小さい頃に水ぼうそう(水痘)にかかった人は、加齢とともに帯状疱疹リスクが急上昇。ひどい目に合う前に、水痘ワクチン接種を。
【まとめ】
☆帯状疱疹をご存じですか? 潜んでいた水ぼうそうウイルスの仕業で、体の片側に激痛を引き起こします。
☆50歳以降、発症する人が急増。幼少期に水ぼうそう感染でついた免疫が、加齢とともに低下してしまうためです。
☆現状、品薄で日本では入手できない帯状疱疹ワクチン。でも、水ぼうそうワクチンでも予防できます。
帯状疱疹って何? どんな症状? 原因は、小さい頃にかかったあのウイルス!
ある日突然、体の片側にぴりぴりとした痛みや刺激、違和感、もしくは原因不明のかゆみを感じ、それから数日~1週間後に、虫さされのような赤い腫れが広がった(この時、微熱やリンパの腫れ、頭痛があることも)。まもなく、赤く腫れたところに水ぶくれが多発。はじめは透明な液で、次第に黄色い膿がたまり、1週間前後で破れてただれや潰瘍に。その間、ずっと激痛に悩まされ・・・。
こんな症状に襲われたら、それはきっと「帯状疱疹」(たいじょうほうしん)。
帯状疱疹は、体の中に潜んでいた水ぼうそう(水痘)のウイルスによって引き起こされる、皮膚症状。体の中を走る神経に沿って水ぶくれができ、ピリピリとした強い痛みを伴うのが特徴です。
水痘ウイルスは、初めてかかった時は、いわゆる「水ぼうそう」として、水ぶくれの他に発熱やだるさ、頭痛、食欲不振などの全身症状を引き起こします。現在成人の方の多くが幼少期にかかった経験があるでしょう。そして実は、水ぼうそうが治った後も、ウイルス自体は、体の中に潜伏し続けるのです。
そのウイルスが、本人の免疫力が低下した際などに再び活性化し、発症するのが、「帯状疱疹」です。発疹が現れてから1週間は皮膚症状が強まり広がっていきますが、それ以降は治癒に向います。約2週間でかさぶたになり、約3週間でかさぶたがはがれて治ります。ただ、後述するように、放置すると神経痛などの後遺症が残ることもあり、早めの受診が必要な病気です。
50歳以降に発症が急増! 高齢者や糖尿病は、神経痛の後遺症もハイリスク。
水痘ウイルスは普段、神経系の奥深くに潜んでいます。最初に感染した後に抗体が作られて、発症を抑え込んでいるのです。ところが体が負けてウイルスが再活性化すると、一気に増殖し、神経を伝って体の表面に達します。
だから帯状疱疹は、神経に沿って、体の左右どちらか一方に偏って帯状に出るのです。特に、脇の下から胸やお腹にかけてと、額からまぶたや鼻にかけてが、症状の出やすいところです。顔に出た場合には、顔面神経麻痺の他、角膜炎・結膜炎や難聴となることも。
帯状疱疹が出てしまうきっかけは、先のとおり免疫力の低下。例えば手術やがん治療など、体力が低下していると出やすくなります。ストレスや疲労がたまっている時も要注意。
また、普通に生活していても、加齢とともに、かつて獲得した免疫は薄れていくもの。そのため50歳以上になるとウイルスを抑え込みきれなくなり、発症が急増します。
性別・年齢別にみた帯状疱疹発症数及び発症率(1997~2014年)
(マルホ株式会社)
さらに心配なのは、皮膚の症状がおさまった後、神経痛などの後遺症に悩まされる場合があることでし(帯状後神経痛)。皮膚には異常がないのに痛みだけが長く残り、日常生活に支障をきたす人もいます。
帯状後神経痛は、帯状疱疹が重症化すると起こりやすいことが分かっています。帯状疱疹の痛みが強く、その痛みを脳が記憶してしまい、痛みを伝える回路を復元させてしまうのではないかと考えられています。また、高齢者の方や糖尿病もハイリスク。老化や高血糖によって血管や神経がすでに傷ついているので、ダメージが大きいためと考えられています。
発症予防には水ぼうそうワクチン。発症の兆候があったら早期治療で重症化予防を。
実は帯状疱疹には予防ワクチンがあります。欧米で2社が開発し、最初に開発されたワクチンは、60歳以上の38,546人を対象とした臨床試験で、帯状疱疹の発生率を51%低下させたとの報告もあります。日本では片方のワクチンだけが国内承認されていますが、ナビタスクリニックで診療を行う上昌広医師は、米国でも品薄のため、日本国内では入手困難な現状を『Forbes JAPAN』で報告しています。
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ナビタスクリニックの久住英二理事長が、医薬品の個人輸入仲介業者に問い合わせたが、「当面、解決の目途は立っていない」という主旨の回答を得たという。
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(上記記事より抜粋)
ゾスタバックス(www.mims.co.uk)
シングリックス(cbsnews1.cbsistatic.com)
ではどうすればよいのでしょうか。ナビタスクリニックでは水痘(水ぼうそう)ワクチンの接種をおすすめしています。
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いまできることは、とりあえず帯状疱疹ワクチンにこだわらず、乳幼児を対象とした水痘ワクチンを接種することだ。幸いなことにわが国の小児用の水痘ワクチンは力価(ワクチンの効果)が高く、米国で承認されたゾスタバックスとほぼ同等だ。(中略)水痘ワクチンの接種費用は8000~1万円程度だ。公的な助成はないが、帯状疱疹のリスクを考えれば、自腹を切っても接種しておいた方がいいだろう。
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(同上)
そもそも帯状疱疹と水ぼうそうは同じウイルスによるものなのですから、水ぼうそうのワクチンで抑え込めることは、想像に難くないですね。
なお、予防接種が間に合わず、もしも発症してしまった場合には、とにかく早めに皮膚科を受診し、早期治療を行うことが大事です。
ウイルスの増殖は、皮膚症状の発症から72時間(3日)でピークに達します。その前に治療を始め、重症化を回避するのです。ですから、原因不明のビリビリした痛みが出て、1日たっても収まらないようなら、皮膚症状が出ていなくても念のため受診することをお勧めします。
治療では、抗ウイルス薬や、非ステロイド系消炎鎮痛剤などの外用薬、さらに内服薬を用いた薬物療法が行われます。痛みがひどい場合には、神経ブロック療法も健康保険を使って併用することができます。
というわけで、まずは成人の皆様も、水ぼうそう(水痘)ワクチンの予防接種をご検討ください。その前に万が一、原因不明のビリビリが体の片側に現れたら、まずは皮膚科を受診するようにしましょう。
(トップ画像:shutterstock/Mumemories)