実は、腐ったものを食べても食中毒を起こすとは限りません。一方で、におわないから、よく加熱したから、といった誤った判断が元であたってしまうことは、よくあるのです。
【まとめ】
☆食中毒は、特定の食中毒細菌・ウイルスがひきおこすもの
☆におわなくても、加熱しても、原因微生物が付いていたら食中毒に
☆一番の予防は「付けない」こと! 食品は信頼できるお店で買おう
梅雨到来。ジメジメと蒸し暑いこの時期は、食中毒の原因菌にとって絶好の増殖チャンスです。汚染された食品を食べると、大抵は数時間~数日で、激しい腹痛や嘔吐、下痢、発熱などの症状が出ます。
でも、多くの人が食中毒について誤解しているようです。皆さんはどうでしょうか?
誤解1:腐ったものを食べると食中毒になる ・・・というわけではありません!
「腐る」という現象は、細菌などの微生物が増えた結果、その食べ物本来の色や味、香りなどが損なわれて食べられなくなってしまうものです。微生物の種類は特に限定されません(総称して腐敗菌などと呼ばれます)。そして極端な話、見るからに腐った食べ物を食べたとしても、食中毒菌がいない限り、下痢や嘔吐などの食中毒症状は出ないのです。
一方、食中毒は、食品衛生法に定められた、特定の「食中毒微生物」が引き起こすもの。現在、国内ではウイルスや原虫を含めて20数種類の微生物が、食中毒微生物とされています(表)。
これらが食べ物の中で増えたり、毒素をつくり出したりして、その食品を食べた人にその微生物ごとにやっかいな症状を引き起こします。
食中毒の原因微生物は、それだけの健康被害があるからこそ、その他多くの腐敗菌とは区別されています。ただし、腐るような状態に置かれていた食品には、中毒菌が含まれている可能性も十分ある、と考えておくのが無難です。
誤解2:嗅いでみて、におわなければ大丈夫 ・・・とは言えません!
実は、食中毒微生物に汚染された食べ物でも、見た目には大きな変化はありません。それだけでは嫌なにおいなどもしません。
ですから、汚染された食べ物を食べている時には何の異変も感じないことがほとんどです(だから食べてしまうんですよね)。例えば、ある生魚に食中毒菌が付いて食中毒を発症するほどに増えていた場合でも、まだ見た目も臭いも腐った状態でないために、食べてしまうことはよくあるのです。
となると、一番肝心なのは、食中毒微生物を食べ物に「付けない」こと。
食中毒微生物の多くは、元々は牛や豚、鶏などの腸内や、魚の内臓などに棲みついていたもの。それが、店頭に並ぶまでの加工の段階でどうしても肉などに付着し、隙間に入り込んでいってしまうのです。
食べるまでの取扱いが適切でないと、食中毒微生物が残っていたり、手や調理器具について、最終的に食べ物に付いたりします。
代表的な原因細菌である病原性大腸菌O-157やカンピロバクター、サルモネラなどは、100個程度付いているだけでも発症することがありますし、ノロなど食中毒の原因がウイルスの場合は、10~100個とごくごく少量でも発症します。
要するに、流通~販売~購入・保管~調理までの全ての過程が、衛生的に信頼できるものでなければならない、ということ。食べ物は衛生的に信用できそうなお店で買ったり、食べたりする、というのも大事ですね。
誤解3:菌が付いても加熱すれば食べられる・・・と思っていると痛い目に!
高温加熱すれば、細菌でもウイルスでも死滅する、だからちょっとくらい危なっかしくても、グツグツよく火を通したり、電子レンジで長めにチンしたりすれば、なんとか食べられるでしょ、なんて思っていませんか?
確かに、高温になれば食中毒微生物の多くは死滅します。でも、それで100%食中毒が防げるわけではありません。
代表例が、黄色ブドウ球菌。
黄色ブドウ球菌は、毒素を作り出し、それが中毒症状を引き起こします。問題は、その毒素は100℃で30分加熱しても分解されないこと。ですから、食品に付いて増えてしまった後にアツアツに加熱しても、毒素は残り、食中毒を引き起こすのです。
食材を衛生的に保管すること。食中毒微生物を付けない、そして細菌に関しては常温であっという間に増えていくので、安定的に低温で管理することが大事です。(つづく)