症状を劇的に抑えられる可能性も! 来春こそすっきり乗り切りたい人は、今のうちに決断を。
【まとめ】
☆スギ花粉症を何とかしたい方、8割の人が効果を実感している「舌下免疫療法」とは?
☆来春に向けて舌下免疫療法を始めるなら今! 遅くとも秋までに始めないといけない理由とは?
☆5歳以上のお子さんも可能。治療の方法は手軽で簡単ですが、根気が必要です。
スギ花粉症のピークは3月。多くの人が春先に苦しめられる疾患です。こんな夏真っ盛りに、そんな話題は季節外れにもほどがある、と思われた方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、スギ花粉症の症状を抑えるのに最も効果的な治療法は、今がまさにはじめ時。
「舌下免疫療法」と言います。
舌下免疫療法ってどんな治療? そもそも花粉症って何?
舌下免疫療法は、その名の通り、①薬を舌の下に入れ、②免疫システムの過剰反応を抑えることが特徴。そうして徐々に症状の出にくい状態にもっていく治療法です。
そもそもスギ花粉症は、アレルギーの一種。アレルギーとは、本来は人体に害がない物質に対し、免疫システムが過剰反応して排除・攻撃命令を下し、その結果として様々な症状を引き起こすものです。
日本では過去に大量に植林されたスギが成長し、春に一斉に花粉を飛散させるようになったため、数十年前からスギ花粉アレルギー(=花粉症)が深刻化しました。
鼻やのどの粘膜から侵入したスギ花粉を体の免疫システムが「異物」と判断し、ありとあらゆる手段で追い出そうとします。それが、鼻水やくしゃみ、涙といった不快なアレルギー症状の本質です。
この考え方をいわば逆手にとるのが舌下免疫療法。花粉アレルギーを引き起こす成分(アレルゲン)をあえて少しずつ体に入れ、体を慣らさせて、攻撃対象と認識されないようにしようとするのです。治療が功を奏すれば、アレルギー症状を治したり、長期にわたり症状を抑えたりすることが期待できます。
厚労省調査では、治療をした患者さんの約1~2割は「治癒」、約3~4割が「大きく改善」で、症状を抑える薬の量を大幅に減らせています。約3割が「症状はあるが改善」、残る約1~2割で「治療効果が薄い」、数%で「効果なし」という結果です。(日本経済新聞)
症状が完全に抑えられない場合でも、約8割の人で治癒または症状が和ぐのです。
なぜ今が始め時なの?――「季節外れ」だからこそなんです。
そういう仕組みなので、スギ花粉が飛んでいる時期(おおよそ12~6月)は、舌下免疫療法を新たに開始することはできません。すでにアレルゲンに対する体の反応が過敏になっていて、薬に対しても過剰反応が起き、副作用リスクが上がってしまうためです。
副作用はどんな薬にもつきものですが、免疫舌下療法の場合、多くは口内炎、口の中や舌の腫れ、のどのかゆみ、耳のかゆみ、頭痛など、それほど重いものではありません。
ただしアレルゲンを体に入れるため、ごく稀に、急激に激しい反応が現れるアナフィラキシー※の心配も。特に、初めて服用してから約1カ月間と、スギ花粉が飛散している時期は、リスクが上がります。
(※アナフィラキシーとは、急性で激しいアレルギー反応。その場合、多くはアレルゲンの侵入から30分以内に、じんましんなどの皮膚症状や、腹痛や嘔吐などの消化器症状、息苦しさなどの呼吸器症状、蒼白や意識混濁などのショック症状が現れる)
ですから、舌下免疫療法を始める、つまり初めて薬を体に入れるタイミングは重要。
住んでいる地方によっては今の時期を逃すとまもなく、徐々に花粉が再び舞い始めます。つまり、ごくわずかながら副作用リスクが上がり始める地域もあるということ。
飛散期間が長いのが、特に関東、次いで東北と九州です。これらの地域では、大量に舞うのは3月を中心にその前後1か月程度ですが、微量なスギ花粉は1年のほとんどの時期で検出されます。
ただ、8月後半の今だけは、日本全国で花粉の飛散が見られない時期。また、舌下免疫療法は長く治療を続けるほどに効果も高まるとされていますから、来春に備えるには早めに始めるに越したことはありません。遅くとも飛散の3カ月程度前に始めるのがよいとされます。早い地方では12月には飛散が増え始め、症状が出はじめますから、逆算してみても今が開始すべき時と言えます。
というわけで、今が舌下免疫療法を始めるのに最も安心で、効果の期待できるタイミングということになるのです。
実際、どんなふうに治療するの? カンタンだけど、根気は必要。
舌下免疫療法では、毎日1回、数年にわたって薬を服用します。まずは診察や血液検査を行い、その結果を待って治療を行うか判断します。治療を行う場合は、成分量の少ない錠剤で通常2週間様子を見て、その後、医師の判断で成分量の多い錠剤に切り替えます。それを3年以上服用していくのです。
服用の仕方そのものは簡単。処方された錠剤を舌の下に置き、1分間そのままにします。その後に飲み込み、5分間はうがいや飲食を控えます。
副作用の心配もあるため、初めての服用は医療機関で、医師の監督のもとに行います。その反応を見て大丈夫であれば、2日目からは自宅で服用します。
最初は2週間に1回の通院となりますが、問題がなければ1ヵ月(4週間)分の処方が可能なので、通院は1か月1回で済みます。
とても手軽な治療法ですが、3年以上毎日服用する、という点で根気のいる治療でもあります。以前は成人のみでしたが、昨年からは錠剤となり、5歳以上のお子さんも行えるようになりました。
ナビタスクリニックでも多くの方が始められています。興味のある方は、ぜひ通勤・通学の途中にお立ち寄りいただき、ご相談ください。