寒い梅雨が明けたばかりの今、気温は30℃前後の日でも熱中症リスクは最高レベルって知ってましたか?
【まとめ】
☆全国的に梅雨明けし、連日35℃超の猛暑日が続いています。梅雨明けすぐは熱中症リスクが高い理由とは?
☆熱中症を防ぐのに水分+ミネラル補給は当然。汗は乾いたタオルより濡れタオルで拭き、ぬるいお風呂につかるのがオススメ。
☆暑さに体を慣らし、発汗機能を高めるには、とにかく汗をかくこと。早朝や夜にウォーキングを!
久住医師が熱中症対策について、TBS「ビビット」の取材に応えました。
梅雨明けしたとたんに肌寒さはどこかへ吹き飛び、一昨日はついに全国143地点で気温35℃以上の猛暑日となりました。週末にかけて、体温以上に上昇すると予想されているところもあります。
(ウェザーニュース)
そうなると心配されるのが、熱中症。特に梅雨明けすぐはキケン、ってご存じでしたか? その理由と対処法について、ナビタスクリニック理事長の久住英二医師がTBS「ビビット」の取材に応えました。
気温はヨーロッパに及ばず。それでも熱中症はキケン信号の理由とは?
報道されているように、ヨーロッパは各地で気温が40℃越えの異常気象。先週木曜日(7月25日)にはフランスのパリで42.6℃となり、1947年7月に記録された40.4℃の観測史上最高気温を72年ぶりに更新したそうです。ベルギーやドイツなど各国で最高気温記録が相次いで塗り替えられています。
日本はさすがに40℃超えまでは出ていません。しかし、たとえ30℃前後だったとしても、梅雨明け直ぐの時期は例年、熱中症のハイリスクシーズンとなっています。
例えば昨年は梅雨明けが今年より1カ月以上早く、6月末でした。気温もやはり全国的に30℃前後の所が多かったようです。それでも梅雨明けしたとたん、1週間当たりの熱中症による救急搬送数は128人から376人へ、一気に約3倍に急増しました。
(TBS「ビビット」2019年7月28日)
更に7月末の梅雨明けとなった今年はケタが跳ね上がり、先週半ばに梅雨明けした関西方面を中心に、1日の救急搬送数が1000人を超す日も出ています(消防庁)。
久住医師によると、「梅雨明けしたとたんに急激に気温が上昇したのに対して、体が暑さに慣れていないため、発汗機能が追い付かないのです。発汗の一番の役割は、体の熱を外に逃がすこと。汗をかけなければ体に熱がこもってしまい、熱中症を発症します」とのこと。
湿度も高く、汗が蒸発しにくいため、体温を下げる効率も下がっています。体にとっては非常に厳しい環境というわけです。
(TBS「ビビット」2019年7月28日)
久住医師は、熱中症に陥らないためにできる3つのことをお勧めしています。
(TBS「ビビット」2019年7月28日)
久住医師おすすめ対策① 汗は濡れタオルで拭きましょう!
発汗は体温を下げる仕組みの1つ。でも、なぜ汗をかくと体温が下がるのでしょうか? それが分かると、「乾いたタオル」より、「濡れタオル」で汗を拭いたほうがいいこともお分かりいただけます。
汗が体から出てきただけでは、体温は下がりません。大事なのは、その汗が蒸発する、ということ。
水が蒸発する、つまり液体から気体に代わる際には、エネルギーを必要とします。「気化熱」と呼ばれます。汗が蒸発する際もエネルギー、つまり気化熱を体の表面から奪っていくので、体温が下がるのです。
濡れタオルで体を拭くと体温低下を助けるのは、タオルに含まれる水分が肌から汗以上に気化熱を奪っていくから。
また、汗をかき続けると、汗に含まれる水以外の成分(塩分など)が蒸発されずに残り、肌がベタベタしますよね。そこに汗をかいても水分が捕まってしまって、蒸発が妨げられます。濡れタオルでしっかり塩分などをぬぐうことで、水分の蒸発しやすい状態を作ってやることができます。
一方、乾いたタオルでは、そうしたことが期待できません。むしろ水分を奪って、ベタベタ成分だけが残ってしまうことの方が多いでしょう。だからさっぱりしないし、体温低下という意味では逆効果になる可能性もあります。
久住医師おすすめ対策② 30℃くらいのぬるいお風呂につかりましょう!
まず最初に、当然ながら水分+ミネラルの補給は必須です。それでも、汗腺の機能が落ちていて発汗が追い付かなければ、体温は上がってしまいます。あるいは、水分補給が足りずに脱水が起き始めていると、体は体内の水分を保とうと発汗を抑えてしまいますから、そうなる前に飲むことが大事。
そうやって気をつけていても、どうしても炎天下での作業やスポーツ、移動などで体温が上がった状態になってしまうことも。
その場合に久住医師が進めるのが、30℃程度のぬるーいお湯につかること。温水プール程度の水温です。
30℃と言っても、気温と水温ではだいぶ感じ方が違います。もともと空気は熱を伝えにくい性質があるため、体温より低いとは言え、30℃の空気は熱を奪う力も小さいのです。それに比べ、水は空気より何十倍も熱を伝えやすいので、30℃であれば体からあっという間に熱を奪ってくれます。
ただしあまり低い水温になると、体は「熱を奪われまい」と抵抗して、かえって熱の放散を抑える態勢に入ります。30℃程度が体から上手に熱を逃がし、熱中症を手前で食い止める適温と言うわけです。
久住医師おすすめ対策③ 朝夕の涼しい時間にウォーキングを!
体が暑さに慣れていないなら、慣らしていこうという考え方も有効です。「暑熱順化」と言います。先日のブログ「汗がニオうのは汗をかかないから?!ーーニオイケアは逆転の発想が大事です。」でお伝えした、サラサラ汗の考え方は、実はこの暑熱順化の話。
要するに、体を暑さに慣らすことができると、皮膚の血流量が増えやすくなり、汗腺の働きが上がるので体温が上がってしまわないうちに発汗できるようになります。水分の多いサラサラの汗をかきやすくなりますから、汗で失われる塩分も少なくて済みます。水分を補給すればすぐに血液の状態が回復しますので、体への負担も小さくなるのです。
暑熱順化を促すためにできることの1つが、朝夕のウォーキングです。さすがにこの時期、日中はキケン。かえって熱中症になろうとしているようなものです。比較的涼しい早朝や夜にウォーキングで適度な汗をかき、汗腺の機能を高めましょう。
また、先ほどの入浴法とは別に、汗を流す際にシャワーだけで済ませずに40℃くらいのお湯にしっかりつかるのも暑熱順化に有効です。その際、炭酸ガスの出る入浴剤を入れると血行がさらに促進されて、効果が上がります。
これからがいよいよ夏本番。入り口でつまづかないように、熱中症対策をしっかりしていきましょうね!