昨年の厚労省検討会で市販薬化が見送られた、緊急避妊薬。
「時期尚早」というのがその理由です。
一方、日本における中絶件数は、年間16.8万件。三大死因の1つ、脳卒中の死者よりも多いのです。問題を正しく見極める必要があります。
知っていますか? “翌朝”飲む避妊薬。
皆様、「安全日」などという幻想や、膣外射精で、避妊できると信じていませんか? コンドームに穴が空いてしまった、性交渉の途中からコンドームをつけた、コンドームが外れた、酔った勢いで避妊せず性交渉した・・・心当たりのある人はいませんか?
誤った知識や行動、ハプニングの結果、望まない妊娠が日常的に起きています。
そこでご紹介したいのが、「アフターピル」。「モーニングアフターピル」「プランB」などとも呼ばれる緊急避妊薬です。
通常、性交渉後72時間以内に服用することで、妊娠を防ぐことができます(厳密に言えば、適切に服用した場合、妊娠の可能性を84%下げることができます)。
仕組みは、卵巣から卵子が排出されるのを止める、または、子宮内膜の状態を変化させて受精卵が根付いて成長できないようにする、というものです。
不妊や胎児への影響なし。でも、医師の処方が必要。
アフターピルの効果は一時的で、将来の妊娠には影響しませんし、妊娠していた場合も、中絶効果はなく胎児への影響もありません。
作用の仕組みから考えても、服用は早いほど効果的です。例えば金曜夜にセックスした場合、月曜夜までに服用しなければなりません。かなり大急ぎで行動しなければならないことになります。
ただし、日本では医師の処方が必要です。
通常の性交渉でコンドームに穴が空いた、外れたなどの時は、産婦人科を受診し、院内で薬を受け取るか、もしくは院外処方箋を発行してもらい調剤薬局で受け取ります。レイプされた時は、外傷治療や感染症検査も必要ですから救急外来を受診し、処方を受けます。
また、アフターピルについて知識のある医師がいれば、内科など産婦人科以外でも処方は可能。ナビタスクリニックでも、院内に常備して、すぐ提供できるようにしています(2種類ご用意しています。個人輸入している未承認薬であれば、性交渉後5日以内の服用でも効果が得られます)。
気軽に買える海外。日本では市販薬化が見送りに。
一方、海外では市販薬として誰でも簡単に手に入ります。
ヨーロッパでは、ヨーロッパ委員会の命令により、EU加盟国の多くで薬局で販売(Over the Counter; OTC)されています。カナダではほとんどの州で薬局で購入でき、アメリカ合衆国では18歳以上では薬局で購入可能です。アジア圏でもインドやタイでは薬局で販売されています。
なぜ多くの国で市販されているかというと、この薬は「もらいやすい」ことが大切だからです。そして、安全性も十分に高いことが知られているからです。
世界保健機関(WHO)では、緊急避妊ピルを服用できない医学上の病態はなく、服用できない年齢もない、と謳っています。医師が診察して、未然に有害な重篤事象を防げるはずもありません。薬の効果が一過性である以上、稀な有害事象のために妊娠のリスクを冒すことこそ誤りです。
アフターピルは昨年、厚労省の検討会議で市販薬化が見送られ、議論は停滞したままです。日本が「性の後進国」であることを象徴しているのではないでしょうか。
妊娠は人生を左右する大きな出来事ですから、本人の意思が最大限尊重されるべきですよね。望まない妊娠の可能性があり、一刻を争う時に、どんな場合も受診が必要なのでしょうか?
次回も引き続きこの問題について考えてみたいと思います。
医療法人鉄医会ナビタスクリニック
理事長 久住英二