-【濱木医師解説】貧血じゃないのに貧血症状? それ、「かくれ貧血」かもしれません。-

2019.11.13

なんだかだるい、疲れやすい・・・貧血予備軍の可能性があります。女性だけでなく、どなたにも起こりえます。

 

 

【まとめ】

 

☆新宿院長の濱木医師(血液内科医)が、NHK「ひるまえほっと」にスタジオ生出演、「かくれ貧血」について解説。

 

☆通常の血液検査ではひっかからない、かくれ貧血。なりやすいのは女性だけではありません。 どんなもの? どんな症状? 

 

☆対策には鉄分たっぷりの食事を。動物性食品を積極的に。鉄製の調理グッズも活用しましょう!

 

 

 

健診の血液検査などで「貧血気味」と言われたことのある人は少なくないはず。それ、実はギリギリセーフというわけではないのです。「かくれ貧血」の可能性があります。

 

 

ナビタスクリニック新宿院長で血液内科専門の濱木珠恵医師が、NHK「ひるまえほっと」にスタジオ生出演し、かくれ貧血について解説しました。

 

 

 

 

 

 

 

「日本は全体としても50歳以上の女性の5人に1人は貧血と言われています。それ以外の人でも、2人に1人は“貧血予備軍”、つまり血中の鉄分が少なくなっている方がいらっしゃいます。検査では貧血と診断されない“かくれ貧血”です」

 

 

「かくれ貧血は、じつは女性だけの問題ではありません。例えば特に、成長期の男の子でもかくれ貧血になってしまうことがあり、注意が必要です」

 

 

詳しく見ていきましょう。

 

 

貧血は全身の酸欠。かくれ貧血はその崖っぷち、鉄の予備の貯えが枯渇した状態です。

 

 

まずは基本の貧血から。貧血とはどういうことか、正しくご存じですか?

 

 

体中の細胞は、生命活動に酸素を必要としています。その供給を担っているのが、血液中の赤血球に含まれるヘモグロビン。肺から取り込まれた酸素にヘモグロビンが結合して、体中をめぐり、必要とする細胞に届けています。そのヘモグロビンの原材料が「鉄」です。

 

 

 

 

血中の鉄分が不足すると、赤血球やヘモグロビンが作られなくなり、体中に酸素を運べなくなります。結果、全身の細胞が酸欠状態に陥ってしまいます。

 

 

通常の健診で行われている血液検査でも、ヘモグロビンの濃度が測定され、貧血かどうかの確認が行われるのが一般的。WHO基準では、成人男子は13g/dl未満、成人女子や小児は12g/dl未満、妊婦や幼児は11g/dl未満だと貧血と診断されます。

 

 

では、「かくれ貧血」はどういう状態でしょうか?

 

 

体には、血中のヘモグロビンに使われている鉄の他に、「貯蔵鉄」という予備の鉄が蓄えらえています。例えるなら、ヘモグロビンが鉄の入った財布、そして貯蔵鉄は鉄銀行に預けられているイメージです。

 

 

「日常使っているのがこのお財布に入った鉄です。体全体の鉄の6割くらいは、赤血球に使われています。また、酸素の運搬以外に、筋肉など体そのものを作るのにも使われています。そうして一気にお財布内の鉄が使われてしまったり、赤血球が何かの理由で急に減ったりした場合、体は赤血球を作るために、貯蔵鉄を鉄銀行から下ろして財布に補給します」

 

 

 

 

これが日常的に行われている体内での鉄のやり取りです。ところが・・・

 

 

「貯蔵鉄を鉄銀行からどんどん下ろしてばかりいると、お財布から鉄が無くなっても、それを補給する貯蔵鉄の残高も枯渇してきます。お財布にも銀行にも無くなった状態が、いわゆる貧血です。その手前、お財布には何とか鉄が入っているので貧血とは言われないけれども、鉄銀行残高はゼロで補給の手立てがない、ギリギリの状態が、“かくれ貧血”です」

 

 

 

 

かくれ貧血、あなたは大丈夫? チェックリストで症状とリスク要因の確認を。

 

 

かくれ貧血だと、どんな症状が出るのでしょうか? また、かくれ貧血に陥りやすい人はどんな人? 心当たりがないか、まずは以下のチェックリストで確認してみてください。

 

 

 

 

①~⑤は、鉄不足だったり貧血があったりした場合に出る症状です。⑥~⑧は、貧血になるリスクの高い人の特徴です。

 

 

それぞれ濱木医師の解説は以下の通り。

 

 

●眠っても疲れがとれない、疲れやすいのは、体内の赤血球が足りないことで全身が酸欠状態になっていることの現れ。鉄分不足だと眠りが浅くなり、睡眠時間は十分なはずなのに、実際にはしっかり眠れていないことも多くなる。そのために、朝起きられない人も。

 

 

●階段で息切れしてしまうくらいになると、いわゆる「貧血」まで進んでいる可能性も。血液に含まれる酸素が薄いために全身が酸欠状態で、その分たくさん血流を巡らせようとして心臓が激しく動く。脈は早まり、動悸がしたり息が上がったりしてしまう。

 

 

 

 

●爪がへこむ、もろくなる、割れる、というのは、鉄不足の典型的な症状。体の細胞を作るのにも鉄分が必要なので、足りないと皮膚やつめの細胞もうまく作れなくなる。

 

 

●顔色が悪いのは、赤血球が足りないせい。血色がよく見えるのは、赤血球の赤みによるものなので。

 

 

●氷をガリガリ食べてしまうのは、「氷食症」とも呼ばれ、異食症もしくは異味症という味覚異常の1つ。栄養価がないにもかかわらず、歯ごたえのあるものが無意識に食べたくなってしまうもの。

 

 

濱木医師自身、かつて貧血になったことがあり、当時は無自覚で飲み物の氷をすべて食べていたとのこと。友人に指摘されておかしいことに気づいたそうです。

 

 

 

 

リスク要因のうち、⑥は直接的に鉄が体の外に失われていくので分かりやすいですね。また、⑧も、鉄は食事から体内に取り入れるしかないので、食事内容に鉄が乏しければ貧血リスクが高くなるのは当然でしょう。⑦については、

 

 

●ハードなスポーツでは、一気に汗をかいた際に汗と一緒に鉄分が失われたり、足への衝撃で赤血球が破壊される、あるいは激しい運動で消化管から出血する、といったリスクが高いとされている。

 

 

●そのため、部活に激しく取り組んでいる中高生は、通常の生活を送っている子たちよりも貧血リスクが高く、そのために練習してもパフォーマンスやスコアが伸び悩んでいる人も。

 

 

とのことです。

 

 

 

 

かくれ貧血は、血液検査で「フェリチン」の値を調べればすぐに分かります。

 

 

かくれ貧血は、血液検査によって簡単に分かります

 

 

通常の貧血はヘモグロビンの濃さを調べることで分かりますが、貯蔵鉄の状態を知るには、「フェリチン」という成分の値を調べます。

 

 

 

 

「体の細胞の中の鉄分は、フェリチンという形でストックされています。血中の値を調べることで、体全体の貯蔵鉄の量の目安になります。基準は15ng/mL、これが最低ラインで、できれば40ng/mLはあった方がよいです」

 

 

そう言って濱木医師が公開したのが、自身が貧血になった時の血液検査データ。フェリチン血が2.2ng/mLと極めて(!)低い値になっていました。「この時はヘモグロビン値も8g/dlくらいになっていたので本当に辛かったです」とのこと。

 

 

 

 

ご自身の値を調べたい場合は、医療機関を受診して「貧血が気になるので、ヘモグロビンとフェリチンの値を測りたい」と言えば、血液検査をしてもらえます。

 

 

毎日の食事で改善! 動物性食品を積極的に、鉄製の調理器具・グッズも活用して。

 

 

「明らかに貧血と思われる症状があれば、医療機関を受診してください。そこまでいかないけれど隠れ貧血が気になる場合は、とにかく鉄分を意識的に食事から摂ってください」と濱木医師。

 

 

その際、鉄には大きく2種類あるため、効率的な摂取には献立の工夫も必要です。

 

 

1つは、レバーや赤身肉、魚やシジミなどの魚介類といった動物性食品に多く含まれる「ヘム鉄」。もともと鉄は吸収しにくい成分なのですが、ヘム鉄は比較的吸収率が高いので、積極的に摂りたいところです。「レバーは苦手なら細かく刻んで麻婆豆腐やカレーに混ぜてしまえば食べやすくなりますし、マグロやカツオは筋肉が発達していて鉄分も豊富です」

 

 

一方、ホウレンソウなどの野菜でも鉄分を含むものがあります。ただし、植物性食品に含まれる鉄分は「非ヘム鉄」と言って、ヘム鉄よりは吸収率は落ちます。それでも、ビタミンCや動物性食品(ヘム鉄)と一緒に摂ることで吸収率はアップ大豆製品や小松菜、海藻などにも含まれるので、肉と野菜の炒め物など工夫によって鉄たっぷりメニューが工夫できます。

 

 

 

ちなみに濱木医師のイチオシ食材は「青のり」。「大切なのは続けることなので、手軽に摂れるところがいいですね。ふりかけ代わりに使ったり、玉子焼きの中に混ぜて焼いてみたり、自由にアレンジしてみてください」

 

 

そして濱木医師おススメ鉄分たっぷり3大メニュー、名付けて「ヘム鉄三種の神器」は、

 

★まぐろ刺身

★焼き鳥のレバー

★あさりの味噌汁

 

 

です。「どれもスーパーで買ってきて、ほとんど手間なく食べられるので、ぜひ食卓にもう一品加えてみてください」とのこと。

 

 

 

 

「一方で、ソーセージやハムなどに使われている『リン酸塩』は要注意です。鉄分の吸収を妨げることが分かっています。食べ過ぎないようにしてください。また日本茶、紅茶、ウーロン茶に含まれるタンニンも、鉄と結びついてしまい、鉄の吸収を妨げます。できれば食事中ではなく、食後30分くらい空けてから飲むようにしたいですね」

 

 

なお、調理の過程で鉄をプラスできて便利なのが、鉄製の鍋やフライパンです。

 

 

 

 

献立に悩まなくても、使って調理するだけで鉄分が料理に溶け込んでいきます。「そのため、できれば内部がコーティングされていないものを選んでください。

 

 

ただ、たしかに鉄製の鍋やフライパンは調理の際の下準備やお手入れが面倒な一面もあります。そういう方には、鉄玉子やIron Fishといった鉄補給調理グッズがおススメです。材料と共に煮込むなど、一緒に調理をするだけで、どんな食材を使っていても鉄補強メニューに変身させられます」

 

 

 

 

こうした工夫をしてみても改善しない、気になる症状がある、という場合、「検査は簡単にできます。躊躇せずに医療機関を受診してください」とのことです。

 

 

ナビタスクリニック新宿院長
濱木珠恵

 

(画像はNHK「ひるまえほっと」2019年11月11日放送分より)

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