-【久住医師・生解説!】血液のがん「多発性骨髄腫」とは?(宮川花子さん公表)-

2019.12.13

漫才師の宮川花子さんが公表した「多発性骨髄腫」とはどんな病気でしょうか? 久住医師の解説を交えながら経過をまとめます。

 

 

【まとめ】

 

☆漫才師・宮川花子さんが公表した「多発性骨髄腫」。久住医師がTBS「ひるおび!」にスタジオ生出演して解説しました。

 

☆当初は「転移性骨腫瘍」、翌日には「形質細胞腫瘍」、最終的に「多発性骨髄腫」との診断。なぜ? それぞれどう違う?

 

☆がんは今や慢性疾患。働きながら治療をするにあたり、治療法の選択も人それぞれ。ただしピアサポートや相談窓口の体制整備を!

 

 

 

多発性骨髄腫とは? 久住医師がTBS「ひるおび!」にスタジオ生出演して解説。

 

 

12月11日、漫才師の宮川花子さん(宮川大助・花子、65歳)が記者会見を行い、血液のがんの一種である「多発性骨髄腫」を発病し、現在も闘病中であることを公表しました。

 

 

 

 

これについて、血液のがんの専門家(血液内科医)であるナビタスクリニック理事長の久住英二医師がTBSテレビ「ひるおび!」にスタジオ生出演し、解説を行いました。

 

 

多発性骨髄腫とは、悪性リンパ腫・白血病と並ぶ白血球のがんです。「血液には、酸素を運ぶ赤血球や血を止める血小板など色々な細胞がありますが、多発性骨髄腫は白血球の一種である『形質細胞』ががん化したものです」と久住医師。

 

 

形質細胞は、免疫システムの一つ、抗原抗体反応を担う「抗体」を作り出す細胞。「形質細胞ががん化すると、おかしな抗体を際限なく作り続けてしまいます。その結果、腎臓を弱らせたり、骨をもろくして骨折しやすくなったりと、全身に症状を引き起こします」。40歳未満での発症は非常にまれで、50歳以上、加齢とともに増えていきます。ただ、発生頻度は年間に人口10万人あたり5人と、「非常にまれながんです」。

 

 

 

 

発症メカニズムについては、

 

 

「全てのがんは、細胞が増えていく時に、DNAや遺伝子のコピーミスによって遺伝子に傷がつくことが発端です。その結果として出来た、勝手に増殖し続ける能力を獲得した異常な細胞が、がん細胞です。人間の細胞は本来、増えるだけではなく、増殖のストップや間引きによって調節され、全体として人間の生命活動が維持されています。そのコントロールから外れて増え続けていくのが、がん細胞です」

 

 

と久住医師は説明します。

 

 

 

 

国民2人に1人ががんになる時代です。ご夫婦のどちらかががんになってもおかしくない。ですから宮川花子さんのようなケースは、どこのご家庭でも起きうることです。がんが増えているのは、国民が長生きするようになったからで、60歳を過ぎた高齢夫婦で直面することが多くなると思います。また、もっと若い段階で脳卒中などそれ以外の病気で亡くなる方が減っているからでもあります」

 

「そういう意味ではがんが増えているのは悪いこと一方ではないのですが、とはいえがんは非常に重い病気でもあり、その人の人生観を見つめなおす機会には違いないと思います」

 

 

当初は「転移性骨腫瘍」との診断。翌日の精密検査で、「形質細胞腫瘍」に。何が違う?

 

 

ここからは、宮川さんの発症から治療の経過について、久住医師の解説を交えながらまとめていきます。

 

 

宮川花子さんは昨年3月、体調に異変を感じ、検査を受けたところ、腰椎に腫瘍が見つかりました。CTを撮ったところ、腰椎に虫が食ったような穴が2か所確認され、「転移性骨腫瘍」と診断されました

 

 

骨腫瘍は骨にできる腫瘍で、胃がんや肺がんなどと同じく、転移しない限りその部位に限局的に発生します。

 

 

「骨はカルシウムで出来ていて、放射線を通さないので、X線写真では通常白く映ります。しかし骨に腫瘍ができていると、その部分の骨が溶けて黒く穴のように映るのです。多発性骨髄腫の場合は、病変部分だけでなく、その周りも骨粗しょう症のようにスカスカになっていきます。X線写真では、白かった骨が病気の進行につれて黒くなっていくんです」

 

 

 

 

「しかし宮川花子さんはマラソンなどもやられていて骨が丈夫だったのでしょう。病変部分だけが黒く抜けたように見えたようです。かつてがんを経験されていることも加味して、当初は転移性骨腫瘍と診断されたのだと思います」(久住医師)

 

 

ただ、翌日になって精密検査を受けたところ、腫瘍は2か所のみで骨髄に広がっていなかったとわかり、転移性であることは否定されました。そこで形質細胞腫瘍との診断が下ったのです。

 

 

 

 

形質細胞腫瘍は、がん化した形質細胞がカタマリを作ります。

 

 

 

 

形質細胞腫瘍も白血病のような血液細胞のがんに違いないのですが、骨の中や皮膚の下など、ある部位に固まってできるものをそう呼んでいます。ただ実際、形質細胞腫瘍は多発性骨髄腫の初発症状として見つかることが多いのです。昨年3月の診断の段階でみつかった形質細胞腫瘍もそういうことだと思います」(久住医師)

 

 

放射線治療がよく効き、経過観察しながら仕事を継続へ。しかし再び検査値が上昇・・・。

 

 

見つかったのが2か所の形質細胞腫瘍だけだったため、放射線治療などを受け、経過は一時良好でした。放射線治療前は44.3だった血液検査の数値が、治療後しだいに小さくなり、正常値(1)に近づいていきました。非常に放射線がよく効いていたことになります。

 

 

血液検査値が5.57まで下がった段階で、経過観察となりました。

 

 

「放射線を当てた部分の細胞が死んで、値が良くなったのだと思われます。無治療で観察、ということですが、観察していること自体が『無治療』ではないんです。しばらく様子を見よう、ということで、悪化すればまた治療を行うなど判断します。

 

 

 

 

検査値が1になるまで治療を続けないのは、患者さん個々の状況による選択です。例えば、根治を目指すための治療による負担が非常に大きく、一方で仕事も継続したいなら、病気をコントロールしながら仕事を続ける選択は珍しくありません

 

 

今日ではがんは慢性疾患です。つまり高血圧や糖尿病と同じく、治療をしながら仕事をしていくのがスタンダードになりつつあります」(久住医師)

 

 

放射線治療の間も、劇場帰りに立ち寄るかたちで、宮川さん本人も「風邪薬をもらうみたいな感じ」だったそうです。そのため、「(病気のことは)、周りは全然知りませんよ」という状況でした。

 

 

しかし、今年1月、血液検査の値が再び55.67まで急上昇腫瘍の塊が広範囲にわたっていることが判明しました。

 

 

 

 

「やはり昨年3月の時点で、形質細胞腫瘍だけでなく、他の部分にももうがん細胞がいたのだと思われます。しかし検出できる段階ではなかった。それが悪化した、つまり、放射線を浴びていない部分のがん細胞が増えてきて、塊が確認できる大きさに成長した、ということだと考えられます」(久住医師)

 

 

この時、宮川さんは医師から化学療法(抗がん剤治療)を受けるよう勧められたそうです。しかし病気を公表せずに仕事を継続していた宮川さんは、副作用の影響を懸念。その結果、約5カ月間、治療を受けないまま過ごしていました。

 

 

化学療法を拒否、5か月後に多発性骨髄腫に。ピアサポートや相談窓口などの体制整備を!

 

 

すると今年4月頃、下半身のマヒ、鎖骨の骨折、腫瘍により右の眼球が飛び出してくるなど、がんの悪化による様々な症状が現れたそうです。6月には全身7か所に腫瘍が見つかり、「多発性骨髄腫」と診断されて即入院に。一時は余命宣告までされ、命が危険な状態にまで陥りました。

 

 

「患者さんが5カ月間、治療を逡巡されたのも致し方のないことと思います。やはり医師と病気について気軽にやり取りできる環境や関係というのはなかなかないですよね。ですから、同じ病気の人同士で語り合えるピアサポートや、気軽に相談できる窓口を医療機関が提供する、といった体制整備も求められます」(久住医師)

 

 

 

 

宮川さんの場合、開始した化学療法が功を奏し、腫瘍が小さくなり、両足とも自分で動かせる状態まで回復。現在、病状は落ち着いているそうです。

 

 

今回は復帰会見ではなく、まだ退院の目途もついていないとのこと。それでも宮川さんご本人も、「リハビリやってたら半年くらいで歩けるようになると言われているので、慌てず焦らずあきらめず、一足飛びにはいかないと思っております」と、とても冷静で前向きにコメントされています。

 

 

 

 

夫の宮川大助さんも、「同じような病気の人たちもまだ自分のように立ち直るチャンスが山ほどあるんで、みんなでちゃんと検査も受けて頑張ろう、っていうメッセージを飛ばしたいと言うてるんでね」と妻を代弁。

 

 

「(治療やメッセージ発信を)2人で続けていくことになると思います。それが大助・花子の“ショータイム”になると思います」

 

 

宮川花子さん、そしてご夫婦お二人の“ショータイム”を、ナビタスクリニック一同、見守ってまいります。

 

 

 

 

(画像はTBS「ひるおび!」2019年12月12日放送より)

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