お子さんの咳が止まらない、呼吸がヒューヒュー、ゼコゼコ苦しそうなら、直ちに受診しましょう。
【まとめ】
☆秋はぜんそくの発症や発作が増える時期。台風接近や気温低下、ダニ死骸発生などが重なります。
☆ぜんそくは慢性病。発作が起きていなくても実は気管支は炎症を起こしています。
☆治療の基本は発作予防。発作そのものが病気を悪化させます。長期的な薬物治療に加えてできること・すべきことは?
なぜ秋は喘息のシーズン? 台風接近、気温低下、風邪、ダニ死骸・・・
ぜんそく(喘息)は、急に始まるせきや、ヒューヒュー(喘鳴、ぜんめい)、息苦しさ、呼吸困難といった発作を繰り返す、気管支の病気です。
子供のぜんそくを特に「小児気管支ぜんそく」と呼んで、その8割は3歳以前に発症すると言われています。
ぜんそくの発作や発症が特に増えるのが、秋。まさに今です。
ぜんそくを悪化させ、発作を誘発する要素は、様々なものが知られています。
●台風接近や前線通過による気圧変化、天候悪化
●温度の急激な低下
●風邪などの呼吸器系の感染症
●ダニやペットの毛、カビの胞子など(ハウスダスト)
●たばこの煙や大気汚染
●激しい運動
●ストレス などなど
ぜんそくの悪化要因
秋はこれらの要素が重なりがちなのです。
例えば、今回の台風。日本列島に近づいてくるにつれて気圧は下がり、天候は悪化し、気温も急降下しました。それだけでも悪化や発作の要因ですが、そうなると風邪など体調をくずしやすくなります。また、秋は夏に大繁殖したダニの死骸が大量に出る時期でもあります。
(日本気象協会)
そんな中、暑さが和らいだことで急に激しい運動をし、発作が誘発されることも非常によくあります。
ぜんそくって何? 実は発作でなくても炎症が続いています。早期診断・治療が大事。
ぜんそくは、実は発作の時だけが問題なのではありません。アレルギー性の炎症が、気管支で慢性的に続いている状態です。(このあたり、患者さんやそのご家族以外の方は、よく知らないので理解を得るのが大変なところでもあります)
常に炎症がくすぶったような状態なので、簡単な刺激で気管支の壁が腫れたり、粘液(痰)が分泌されたり、気管支の周りの筋肉が縮もうとしたりして、気管支が狭くなってしまいます。それが発作です。慢性的な炎症を治して鎮めない限り、発作を繰り返すことになります。
(ぜんそくタウン)
それどころか、発作を起こすごとに、気管支の壁の粘膜がいっそうはげ落ちて神経が刺激され、炎症が強まり、「発作が発作を呼ぶ」悪循環に陥ります。炎症が長い期間続くと、気管支が硬くなって気道が狭まり、戻らなくなってしまいます(リモデリング)。大人になってぜんそくが治っても、呼吸機能が低いままなのです。
そのため、ぜんそくは発作を起こさないようにコントロールしていくことが非常に大事。
まずは悪化しないうちに、とにかく一刻も早く治療を始めること。発作が起きてしまった、あるいは疑がわしいと思ったら、すぐに受診しましょう。
例えば子どもが風邪を引いた時、「ゼーゼー」「ヒューヒュー」といった通常とは違う呼吸音が聞こえたら、呼吸の状態を詳しく観察しましょう。
胸とおなかの境目やのど元がぺこぺこへこむ(陥没呼吸)、空気を吸うときに鼻の穴が広がる(鼻翼呼吸)、横になれず身体を起こして呼吸する(起座呼吸)、という症状は呼吸が苦しいときに見られます。
痰のからんだ咳が長く続き、苦しくて夜眠れなくなったり、おなかが痛くなったり、ぜいぜいして吐いてしまうことも。
運動によって誘発される以外、発作は夜~明け方が多いことも分かっています。夜ぐっすり眠れているかどうかも、見極めのポイントです。
次のような時は直ちに病院へ。
・話が十分できない。問いかけてもうなずく程度。
・鼻翼呼吸や陥没呼吸、起座呼吸。
・暴れる、乳児はひどくぐずる。
・ぐったりしている
・咳き込みが激しい、咳き込んで吐く。
・顔色が青白くなる。頭痛、吐き気。(=酸素不足)
・汗をかく
・喘鳴がかなり強い。
・逆に、非常に苦しがっているのに喘鳴が小さい。
・いつも効く薬が効かない、効果がすぐなくなる。
小児ぜんそくは特に、アレルギー素因がある子の発症が圧倒的。本人にアトピー性皮膚炎があったり乳児湿疹があったりする場合はもちろん、親族にぜんそくや花粉症、アトピー性皮膚炎を持つ人がいるか、といった点も重要な判断材料です。
とにかく発作の予防が重要! 治療は長年にわたることも。気長に根気よく。
ぜんそくの診断に際しては、何か1つ調べれば確定診断できる検査というのはありません。問診(症状の経過や家族のアレルギー歴、生活環境など)に加え、呼吸機能検査や血液によるアレルギー検査、胸部X線検査、気道の過敏性を調べる検査や、呼気から炎症の状態を調べる検査などを行います。
ただし、呼吸機能検査や呼気検査などは低年齢だと行うのが難しいため、その場合はまずぜんそくの治療を始めてみて、発作が減るか様子を見ることも推奨されています。乳幼児(5歳以下)だと、もともと気管が大人より細くやわらかいので、ぜんそく以外でも似た症状が起きやすいせいもあります。
そして、治療の基本は、徹底的な発作の予防です。
発作そのものが悪化の原因なので、発作の治療よりも、発作を起こさないための予防治療の継続が重視されているのです。
普段から、炎症を抑えて発作を予防する長期管理薬を服用します。主な長期管理薬として、吸入ステロイド薬やロイコトリエン拮抗薬などがあります。
吸入ステロイドは、特に症状が中程度以上の場合は基本の薬です。気管支に直接的に作用して炎症を鎮めます。直接的なので、少ない量で効果が得られ、内服した場合のような副作用は起こらないので安心です。年齢にあわせていくつかの種類があります。
ロイコトリエン拮抗薬は内服薬です。炎症を鎮める効果は吸入ステロイドより弱いので、軽症例で使用したり、重症の場合に吸入ステロイドと併用します。内服なので家でも管理しやすく、負担なく続けられます。
適切な運動や予防接種など、薬物治療以外にできること・すべきことがあります。
治療は根気よく継続することが一番大事です。発作の起こらないよう、きちんとコントロールしていけば成人までに治る人もいます。それには薬物治療以外にもできること、すべきこともあります。
まずは家の中をこまめに掃除してアレルゲンとなるハウスダストを取り除いたり、適度な運動やバランスとのとれた食事、十分な睡眠など、規則正しい生活を心掛けましょう。
たしかに運動によってぜんそくが誘発されることも多いのですが、だからといって全く運動のも心身の健全な発達には問題です。水泳などぜんそくによいとされる運動を積極的に取り入れて、むしろ体づくりをすることも治療につながります。
また、インフルエンザは呼吸器感染症の1つで、発作の原因となります。ぜんそくの子供も予防接種は問題なく受けられますので、医師と相談しながら計画的に接種を進めましょう。
なお、今回の台風のように、非常時で退避しなければならいなど不測の事態もありえます。薬などを持ち出せるよう備えておくことも大事ですね。
(参考)
日本小児アレルギー学会「小児気管支喘息治療・管理ガイドライン2017」
(トップ画像:Shutterstock/ElRoi)