2018年に承認されてからも品薄で日本未発売となっている帯状疱疹ワクチン、期待の効果をまとめました。
【まとめ】
☆世界初の帯状疱疹サブユニットワクチン。帯状疱疹の予防効果は、臨床試験で97.2%という驚異的な数字。
☆サブユニットワクチンとは?従来の水痘生ワクチンとは何が違う?効果の違いは? どんな恩恵がある?
☆50歳を過ぎて増加する帯状疱疹。水痘の定期接種化で、将来ほぼ全ての国民が帯状疱疹リスクにさらされる?!
今までにない帯状疱疹ワクチン、どんなもの? いつから接種できる?
先日、このブログで「激痛!! 50歳過ぎて急増する『帯状疱疹』。水ぼうそうワクチンで予防できます。」という記事をアップしました。その中で少しだけ、以下のように言及した帯状疱疹ワクチンが今回のテーマです。

(shutterstock/Mumemories)
実は帯状疱疹には予防ワクチンがあります。欧米で2社が開発し、最初に開発されたワクチンは、60歳以上の38,546人を対象とした臨床試験で、帯状疱疹の発生率を51%低下させたとの報告もあります。日本では片方のワクチンだけが国内承認されていますが、ナビタスクリニックで診療を行う上昌広医師は、米国でも品薄のため、日本国内では入手困難な現状を『Forbes JAPAN』で報告しています。
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ナビタスクリニックの久住英二理事長が、医薬品の個人輸入仲介業者に問い合わせたが、「当面、解決の目途は立っていない」という主旨の回答を得たという。
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(上記記事より抜粋)
2018年に国内承認されたものの、米国でも品薄で日本入荷の見通しが立っていなかったのは、「シングリックス」というワクチン。それが、ナビタスクリニック理事長の久住英二医師によれば、年明け以降に発売という話も出てきているようです。
(シングリックス)
シングリックス(添付文書はこちら)は、世界初の帯状疱疹サブユニットワクチン。
サブユニットワクチンというのは、不活化ワクチンをさらに進化させたもの、というイメージです。
ワクチンの始祖はジェンナーの種痘(あるいはそれ以前の人痘)にさかのぼりますが、そこから生まれたのが、生ワクチン。弱毒化させたウイルスや細菌などの病原体を体に入れて免疫を付けさせるものです。ただ、低いとはいえ感染のリスクもあります。そこで病原体を薬剤処理して、増殖不能にしたのが不活化ワクチンです。
他方、サブユニットワクチンは、遺伝子組み換え技術を応用し、免疫成立に必要な特定の抗原(感染防御抗原)のみを作り出すところから始まります。大量に出来てきた抗原に、免疫を活性させる物質(免疫賦活剤、アジュバント)を加え、ワクチンがつくられます。
帯状疱疹の予防効果97.2%(水痘ワクチンは51.3%)の驚くべき実力!!
さて気になるのは、やはり帯状疱疹の予防効果がどの程度か、ということですよね。
シングリックスは、日本を含むアジア、米国、欧州、計18カ国の50歳以上の1万5,411人(帯状疱疹にかかったことがなくワクチン接種歴もない)を対象とした臨床試験で、帯状疱疹の予防効果97.2%と、驚くべき結果を示しました。
年齢による効果の差もありませんでした。また、70歳以上で同じような試験を行っても、予防効果は89.8%ありました。さらに、両試験から70歳以上の1万6,596人のデータを分析したところ、帯状疱疹の予防効果は91.3%、その後の神経痛の予防効果も88.8%と高い数値がはじき出されたのです。
ちなみに、次善策である水痘(水ぼうそう)ワクチンの場合、帯状疱疹の予防効果は51.3%。帯状疱疹後の神経痛予防は66.5%、重症度も61.1%減少と報告されています。
免疫力の低下した人でも接種できます。将来的には定期接種化すべき?!
圧倒的な効果に加え、シングリックスは、これまで生ワクチンを接種できなかった人たちにも帯状疱疹予防の手段をもたらすことになります。
おさらいですが、水痘ワクチンに一定の帯状疱疹予防効果が見られるのは、それが水痘ウイルスによるものだから。幼少期などに水痘にかかった人は、体内にウイルスが潜伏しています。加齢などで免疫力が低下し抑え込み切れなくなった結果、暴れ出すのが帯状疱疹です。
経験者によれば、とにかく痛い、とのこと。体の半身に、激痛を伴う赤い発疹が広がります。特に50歳を過ぎると発症が増えるので、これまでのところ水痘ワクチンで予防するのが堅実でした。(実際に発症してしまって数年以内の方は、抗体が再びしっかり出来ているので接種は必要ありません)
性別・年齢別にみた帯状疱疹発症数及び発症率(1997~2014年)
(マルホ株式会社)
ただし、水痘ワクチンは、生ワクチンです。ですから、免疫抑制剤を使用中の方や、がんの化学療法などで免疫力が低下している方は、接種できません。弱毒化してあるとはいえ、発症のリスクが高まるからです。
その点、シングリックス(サブユニットワクチン)であれば、そのような免疫力の低下した方でも、問題なく接種が可能です。
一般的な注意点としては、接種は2回で、2回目は初回の2カ月後、遅くとも半年までに打つことが必要です。また、水痘生ワクチンに比べると副反応(注射部位の赤み、腫れ、痛みなど)の頻度が高いとされますが、先の臨床試験でも軽度~中程度が多く、一過性でした。
なお、国立感染症研究所は、「わが国でも小児の水痘ワクチンが定期接種化されており、今後帯状疱疹患者数の増加、重症化が懸念される」としています。
要するに、生ワクチンである水痘ワクチンの接種の徹底により、水ぼうそうにかかっていなくても全ての人が体内に水痘ウイルスを宿し、将来的に帯状疱疹を発症するリスクを抱えることになる、ということ。
これを踏まえると、幼少期の水痘ワクチンと、50歳以上の帯状疱疹サブユニットワクチン、セットで予防接種体制を考える必要があります。今後、シングリックスをはじめとする帯状疱疹サブユニットワクチンも定期接種化されるべきと言えそうですね。
(トップ画像:Shutterstock/Lightfield Studios)