亜鉛は成長ホルモンの働きに必須の微量ミネラル。成長ホルモンが大事なのは子供だけではないんです。
【まとめ】
☆牡蠣に多く含まれる亜鉛は、成長ホルモンの働きを助ける必須の微量ミネラル。
☆大人にも成長ホルモンは重要。不足すると加齢・老化現象が進みます。
☆亜鉛は牡蠣など豊富に含む食品から摂って。サプリは一歩間違うと過剰摂取のリスクも。
「海のミルク」とも呼ばれるほど、栄養が豊富な牡蠣。寒くなってくると、スーパーマーケットや鮮魚店にたくさん並びますね。11月頃から旬を迎えます。
牡蠣に含まれる重要な栄養素として知られるのが、「亜鉛」です。
亜鉛は、厚労省が認める「保健機能食品(栄養機能食品)」として、以下3つの栄養機能の表示が認められています。
●亜鉛は、味覚を正常に保つのに必要な栄養素です。
●亜鉛は、たんぱく質・核酸の代謝に関与して、健康の維持に役立つ栄養素です。
●亜鉛は、皮膚や粘膜の健康維持を助ける栄養素です。
また、国立健康・栄養研究所の公開している情報によれば、亜鉛の摂取によって、子供の成長促進や、成人でも骨量の維持が期待できそうです。
そして今回、特に強調したいのが、「若さを保つ」ためにも亜鉛が必須、ということ。
カギを握るのは、成長ホルモンの分泌です。
大人も必要、成長ホルモン。不足は老化に直結します!
成長ホルモンは成長期の子供にしか関係がないと思っていませんか? それは大間違いです。
成長ホルモンは、脳から分泌されて血中に入り、大人でも全身の代謝調節作用に関わっているのです。
① 脂質代謝(脂肪分解、コレステロールの肝臓への取り込み)
② 筋肉増強(タンパク質合成)
③ 抗インスリン作用(糖尿病になる?⇒後述します)
④ 腎臓での水・電解質代謝(細胞外液の増加)
⑤ 骨代謝(骨形成と骨吸収の両方に作用、バランスが大事)
ですから、成長ホルモンが不足すると、次のようなことが起きてしまいます。
●内臓脂肪型肥満、メタボリック症候群
●コレステロール異常と動脈硬化
●心筋梗塞、狭心症リスク上昇
●骨密度低下
●筋力低下
●皮膚のシワ、かさつき
お気づきかと思いますが、これらは全て、いわゆる加齢・老化現象(!)でもあります。
実際、成長ホルモンの分泌量は、思春期前と比べて思春期後期では2倍近くなり、その後は減る一方。加齢と共に減り続け、30~40歳台では半減、60歳では3割くらいになってしまいます。
(ファイザー製薬)
病的に分泌が低下している成人成長ホルモン分泌不全症の患者には、糖代謝障害や糖尿病が多く見られます。また血中脂質が高く、内臓脂肪が増加し、肥満や動脈硬化が進んでいる人も多くなっています。一方、筋肉量、骨量、運動量が健常者と比べて著しく低下し、短命とも言われます。
意外と知られていない、亜鉛と成長ホルモンの切っても切れない関係とは?
さて、そんな成長ホルモン分泌と亜鉛の関係については、以前から研究が進んでいます。ラットの実験では、亜鉛不足のラットはきわめて成長が遅れ、血中の亜鉛濃度と成長ホルモン濃度は密接にかかわることが研究で示されました。もう20年以上前のことです。
近年ではさらに研究が進み、メカニズムも分かってきました。ざっくり言うと、血中の亜鉛が不足すると、軟骨細胞や脳下垂体、肝細胞への成長ホルモンの取り込みが滞り、骨をはじめ全身の代謝調節が鈍ってしまうのです。
マウス実験でも、亜鉛不足によりそうした仕組みが機能しなくなることで、成長が遅れ、首が曲がる、骨量が減る、背骨が曲がる、脚が短くなる、といった状態に陥ることが確かめられています。
要するに、亜鉛の摂取が足りないと、せっかく脳から分泌された成長ホルモンを十分に全身の細胞に取り込めず、代謝調節が滞って様々な加齢・老化現象を引き起こすことになります。
(ファイザー製薬)
日本人は亜鉛が不足気味! サプリよりも牡蠣、食事からしっかり摂って。
厚労省の「日本人の食事摂取基準(2015年版)」によれば亜鉛の摂取推奨量は、成人男性で10㎎、成人女性で8㎎。これに対し、「平成27年国民健康・栄養調査」に基づく平均摂取量は、成人男性で8.9㎎、成人女性で7.3㎎。推奨よりも1割程度足りていないようです。
では、積極的に摂るには、どんな食品を食べればよいのでしょうか。
文科省の食品成分データベースで、100g中に亜鉛を多く含む食品を調べると、断トツはやはり牡蠣。これからの季節、カキフライや焼き牡蠣、土手鍋など様々な楽しみ方ができますね(生ガキも美味しいのですが、ノロウイルス感染のリスクは覚悟が必要かも・・・)。
小麦胚芽などにも亜鉛が豊富ですが、胚芽だけを100g摂るのは非現実的です。そういった観点で見ていくと、カツオやサバ、イワシといった青魚、そして牛肉もおススメ。以下、表にはありませんが、大豆、ゴマやナッツなどの種子類、海藻類もよさそうです。
意外なのは、ココアや抹茶といった飲み物。これからの寒い時期、プラスアルファで採り入れてみてください。
ただし、サプリを使う場合は慎重に。亜鉛を過剰摂取すると、同じく体が必要とする銅の吸収を妨げてしまいます。「日本人の食事摂取基準(2015年版)」では、1日の摂取上限量を成人男性は概ね45mg、成人女性は35mgとしています。通常、亜鉛サプリはこの値を超えないように作られていますが、誤って2日分飲んでしまうと、食事内容によっては簡単にオーバーします。
食事からはそう簡単にオーバーはしませんし、亜鉛が様々な物質と結びついた状態で体に入りますから、過激な作用は起きません。亜鉛はぜひ食事から。できるだけ亜鉛たっぷりの献立を工夫したいですね。