最も狂暴化する時期が秋の行楽シーズンと重なり、さらに都市部でも増えているスズメバチ。被害回避と正しい応急処置が大事です。
【まとめ】
☆スズメバチの被害は秋に多発します。今年は例年に比べて被害が多い地域も。いったいなぜ?
☆都市部でも増えているキイロスズメバチ。原因は? 刺されないためにできることは?
☆スズメバチに刺された時の正しい対処法は? 実はハチ刺されによる死者は蛇やクマの被害より多い!
秋にスズメバチ被害が増えるのはなぜ? 今年の猛暑はどう影響した?
いよいよ秋の行楽シーズン。でもその際、気を付けていただきたいのがスズメバチによる被害です。秋は、スズメバチが1年で最も攻撃力を高めている時期でもあるのです。
スズメバチの活動期は、4~11月。4~5月に1匹でふらふら飛んでいるのは女王バチで、巣作りの場所を探しています。5~6月に巣作りを始め、産卵に入ります。7~8月にかけて巣は急成長し、働きバチは数十から数百匹へと増加。
そして9月~10月に巣の大きさも働きバチの数も最大となり、エサ集めも巣の防御も万全の状態に。巣に刺激を与えるものには容赦なく、多数の働きバチが毒針で襲い掛かります。
なお、例年に比べて今年は、スズメバチ被害が増えている地域と減っている地域があるようです。
増えている地域では、6~7月に降雨量が少なかったことが大きく影響しているとのこと。6月から30℃を超え、梅雨明けが早かったために、巣作りが活発化したと見られます。高知県など、例年と比較して駆除依頼件数が1.5倍になったという地域も。そうした地域では、台風の直撃が例年より少なかったことも関係していると考えられています。
一方、茨城県など減少した地域では、暑すぎる夏のせいで幼虫の生育に影響が出た、あるいは猛暑で天敵の幼虫がよりよく育ったせい、などと原因が言われていますが、詳しくは分かっていません。
都市部でも増えているスズメバチ。その理由とは? 刺されないために気を付けるべきことは?
ただ、全国的には近年、スズメバチによる被害が増加してきているそう。冒頭で行楽シーズンとは書きましたが、実際、都市部で姿を見かけることも増えました。
それらの多くは、キイロスズメバチ。黄色と黒のしま模様がくっきりしています。女王バチの体長は25~30mm、働きバチは17~25mm、オスのハチは22~24mmほどです。
キイロスズメバチが増えている原因として、以下のようなことが考えられるそうです。(九州大学農学部)
●もともと都市部に適応しやすい生態であること。エサの選り好みが非常に少なく、様々な昆虫やクモなどを捕食できる。また、家の軒下など人工的な環境やちょっとした庭木にも巣を作れる。
●都市部で天敵が減少している可能性。キイロスズメバチの天敵であるオオスズメバチが、都市部では減少。それ以外の、カマキリなど天敵も減少していると見られる。
●地球温暖化の影響の可能性。実質的に、春の始まりは早く秋の終わりは遅くなるのと同じことになる。結果、繁殖期間が長くなり、新女王バチ数の増加と、冬越しの成功率の増加につながっていると考えられる。
ですからハイキングなど秋の野外レジャーの際はもちろん、都市部でも庭木の手入れなどの際は、用心しましょう。
例えば服装は、可能な限り白など明るい色が良いとされます。白っぽい帽子をかぶり、黒っぽい服はなるべく避けましょう。とはいえ、服の色ばかりでなく、動きも重要です。動いている白い服の人と、止まっている黒い服の人なら、スズメバチは動く方を狙います。スズメバチに遭遇してしまったら、低い姿勢で動かないのが一番です。
また、香水やヘアスプレーなどの香りも、ハチを刺激することがあるので、屋外活動の際は避けた方が無難です。
もちろん、ハチやハチの巣を見かけた際には、近づかないのが一番です。いたずらをしたり、むやみに近くまで見に行ったりするのは絶対にやめましょう。
ハチに刺されてしまった! 正しい応急処置は? 受診の目安と受診科は?
ハチに刺された場合はまず、患部を水洗いし、ハチの針が残っていたら指でつまんでそっと抜きます。ただし、強くつまんでしまうと毒液が再び注入されてしまいますので、難しければいったんそのままに。
さらに爪などで、患部の周りを傷口に向かって圧迫しながら、毒を絞り出すようにします。その際、きれいな水で洗い流しながら行うと効果的。ハチの毒は水に溶けやすいためです。
その後、抗ヒスタミン剤を含むステロイド軟膏などがあれば塗り、患部を濡れタオルなどで冷やします。安全な場所で、できれば横になり、安静にしていましょう。
ただ、刺された直後から、あるいは20~30分様子を見て、じんましん呼吸困難、発熱、腹痛、気分が悪い、などの全身症状が出てきたら、迷わず救急車を呼び、医療機関へ。
特に全身症状もなく、元気な様子でも、後から大きく腫れてくる人もいますので、できるだけ速やかに医師の診察を受けることをお勧めします。基本的には皮膚科、お子さんは小児科を受診してください。
実は蛇や熊の被害より多い! ハチ刺されによるアナフィラキシーショック死!
もう少し詳しくご説明すると、ハチに刺されたときの症状には、2種類あります。ハチの毒そのものによる症状は、局所症状として現れます。一方、ハチの毒に対するアレルギー反応は、全身症状として現れるのです。
局所症状としては、刺されたところが赤く腫れて痛みます。適切な処置により、早ければ数時間~1日で痛みは治まってきますが、その後もかゆみを伴うしこりが数日間は残ります。
(水前寺皮フ科)
特にスズメバチで心配なのが、全身症状です。特に、以前にも刺されたことがある場合には、3年間は注意が必要。ハチの毒に対する特殊なタンパク質(IgE抗体)が体内で作られ、次に刺された時にこの物質が反応し、瞬時に激しいアレルギー症状(アナフィラキシーショック)を引き起こすことがあるためです。
刺された直後から全身症状が出始め、30分~1時間で意識消失や血圧低下、喉の腫れによる呼吸困難などが起き、死に至ることも。全国で毎年30~40人ほどの方がハチ刺されによるアナフィラキシーショックで亡くなっているそうです。

(Aaron Amat/shutterstock)
これは、ヘビや熊など、野生動物に襲われた被害の中で最も多い件数。たかがハチと侮らずに、見かけたらむやみに近づかないように十分用心しましょう。