急激な温度差などによる、通称「寒暖差アレルギー」。アレルギーと同じく鼻炎が起きますが、実はアレルギーではないのです。
【まとめ】
☆暖かいところから急に寒い屋外に出た時に出る、くしゃみ、鼻水、鼻づまりなどの鼻炎症状は、通称「寒暖差アレルギー」かも。
☆正しくは「血管運動性鼻炎」。アレルギーではありません。環境の急激かつ大きな変化が自律神経のバランスを乱して起こります。
☆薬に治療は対症療法で、アレルギー性鼻炎と同様です。ただ、十分な睡眠などによって、自律神経の働きを整えることも大事。
寒暖差が引き起こす「血管運動性鼻炎」を知っていますか?
朝晩が急に冷え込んできて、昼間との温度差も激しい季節になりました。そんな寒い朝に、温かい家を出て駅までの道を歩き始めたら、急にくしゃみや鼻水、鼻づまりなどが止まらなくなった、という経験はありませんか?
他に風邪らしい症状もなく、もしやアレルギー性鼻炎?とも思いがちですが、そうとは限りません。通称「寒暖差アレルギー」の可能性があります。
正しくは「血管運動性鼻炎」と言って、アレルギーとは別の仕組みでおきる鼻炎です。主に温度差(寒暖差)によって、鼻の神経が過敏になり、鼻粘膜が腫れたりして、アレルギー性鼻炎と同様の症状が出てしまうのです。成人女性に比較的多く見られます。
ただし、アレルギー性鼻炎と違って、目の症状はありません。その他、心当たりのある人は、以下の症状チェックリストを確認してみてください。
✓ 朝方や外出したときに、くしゃみや鼻水がよく出る
✓ 季節の変わり目は、頭痛や鼻づまりに悩まされやすい
✓ 透明の鼻水が出る
✓ 熱はないのに、カゼのような症状が続く
✓ 花粉症ではないのに、鼻がむずむずする
✓ 目のかゆみや充血はなし
症状が出るシチュエーションで言えば、例えば以下のようなケースが挙げられます。
●朝、温かい布団から抜け出た直後からくしゃみや鼻水などの症状がしばらく続き、食事を終え出勤・登校の頃になると収まってくる。
●逆に、夜布団に入って暖まってくると鼻づまりなどの症状がしばらく続く。
●暖かい居間からヒンヤリとした台所へ移るとくしゃみが出る。
●暑い屋外から冷房の効いた室内に入ると、鼻づまりや鼻水等がおきる。
共通しているのは、環境の急激な変化に伴って症状が現れ、時間の経過とともに周囲の温度に慣れてくると症状が治まってくる、ということです。
原因は自律神経の乱れ。寒暖差以外のきっかけでも発症します。
血管運動性鼻炎の原因は、はっきりとはわかっていませんが、自律神経のバランスが悪くなって起こると考えられています。
これがもしアレルギー性鼻炎であれば、鼻から吸い込まれた特定のアレルギー物質(抗原、アレルゲン)が、鼻の粘膜でアレルギー反応を起こして発症します。血液検査をすれば、空気中を浮遊しているハウスダスト(ダニの死骸等のホコリ)や花粉など、たいていは抗原が特定できます。
一方、血管運動性鼻炎では、当然ながら検査をしても抗原はみつかりません。症状の引き金は、あくまで周囲の環境の変化なのです。
鼻粘膜には毛細血管が張り巡らされています。その血管の状態をコントロールするのが自律神経です。自律神経には交感神経と副交感神経の2種類があり、両者が正反対に作用しながらバランスをとることで、環境などの変化に体を適応させる仕組みになっています。
しかし寒暖差が激しすぎるなど、環境が急激に大きく変化してしまうと、鼻粘膜の自律神経の調整が追い付かず、過敏になって刺激を感じたてくしゃみや鼻水が出たり、腫れたりして鼻づまりを起こしてしまうというわけです。それが血管運動性鼻炎。
血流があまりよくない女性や、もともとアレルギー性鼻炎の人、鼻の形が曲がっている人などでは、症状も強く出やすくなります。
急激な温度変化(暖かい部屋から出て外の冷たい空気に触れるなど)以外にも、飲酒や精神的ストレス、寝不足や疲れ、妊娠などによって自律神経の働きが乱れやすくなり、同じような症状が出ることがあります。
治療はアレルギー性鼻炎と同じように行います。予防には十分な睡眠が大事!
薬による治療は、アレルギー性鼻炎とほぼ同じです。原因がはっきりしないので対症療法としてではありますが、抗アレルギー剤や抗ヒスタミン剤を使用します。ステロイドの点鼻薬も有効です。
また、乾燥した空気によりさらに悪化すると考えられているため、マスクでの保湿や部屋の加湿も対策としておススメです。
自律神経の働きを整えるために、十分な睡眠をとることも有効です。
自律神経は、生命活動を維持するために、本人の意思とは関係なく体の各部の調節を行っています。熱や物質等を出入りさせつつ、常に体内環境を可能なかぎり一定に保ち続けるためです。
交感神経は「昼の神経」ともいわれ、身体や精神の緊張や興奮を高め、活発化させる働きを担っています。血管をキュッと収縮させて血圧を上げたり、アドレナリンの分泌を促して心身を興奮させたりします。生き物としての進化の過程で、外敵から身を守る行動を瞬時にとれるよう発達した神経系なのです。
他方、副交感神経はその真逆に働きます。心臓の活動は抑制され、血管は緩んで血圧は静まり、消化器系や泌尿器系の働きは促進されます。こうして身体をリラックスさせ、機能回復に適した状態を作り出そうとする神経系です。
現代人の生活は時間に追われ、刺激が過多で、どうしても交感神経が優位の状態が続きがち。そのままではメーターが振り切れてしまいそうな、崖っぷち状態の人が多くいます。意識してリラックスの時間を作ったり、睡眠を十分とったりして、自律神経のバランスを整えていくことが、健やかな毎日の秘訣というわけです。
その点、「血管運動性鼻炎」も、薬による治療だけでなく、環境の改善や環境に体を慣らすことによって、克服や改善が期待できます。心当たりのある方、まずは十分な睡眠の確保から始めてみましょう。
(参考)