熱中症予防のため、1日中の冷房もやむを得ないこの時期。でも、お子さんには毎日の“暑さ体験”が一生の宝に!
【まとめ】
☆子供は汗っかきに見えますが、実は汗腺の数は大人と一緒。むしろ汗腺が未発達で十分に汗をかけないことも。
☆「汗をかける汗腺」の割合は3歳までに決まり、一生ほとんど変わらないとされています。
☆寒暖差が激しくなっている日本。熱中症に強い体を作るために、幼いうちに必ず暑い夏を日々経験させて。
「子供は汗っかき」? でも、実は汗腺の数は大人と変わりません。
とにかく暑い毎日。ちょっとでも外に出ると汗だくになります。赤ちゃんやお子さんも、ちょっとでも外で遊ばせようものなら、すぐに顔も髪も、全身びっしょり汗をかきますよね。放っておけば、汗の成分が皮膚を刺激したり、そこに雑菌が悪さをしたりして、あせもなどの肌トラブルもおこしがち。
そんなわけで多くの方が「子供は汗っかき」だと認識されていることと思います。しかし、汗の絶対量が多いわけではありません。
そもそも、実は大人も子供も汗を出す「汗腺」の数は200万~500万個、生涯変わりません。子供の方が体の皮膚の表面積が狭い分、大人と比べれば汗腺が密集していることになります。だから「子供は汗っかき」に見えるのです。
実際には、先日もお伝えしたように(こちら)、汗腺の機能つまり「汗をかく能力」が汗の量と質に大きく関係しています。
誰しも、汗腺の機能は年齢とともに変わります。
生後間もない赤ちゃんは、汗腺の機能が未熟で汗をかけません。成長とともに、身の回りの環境に合わせて徐々に汗腺の働きを発達させていくのです。暑さや寒さのほか、運動、泣いたり笑ったりといった感情の動きなどの刺激を受けて、汗腺が「汗をかく能力」を獲得していきます。
汗をかける体質は、3歳くらいまでにある程度決まってしまう。
ですから、乳幼児は汗をかいているようでも、十分かけていないことも多いのです。そのため、汗だけでなく皮膚から直接熱を放出させて、体温調節をしています。
だから、小さい子が炎暑下にいたり、活発に運動したりした後は、赤ちゃんが激しく泣いたときと同じように真っ赤になるんですね。皮膚の表面に近い毛細血管を広げ、熱の逃げていく面積を増やしているので、血液の色が透けて見えるのです。
そうやって繰り返しの経験と置かれた環境の中で、2歳半〜3歳くらいまでに、「汗をかく能力」がある程度決まります。汗腺のうち、どれが働いて、どれが働かないか、一生の運命が大まかに分かれてしまうのです。
ただ、その後もまだ、汗を出す運命に定まった汗腺の機能は発達を続けます。発汗量は概ね12歳頃がピークとされ、大人の2倍くらいの汗をかくとも。それからだんだんと発汗量は落ち着いていきます。
40歳くらいになると、今度は汗腺の機能が落ち始めます。先にお伝えしたように(こちら)、サラサラ汗がかけず、汗がニオイやすくなったり疲れやすくなったりするのです。
乳幼児は暑さ寒さに弱い・・・それでも外で季節ごとの寒暑を経験させて。
というわけで、乳幼児は3歳くらいまでは、汗をたくさん書いているように見えて実は十分にかけていないことも多いため、熱中症になりやすいと言えます。
だから室温の設定や、外出時の格好、行き先、屋外の温度や滞在時間など、大人がしっかり温度管理してあげる必要があります。
かといってこの時期、1日中冷房の中で毎日過ごさせるのはNG。生まれてすぐの頃から、暑さ寒さを日々しっかり経験させないと、日本の気候に適応した体が作れないからです。
特に日本は近年、20年前と比べて真夏日や真冬日が増え、春と秋が短くなっています。大きな寒暑の差にも対応できなければなりません。汗をかきづらい体では、大人になっても熱中症になりやすくなりますから、乳幼児期に毎年「夏の暑い日々」を経験させることが必要不可欠。1日1回は必ず外へ出て、無理のない活動をさせてあげましょう。
もちろん、先の通り小さい子はまだ体温コントロールが下手ですから、暑い屋外に出た時は、目を離さず様子をしっかり見守ってあげてくださいね。
ちなみにロシアでは、乳児を乗せたベビーカーを極寒の屋外に1時間以上あえて放置するお母さんが多くいます。自身はカフェでお茶をしながら、ガラス越しにベビーカーを見守っていたりするのです。そうやって、寒さに適応できる体作りをしてやるのです。
子供は風の子と言いますが、太陽の子でもあります。大人が見守りながら、熱中症に強い体を作ってあげたいですね。一生の宝になるはずです。