実は栄養不足の日本人。特にマグネシウム不足は、老化や生活習慣病の隠れた原因かも!?
【まとめ】
☆今、増えている「新型栄養失調」とは? 中でもマグネシウム不足は老化や生活習慣病の原因?!
☆マグネシウムは、リンの過剰摂取で出来る物質から血管を守り、生活習慣病や老化を予防します。
☆マグネシウムを多く含む食材とは? 本来は栄養素のリンを、現代人はどこから過剰摂取してるの?
※関連記事「血管石灰化、糖尿病、メタボも、マグネシウムで防ぐ!」はこちら。
飽食ニッポン、実態はミネラル・ビタミン・食物繊維が不足した“貧しい”食卓。
「新型栄養失調」ってご存じでしょうか? いわゆる3大栄養素の炭水化物(糖質)、タンパク質、そして脂質は十分摂れているのに、ミネラルやビタミン、食物繊維など、必要なその他の栄養素が足りていない状態をさします。
飽食ニッポンなどと言われて久しいですが、食の欧米化や外食化、加工食品の普及が進んだ結果、日本人の食卓は見た目には華やかになっても、栄養学的には貧しい状態に陥っているのです。
これまで何度も取り上げてきた鉄欠乏性貧血は、その名の通り「鉄」というミネラルが不足した状態です。
そして今、もっと注目すべきは「マグネシウム」です。
マグネシウムは実はアンチエイジングと生活習慣病予防のカギを握る栄養素だとわかってきたのです。
ところが、15歳以上の1日当たりマグネシウム推奨摂取量は、男性で340~370㎎、女性で270~310㎎(日本人の食事摂取基準、2015年版)ですが、実際には20歳以上の平均値で234㎎(国民健康・栄養調査、2017年)しか摂れていません。
マグネシウムは動脈硬化を予防し、心血管疾患、腎障害、糖尿病リスクを下げる!
マグネシウム不足が引き起こす健康問題、そして積極的に摂った場合の健康効果については、過去記事「血管石灰化、糖尿病、メタボも、マグネシウムで防ぐ!」をぜひご参照ください。
(shutterstock)
ここでは要点だけ、ざっくりおさらいしておきます。
◆動脈硬化の一種である「血管石灰化」は、血管が硬くもろくなってしまう現象で、これまで老化によるものとされてきました。
◆しかし血管石灰化本当の犯人は、“血中にリンが過剰にあると出来てしまう物質”でした。
◆マグネシウムはこの物質ができるのを防ぎ、これによって血管を守り、心血管疾患や腎障害を予防することができます。
◆米国の大規模疫学調査では、マグネシウム摂取量が1日50mg増えるごとに冠動脈の石灰化の程度が22%低下しました。
◆マグネシウム不足はインスリンの働きを悪化させ、糖尿病やメタボリック症候群に! 食事からのマグネシウム摂取量が少ないほど2型糖尿病の発症が多く、摂取量が多いほど糖尿病の発症リスクが低下した、という研究結果が複数出ています。
マグネシウムが取れる食事は、「そばのひ孫と孫はやさしい子かい?納得!」と覚えて。
というわけで、アンチエイジングと生活習慣病予防に欠かせないのに、摂取の足りていないマグネシウム。積極的に摂る必要があります。
マグネシウムを多く含む食品は、魚や貝、海藻などの海産物や大豆製品、緑黄色野菜、ゴマやナッツ類。
そもそもマグネシウムは海水に多く含まれますから、海産物に多いのは当然かもしれません。
また、大豆にも多く含まれますが、特に豆腐は、にがり(主成分は塩化マグネシウム)を使っていれば※、なおのこと多くマグネシウムを含みます。
※豆腐は昔はにがりを使って作るのが当然でしたが、今では塩化カルシウムや硫酸カルシウム、グルコノデルタラクトンといった凝固剤を使っているものもありますので、よく表示を見て、「にがり」「塩化マグネシウム」などと書いてあるものを選びましょう。
その他、マグネシウムを多く含む食品は、下図の通り「そばのひ孫と孫はやさしい子かい?納得!」という合言葉で覚えるとよいようです。
(MAG21研究会)
なお、マグネシウムを効率的に摂りたいからとサプリメントを利用する場合、注意すべきは「カルシウム・マグネシウム=2:1で配合」とうたったサプリ。不本意な結果をもたらす可能性があります。
確かに体内での利用を考えるとカル・マグ比率は2:1が適切なのですが、実際に不足している割合からすれば、摂取比率は2:1ではカルシウムが多すぎます。相対的にマグネシウム不足となり、かえって血管石灰化リスクを高めてしまうのです。
詳しくは、過去記事「“カル・マグ”サプリの落とし穴、カルシウム過剰で狭心症や動脈硬化の危険も!!」をご覧ください。
血管を傷つける現代人の食生活。加工食品や外食でリン過剰に。
マグネシウムで防げる、血管を石灰化させる物質。栄養素である「リン」の過剰から出来てしまいます。体内で使い切れずに血中に余っていると、タンパク質やカルシウムと結びついてしまうのです。
リンは細胞膜の材料ですから、本来は必須の栄養素であり、人が口にするあらゆる動植物に含まれています。普通に食事をしていれば必ず摂取することになります。
しかし、リンの過剰摂取が問題になったり、注目されることは、まずありません。食材そのものに含まれるリンは、様々なほかの栄養成分と結びついた「有機リン」の形をとっています。消化・吸収しきれずに排泄される分がかなり多いのです。
ところが、現代の日本人は食品添加物として、知らずにリンを過剰に体内に摂り込んでいる可能性があります。
加工食品のラベルを見ると、「リン酸」「リン酸塩」などと表示されていることがよくあります。鉄分を強化するために「ピロリン酸鉄」、カルシウム強化のために「リン酸カルシウム」などが、あえて添加してある商品も。
さらに、「リン酸」の文字はどこにもなくても、保存料代わりのpH調整剤や、清涼飲料水に多く見られる酸味料、ドレッシングなどの乳化剤、ラーメンのかんすいなどに実質的に含まれている場合もあります。
問題は、食品添加物として使われる「無機リン」は、吸収されやすく、血中濃度も上がりやすい点です。血管を傷めつける物質もできやすいと考えられます。
とはいえ、現代の食生活で無機リンの摂取を完全に避けるのは、ちょっと非現実的。それぞれごく微量で、もともとは栄養素なので、そこまで差し迫った危険もありません。
ですから、リンの摂取に神経質になるのではなく、積極的にマグネシウムを摂ることで影響を緩和し、血管を健やかに保ちましょう!
(トップ画像 shutterstock/13smile)