何度もかかり、風邪程度で済むことも多い身近な病気。でも、5年間に30人前後の赤ちゃんが亡くなる病気でもあります。
【まとめ】
☆9月に入り、RSウイルス感染症が増えています。今頃から春先までが流行時期。ただし今年は例年以上に急増中。
☆1歳までに半数、2歳までに100%が感染。繰り返しかかる子も多数。重症化すれば、赤ちゃんの肺炎原因の50%を占めます。
☆熱が下がってから重症化することも多く、油断禁物。潜伏期間もあり、かかるたびに軽症化するので、予防は困難です。
9月に入り、RSウイルス感染症が急増! 1歳までに半数がかかります。
9月に入り、全国的にRSウイルス感染症が急増、定点医療機関当たり患者報告数は8月の2倍ほどに上っています。東京都でも、9月9~15日の定点医療機関当たり患者報告数(グラフ)が、646人に上りました。例年の1.5倍近い数字です。
(東京都感染症週報)
内訳をみると、1歳児が265人で最多、次いで生後半年~11カ月が116人となっています。生後半年までにかかった赤ちゃんも62人いて、合わせると過半数の342名が2歳未満(0~1歳)です。
実際、赤ちゃんの半数が1歳までに初感染し、その後2歳までにほぼ100%の子供がかかります。
しかも、1回かかればもうかからないわけではありません。患者の99%が5歳未満で、小学生以降は急激に減りますが、それまでに繰り返しかかる子も大勢います。
RSウイルスは例年9月~10月を中心に、春先まで流行します。まさにピークを迎えようとしているところなのです。
RSウイルス感染症ってどんな病気? 予防が困難な理由は?
というわけで、RSウイルス感染症は子供が必ずかかる、とても身近な感染症。だからと言って軽く見ることはできません。
実際、RSウイルス感染症は、乳幼児の肺炎の原因の約50%、細気管支炎の50~90%を占めるとされます。重い合併症として、無呼吸や急性脳症なども起こります。結果、5年間で30人前後の赤ちゃんが亡くなる原因ともなっています。
原因はRSウイルスへの感染です。典型的な症状は、まず発熱し、鼻水や軽い咳、淡などが数日間続きます。その後、特に初感染の場合は20~30%が、気管~気管支~肺まで症状が広がり、重症化することも。
細気管支炎(肺につながる細い気管支の炎症)を起こすと、細気管支がむくんだり痰のような分泌物などで空気の通り道が狭くなり、呼吸が苦しくなります。ひどければ空気の通り道が完全に詰まってしまい、肺がつぶれてしまうこともあります。
生後数カ月間は、胎内期や母乳を通じて母親から抗体(免疫を担う物質)が移行することで、新生児は感染症から守られます。それにもかかわらず、気管~気管支~肺に炎症を起こし、肺炎をはじめとした重い症状につながることがあるのです。
感染経路は、飛沫感染と接触感染。理論上はインフルや通常の風邪と同じで、感染者の咳やくしゃみなど(に含まれる“つば”)が自分の喉や鼻の粘膜に吹きかかるのを避けたり、つばのかかったものを触った手で口や鼻を触ったりしなければ、感染は避けられるはずです。
ですから乳幼児に接する大人は日ごろから、手洗いを頻繁に行い、手指をアルコールなどで消毒し、マスクを着用するなど予防に努めましょう。特に小さな子供はおもちゃなどを口に入れることも多いため、おもちゃを洗ったり頻繁に消毒することも大事です。
しかし一方で、子供同士の感染防ぐのは非常に困難です。
感染後、潜伏期間は2~8日、多くは4~6日とされ、ウイルスを持っていても気づかれない状態で過ごす子供が多くいます。また、繰り返し感染するうちに体に抵抗力がついてくるので、軽症で済み普段通りどおり過ごす子も多いため、接触を避けることも難しい。そのため保育園などではどうしても集団感染が起こりやすくなります。
こんな時は急いで受診を。発熱は目安になりません。家庭でのケアや登園目安は?
当初は普通の風邪だと思われることが多いRSウイルス。軽症で済めばそれでいいのですが、生後1カ月未満でもかかり、急激に悪化することがあります。以下のような場合は速やかに受診してください。
・呼吸が早く、苦しそう。
・息をするとヒューヒュー、ゼイゼイと音がする。
・咳が激しく、寝ていても咳をして何回も夜中に起きる。
・熱が下がっても呼吸器症状が改善されない。
・咳込んで嘔吐してしまう。
多くの親御さんは熱が下がるとちょっと安心してしまいがちですが、注意すべきは、悪化する場合は熱が下がってからが多いことです。
受診の前後、家庭でのケアのポイントは以下の通りです。なお、特効薬はありません。
・少しずつ頻繁に水分補給をする。
・室温くらいの湯冷ましやお茶がよく、かんきつ飲料は避ける。
・咳がひどいときは、前かがみにさせる(乳児は縦だっこ)。
・背中を優しくトントン、あるいはさする。
・寝る時は、上半身を高くする。(クッションなどで傾斜を)
・乾燥に注意。換気は必要だが、温度の急激な変化に注意。
・食事は消化の良い、刺激の少ないものを、少しずつ。
登園できるようになる目安は、熱が下がり、完全に呼吸器症状がなくなること。また、元気があり、食欲があってしっかり食事を摂れることです。
繰り返しになりますが、親御さんは熱が下がったら登園できると考えがちですが、RSウイルスでは特にその考えは危険。熱が下がっても呼吸器や全身の症状がしっかり回復するまで、お子さんの様子を見守るようにしましょう!
(参考サイト)
国立感染症研究所 <注目すべき感染症>RSウイルス感染症