、汚物処理を行う際は使い捨てのビニル手袋やビニルエプロンを使用します。油断してはいけないのは、使用後の手袋等の取扱いです。中表になるように脱ぎ、汚れた側に触れないよう、そのままビニル袋に密封して捨てましょう。周辺まで広く塩素や熱湯で消毒することも忘れずに。

 

(参考サイト)東京都立衛生研究所

まな板の除菌実験

フキンの除菌実験

台所は清潔でしょうか

 

 

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