虫よけ剤を適当に選んでいませんか?ハイキングに行く人や海外に行く人だけの話ではありません。
【まとめ】
☆マダニ感染症(ダニ媒介感染症)の被害が今年も出ています。熱帯の蚊媒介感染症も日本に入って来るかも。
☆長時間効き目がもつ「ディート30%」配合の虫よけなら、アジア各国などへの海外旅行にも。
☆「イカリジン15%」は低刺激で赤ちゃんにも安心。ただし価格はちょっと高め、効かないムシもいます。
今年もマダニで死者が発生。英国では被害が推計の3倍?! 蚊による熱帯の感染症の懸念も。
レジャーで山や草むらに入ることの多い季節。でも、注意したいのが虫刺されです。かゆいだけで済めばいいのですが、刺した(咬んだ)虫が感染症を媒介し、命を落とすことも。
日本でも毎年、マダニ感染症による死者が出ています。昨日も、北九州市の78歳の女性が、マダニ感染症の1つ「日本紅斑熱」で亡くなったという報道がありました。7月4日に腕に発疹が出て、翌5日に発熱し、入院治療を行いましたが、8日には発疹が全身に広がって意識不明となり、26日に亡くなったそうです。
英国の大手紙「ガーディアン」によれば、英国内では毎年8000人がマダニ感染症に感染していると見られることが、最新研究から分かったそうです。これまでは年間2000‐3000人と推計されていましたが、840万人分のデータを分析した結果、おそらくその3倍ほどにも上ることが明らかになりました。(トップ画像も同紙より)
マダニ感染症は、病原菌を持ったマダニに噛まれ、そこから感染、発症するものです。日本でもいくつかの病気が報告されていますが、いずれも発疹が体に拡がって発熱したり、肺炎や脳炎などを引き起こしたり、病原菌によっては血液の成分を破壊したりして、死に至る場合も。
マダニは草むらや藪に生息していますので、そうした場所に入る時は長袖長ズボンが基本。色の薄い衣服だと気づきやすくてなお良いそうです。
ただ、そうした場所に出かけなくても、近年では野生動物が市街地に入りこんだ際にマダニを持ち込み、さらにそれをペットが家まで運んでくる、という状況も各地で見られるようです。
(NHK NEWS WEB )
また、命を脅かす感染症を媒介する蚊もいます。地球温暖化の影響もあり、デング熱やマラリアなど熱帯の蚊媒介感染症の範囲が北へと広がり、日本にまで及びつつあると言われます。実際、2014年には、代々木公園等で蚊に刺されてデング熱に感染する人が続出、最終的に都内で108人の患者が発生しました。
マダニや蚊から、きっちり身を守っていくことが必要ですね。
ディート30%が手堅い!アジアなどへの旅行でも幅広い虫に対応。
こうしたムシから身を守るのに有効なのが、虫よけ剤です。この時期ドラッグストアに行くと、各大手メーカーから、様々な成分や形状(ガス式スプレー、ミスト、ジェルなど)の商品がところ狭しと並んでいますよね。たくさんあり過ぎて選べない人も多いのでは?
購入の際にチェクしたいのが、有効成分とその濃度です。
結論から言えば、最も確実に長時間効果を発揮してくれるのが、「ディート30%」の虫よけ剤。「ディート」という有効成分が国内最高濃度で配合されている商品です。海外ではとっくに販売されていましたが、日本では以前は12%が最高でした。ようやく2016年6月25日、厚生労働省が30%を解禁しました(厚労省通知)。
この配合率(%)の差は、効き目の長さに現れます。ディート30%では8時間まで持続するとされます。価格差もこの有効成分の種類と濃度の違いを概ね反映していますね。
また、ディートがお勧めなのは、効き目を発揮するムシの多さにもあります。マダニと蚊の他、ブヨ、アブ、ノミ、イエダニ、サシバエ、トコジラミ(南京虫)、ツツガムシにも効果あり。
草むらにはツツガムシも多くいて、マダニと同じように、噛まれるとそこから感染し、高熱から脳炎・肺炎に至ることもあります。しっかり予防したいですね。
(富山県)
ただし、使用上の注意も。米国CDC(疾病予防管理センター)はディートについて以下のことを注意喚起しています(一部抜粋・和訳)。
・飲み込んだり、吸い込んだり、目に入ったりしないよう注意する。
・傷口や肌荒れ部分につかないようにする。
・特に乳幼児では、手のひら、目や口の周りにつけない。
・顔につける時はスプレーせず、手のひらでのばしてから塗る。
・露出部分や衣服の外側をカバーするだけの適量を使う。
・長時間塗ったままにしない。外出後は洗い流す。
子供にはイカリジン15%が安心。ただし南京虫など効かないムシも・・・。
一方、近年になってディートと同じくらい売り場で目に付くのが「イカリジン」という有効成分をうたった虫よけ剤。
結論から言えば、小さなお子さんに国内で日常的に使うなら、「イカリジン15%」の商品が安心と言えそうです。
イカリジンは1986年にドイツで開発された虫よけ成分で、世界中で既に使われていますが、日本ではようやく解禁されたのが2015年のこと。(PMDA審査結果)
売りは、安全性が高く、刺激が少ないこと。しかも、ディートに比べて半分の濃度で同等の虫よけ効果(15%配合で~8時間)が得られるようです。
そのため小さなお子さんにも安心、と人気上昇中。ただしその分、商品価格は割高の設定となっているようです。ですから、ディートでも大丈夫、気にならない、という方は、もちろんお子さんにもディートを使用してかまいません(ディートも生後2カ月以降使用可能となっています)。
ただし、イカリジンではイエダニやトコジラミ(南京虫)、サシバエ、ツツガムシについては虫よけ効果が期待できません。特にアジア諸国など衛生状態が気になる海外に行く場合には問題になりますが、小さなお子さんをそうした場所に連れまわすことは、実際にはあまりないかもしれませんね。
一応そのあたりも考えながら、ディート30%にするのか、イカリジン15%にするのかをご判断ください。
いずれにしても、虫刺されで命を落とすようなことになっては悔やんでも悔やみきれません。油断せずに、きっちり身を守っていきたいですね。用心していても刺されてしまい、その後、患部が大きく腫れてきたり、体調の異変を感じたら、迷わず受診してください。
ナビタスクリニックには皮膚科と内科が揃っていますので、適切な判断と処置が可能です。虫よけ剤選びや使い方についても、気になることがありましたらご相談くださいね。