-その便秘、ごはん抜きダイエットのせいかも!?「レジスタントスターチ」って何?-

2019.10.22

便秘は食欲の秋の敵! しっかりお米の「ご飯」を食べるだけでも、改善できる可能性があります。

 

 

【まとめ】

 

☆便秘対策として有名なのは、食物繊維を摂ること。しかし、スジっぽい野菜ばかり食べていると、かえって便秘を悪化させてしまうかも。

 

☆便秘対策に大事なのは、海藻などにも多く含まれる水溶性食物繊維と水分を摂ること。そして注目は「エネルギーにならない糖質」です。

 

☆レジスタントスターチって何? 実はご飯にも多く含まれています。ご飯を含む献立てで便秘解消やダイエット、生活習慣病予防も。

 

 

 

食物繊維を摂ってるのに、ガンコな便秘・・・こんな食事してませんか?

 

 

食欲の秋、食べ物のおいしい季節ですね。でも、便秘だとおいしさも半減することは、お悩みの方や経験者ならよくご存じでしょう。それに、便秘はお肌にもよくないですし、何より不快です。

 

 

 

 

便秘対策としてもっとも有名なのは、「食物繊維」を摂ること。食物繊維は「ヒトの消化酵素で分解されない食物中の総体」と定義されています。もっと言えば、炭水化物のうち「糖質」と呼ばれる成分以外のもの。糖質は、体の中で分解されてエネルギーになりますね。

 

 

この定義から、「食物繊維は消化管内で分解されず、腸で吸収されないから、食べかすなどと一緒に便となる。だからたくさん摂れば便のカサが増えて便秘解消になる」という認識の人は多いでしょう。間違ってはいないのですが、このイメージだけに引っ張られて誤った食生活を送っている結果、かえって便秘を招いていることも。

 

 

 

 

例えば、おいしいおかずを我慢しない代わりに、健康やダイエットに良かれと思って、こんな食生活をしていませんか?

 

 

・食物繊維を豊富に摂るため、根菜やキノコ類、葉もの野菜をよく食べる。

・できるだけ低糖質・高タンパクを実践、野菜と肉・魚をしっかり。

・そのかわり、ご飯はほぼ食べず、全体の食事量も少なめを心掛けている。

 

 

なんとなくヘルシーそうにも聞こえますが、これらがあいまって便秘になってしまうのは、一体どういうことでしょうか?

 

 

 

 

スジっぽい野菜ばかりでは便秘が悪化? 水溶性食物繊維と水分摂取も大事!

 

 

間違いのポイントは、

 

1.不溶性食物繊維ばかり摂っている

2.ご飯をほとんど食べない

 

という点です。

 

 

まず、食物繊維は大きく2種類に分かれる、ということ、ご存じでしょうか?

 

 

一般的に私たちが思い描く「食物繊維」は、野菜などのスジ張った繊維質の部分かもしれません。それは実は、「不溶性食物繊維」。植物の細胞壁を構成しているセルロースやヘミセルロース、リグニンといった成分です。ゴボウやサツマイモなどの根菜やキノコ類、セロリなどの葉物野菜に多く含まれる、イメージ通りのもの。

 

 

 

 

しかし、もう一つ重要なのが、「水溶性食物繊維」です。

 

 

文字通り水に溶け込むことができる食物繊維です。水に溶けるとドロッとしたゼリー状になるものや、溶け込んでもサラサラのものがあります。水溶性食物繊維には、果物や野菜に含まれるペクチン、コンブやワカメなど海藻のぬるぬる成分のアルギン酸などがあります。

 

 

 

 

2種類の食物繊維はそれぞれ、便通に与える影響が違います。

 

 

不溶性食物繊維は、水分を吸収して便の容積を増やします。一般的には便が増えると大腸が刺激され、排便がスムーズになります。またその際、有害物質を吸着し、便と一緒に体の外に排出してくれます。

 

 

一方、水溶性食物繊維は、水分を含んでドロッとしたまま大腸内を通過していくので、便を柔らかくする役割があります。その手前でも、一緒に摂ったほかの食物がゲルに取り込まれることで、小腸での栄養素の吸収の速度を緩やかにし、食後の血糖値の上昇を抑える効果があります。また、コレステロールやナトリウムを吸着して体外に排出する効果もあります。

 

 

大事なのは、この2種類の食物繊維両方と水分を十分に摂ること。それによって適量の、適度な硬さの便が作られるようになります。

 

 

 

 

特に、便秘がちの人が不溶性食物繊維ばかり摂るのは間違い。腸の動きが低下している状態で張り切って不溶性食物繊維ばかり摂ると、水分を吸収しても足りずに便が硬くなるばかりで、かえって腸内をスムーズに進みません。大腸内に長時間とどまっていれば、便はさらに水分を奪われて硬くなり、出にくくなってしまいます。

 

 

 

 

こうして便秘気味の人が不溶性食物繊維に偏ったダイエットをすると、更にひどい便秘を招く悪循環に陥ることがあるのです。

 

 

ご飯抜きの食事が便秘しやすい理由――「レジスタントスターチ」って何?

 

 

さて、もう1点、ご飯と便通の関係は、ふだんほとんど意識されていないかもしれせん。

 

 

しかし実は、ご飯には「レジスタントスターチ」(難消化性でん粉)と呼ばれる、食物繊維に匹敵する成分が豊富に含まれていて、便秘の予防・解消に大きな役割を果たしているのです。

 

 

 

 

レジスタントスターチは、比較的消化されにくいでんぷんです。そのため食物繊維と同じような働きをし、大腸まで達して腸内細菌の増殖を助け、腸内環境を改善します。その結果、便秘改善はもちろん、血糖上昇抑制や脂質代謝の改善など、ダイエットや生活習慣病予防の効果も期待できます。

 

 

レジスタントスターチは、ご飯の他、豆類やサツマイモ、ソバなど、日本の伝統的な食品に多く含まれています。

 

 

さらに、ご飯も普通の白米だけでなく、玄米ご飯や大麦その他の全粒穀物と混ぜて炊いた雑穀ご飯はさらにおススメ。玄米や全粒穀物には、「レジスタントスターチ」が特に多く含まれています。粉砕が不十分な穀類は、デンプンが細胞壁内に包み込まれていて、物理的に消化酵素が作用できないためです。また、近年注目されている大麦(「もち麦」もその1つ)には、βグルカンと呼ばれる水溶性食物繊維も豊富です。

 

 

 

 

興味深いことに、普通に炊いた白いご飯が冷めてしまった、いわゆる“冷やご飯”は、炊きたてご飯よりレジスタントスターチは増えています。炊きたてご飯よりオニギリのほうが、便秘解消やダイエットにやや向いているということ。ただし大きな差はないので、レジスタントスターチがちょっと多いからと言って、ご飯を食べすぎてはダイエットにはなりませんのでご注意を。

 

 

 

 

一方、タンパク質食品は腸内環境を悪化させる(悪玉菌を増やす)ことが分かっています。食物繊維は善玉菌のエサになりますから、同時に食物繊維を多く摂ることは間違っていません。ただ、肉・魚と不溶性食物繊維ばかりでお米は摂らない、という偏った組み合わせだと、便は柔らかさが失われ、黒っぽくてコロコロ硬くなって出にくい上に、においもきつくなります。

 

 

ですから肉や魚といったメインのおかずと、野菜の副菜だけでなく、しっかり主食のご飯を摂ることで、便秘予防・解消の観点からもバランスの良い献立となるのです。

 

 

 

 

便秘はもちろん、ダイエットや糖質が気になる方こそ、意識的にご飯を献立に上手にとり入れてみましょう!

 

 

(参考)

公益財団法人長寿科学振興財団HP

農畜産業振興機構HP 

日本調理科学会誌「レジスタントスターチの栄養・生理機能

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