大人気のペット入りお茶飲料。ただし、茶葉の健康成分であるポリフェノールには2つの誤算も潜んでいます。
【まとめ】
☆熱中症予防のスポーツドリンクや塩入りドリンク、本当に必要? 生活スタイルや飲むべきシーンを考えて。
☆無糖で手軽、しかもおいしい「お茶飲料」。しかし緑茶や紅茶には、コーヒーと同じくカフェインによる脱水作用が。
☆実は緑茶やウーロン茶と食事も、「食べ合わせ」が悪かった!? 栄養を無駄なく吸収するには何を飲めばいい?
熱中症予防にスポドリ、は安易です。ライフスタイルや活動に合わせて選んで。
熱中症予防の基本は脱水を防ぐこと。そのためには適切な水分補給が非常に重要です。
今や常識とされるのが、「水だけでなく電解質(塩分)も摂りましょう」ということですね。
体温を下げるために、人は汗をかきます。汗の水分が蒸発する際に、皮膚から気化熱を奪いとるために、体の温度が下がる仕組みです。ただし、汗には水の他に塩分などの電解質が含まれていて、大量の汗をかいた際には、体に必要な分の電解質まで失われてしまうのです。
その際、脱水を防ごうとして水分だけを一気に大量に摂取すると、血中のナトリウム濃度も一気に薄まり、「低ナトリウム血症」に陥ります。全身の倦怠感、吐き気、筋肉のこむらがえりなどから、重度になると呼吸困難、意識障害などを引き起こします。
そこで急激に大量に汗をかいた際には、ナトリウム他の電解質を含むスポーツドリンクを飲むとよいとされるのです。
しかし、現代のライフスタイルでは、一気に大量に汗をかく場面は限られています。スポーツや屋外作業など、必要に応じて塩分入りのドリンクを活用すれば十分。通常の食事でも「日本人は塩を摂りすぎ」などと言われるくらいですから、あえて摂る必要はありません。
そうした考えなしに 塩分入りのスポーツドリンクを常飲していれば、塩分と、そして糖分が過多になってしまうことは、以前もお伝えしました(こちら⇒「塩入り」ドリンクや飴、何気なく口にするのは、ちょっと待って!)
手軽さが大人気のお茶飲料。無糖+カテキンの健康効果も支持の理由。
では何を飲めばよいのでしょうか?
糖分と塩分が気にならない身近な飲み物といえば、日本茶、ウーロン茶、紅茶、麦茶、コーヒー(ブラック)などが考えられます。
中でもペットボトル入りのお茶飲料は、手軽で人気があります。コンビニでも1年を通して冷蔵ケースの一区画を占領するほど。特に、緑茶や麦茶、ウーロン茶など、もとから無糖が主流だったものに加え、近年は紅茶飲料も無糖の商品が続々登場しています。
こうしたお茶飲料は、無糖でもおいしく飲めるのが健康志向にマッチしている上に、お茶ポリフェノールの健康効果も大きく支持されているようです。
ポリフェノールは植物の色素成分の総称で、苦みや渋みのもと。
代表格が、強い抗酸化作用で知られている苦み・渋み成分「カテキン」です。
私たちの体内で作られる活性酸素は、細胞を傷つけ、動脈硬化をはじめ様々な病気や老化の原因となります。それを打ち消す働きを持っているのがカテキンなのです。
その他、抗菌・抗ウイルス作用、抗がん作用、抗アレルギー作用、抗炎症作用などが分かっています。そうした作用から、血圧上昇を抑える、血糖値や血中コレステロールを低下させる、といった健康効果が報告されています。
お茶の種類ごとに微妙にカテキンの種類は違いますが、茶葉を発酵させて作るウーロン茶や紅茶よりも、緑茶のほうがカテキン量は多いようです。
でも、お茶やコーヒーは熱中症対策には不向き。ゴクゴク飲むなら麦茶です。
ただし、熱中症あるいは脱水予防という観点からは、緑茶をはじめとする日本茶や紅茶、ウーロン茶、そしてコーヒーは、ベストな選択とは言えません。
利尿作用があるので、飲みすぎると脱水の心配がかえって高まるからです。
利尿作用を引き起こすのはカフェイン。カフェインが交感神経を刺激し、腎臓の血管が拡張し、尿を作り出す量が増えます。そもそもカフェインの摂りすぎは、睡眠にも影響しますから、その点でも飲みすぎはよくありません。
ちなみに、アルコールはさらに利尿作用が強いので、熱中症対策にはNG。飲んだ水分量以上の水分が排泄されてしまい、脱水を引き起こします。暑い時のビールは最高ですが、それこそ飲みすぎは危険ですね。
というわけで、熱中症・脱水の防止に頻繁に飲むなら、カフェインもアルコールも、糖分も塩分も含まない麦茶やルイボスティー、そば茶など、茶葉以外から淹れる“お茶”類がおススメと言えそうです。
食事に緑茶も、実は不正解?! 鉄吸収には、タンニンを含まない“お茶”を。
さて、無糖のお茶やお茶飲料は、食事にもあいますよね。
でも、知っておきたいのが、お茶の「タンニン」が鉄吸収を妨げるという事実。
(Shutterstock)
タンニンはカテキンと同様、日本茶や紅茶、ウーロン茶などの茶葉に含まれるポリフェノールです。こちらも昔からお茶の渋み成分として知られてきました。そして、鉄と結びついて水に溶けない物質を生じさせるため、鉄が吸収されにくくなるのです。
普段の食事で、「肉や魚などの動物性たんぱく質食品を多く摂る」「ホウレンソウや小松菜、のりなどに含まれる非ヘム鉄はビタミンCと摂って吸収率を上げる」など、鉄を多く摂取する努力をしていても※、食事から一度に摂れる鉄分の量はそれほど多くありません。お茶と一緒だと、さらに吸収率が下がってしまうのです。
※「【院長ブログ】日本人女性の鉄不足、解消には鉄なべ料理がおススメ!」もご参照ください。
以上から、食事の際も、結論は脱水予防の場合と同じ。つまり、鉄吸収を考えるなら、食事と一緒に飲むのは日本茶、紅茶、ウーロン茶よりも、麦茶やルイボスティー、そば茶などタンニンの少ないもの(茶葉以外を使ったお茶)がベター。
日本茶などは食後30分以上たってから飲むのが、鉄吸収という観点ではおススメです。
なお、貧血などで鉄剤を飲む場合は、日本茶やウーロン茶などで飲んでもかまいません。鉄剤は通常100㎎もの鉄が含まれますから、失われる割合は微々たるものだからです。
飲むシーンにあったお茶を上手に取り入れて、日々の健康づくりに役立てましょう!